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大学の移転決定で先行き不安のJR北海道・学園都市線 終点の北海道医療大学駅には何があるのか

鉄道乗蔵鉄道ライター

 JR北海道の札沼線(学園都市線)は、桑園―北海道医療大学間28.9kmを結ぶ札幌近郊路線である。もともとは、函館本線の桑園駅から札幌市北部と空知地方を縦断し、留萌本線の石狩沼田駅までの111.4kmを結ぶ路線であった。しかし、1972年に末端区間の新十津川―石狩沼田間が、2020年に北海道医療大学―新十津川間が廃止になり、2度に渡って路線を縮小。さらに、現在、終点となっている北海道医療大学駅に隣接する北海道医療大学が2028年度を目途に北広島市に移転することが決まり、末端区間の今後が心配される。学園都市線の現状はどのようになっているのか、現地を訪問した。

新幹線関連工事で新設された11番線から発車

学園都市線の列車は主に11番のりばから発車する(筆者撮影)
学園都市線の列車は主に11番のりばから発車する(筆者撮影)

 筆者が札幌駅へと到着したのは14時過ぎのこと。まず、西口の指定券売機で「札幌→北海道医療大学間」の乗車券を750円で購入。2028年度以降は学園都市線の終着駅の駅名が「北海道医療大学駅」でなくなることは明白なので、手元に駅名入りのきっぷを残しておきたいという思いから、指定券売機で区間を指定して乗車券を購入することにした。

 14時台に札幌駅を発車する学園都市線は、00分、20分、40分の3本で、いずれも終点の北海道医療大学行だ。日中は1時間あたり3本の運行であるが、時間帯によっては終点の北海道医療大学駅まで行かずに、途中の当別駅やあいの里公園駅で折り返す列車もある。

 筆者は小腹が空いていたので、札幌駅の5・6番ホーム上にある立ち食いそば店で月見そば腹ごしらえをする。札幌駅ホームの立ち食いそば店は、特急列車の発着の多い5・6番ホームと7・8番ホーム上の2店舗のみの営業だ。

 月見そばを食べ終えた筆者は、学園都市線の列車が主に発車する11番ホームへと向かう。札幌駅の11番ホームは、北海道新幹線の札幌延伸に伴う関連工事のために閉鎖された1番ホームに代わるものとして2022年10月から使用が開始された。

出発前に駅そばで腹ごしらえ(筆者撮影)
出発前に駅そばで腹ごしらえ(筆者撮影)

札幌市北区の住宅密集地を走行

札幌駅11番のりばで発車を待つ北海道医療大学行(筆者撮影)
札幌駅11番のりばで発車を待つ北海道医療大学行(筆者撮影)

 筆者が乗車する列車は、14時40分発の北海道医療大学行だ。車両は、731系電車3両と733系電車3両をつないだ6両編成だ。列車は札幌駅を定刻通りに発車し桑園駅へと向かう。札幌―桑園間は3線区間となっており、小樽・倶知安方面に向かう複線のほかに学園都市線用の単線の線路が敷設されており、学園都市線の列車は北側の単線線路を走行する。桑園駅は、1・2番線が函館本線用で、3・4番線が学園都市線用。学園都市線は、隣の八軒駅までが単線となっていることから、桑園駅で列車の行き違いが可能な構造となっている。

 そして、桑園駅を発車すると、列車はしばらく函館本線と並行したのち、札幌競馬場を過ぎたあたりで北側に大きく分岐。八軒駅からは複線区間となり、札幌市北区の住宅密集地を高架で進んでいく。国鉄時代は、札沼線(学園都市線)の駅は、桑園を出ると新琴似、篠路、東篠路(現・拓北)、釜谷臼(現・あいの里公園)、石狩太美(現・太美)、石狩当別(現・当別)、大学前(現・北海道医療大学)の6駅しかなかったが、国鉄末期からJR北海道発足初期にかけて、桑園―新琴似間に八軒、新川の7駅が、新琴似―篠路間に太平、百合が原の2駅が、東篠路―釜谷臼間にあいの里教育大駅が新設され、1995年に東篠路は拓北へ、釜谷臼はあいの里公園へ、大学前は北海道医療大学へそれぞれ駅名が改称された。

 その後、2000年までには八軒―あいの里教育大間の複線化と八軒―新琴似間の高架化が完成。2012年には桑園―北海道医療大学間の交流電化が完成した。新川―新琴似間には高架道路で建設された札樽自動車道と交差している部分があり、学園都市線は、高速道路の高架をさらにまたぐ高高架方式となっていることはこの区間の大きな見どころである。今後は篠路駅周辺の鉄道高架化事業も計画されているという。

学園都市線は、高架道路として建設された札樽自動車道の上をまたぐ(筆者撮影)
学園都市線は、高架道路として建設された札樽自動車道の上をまたぐ(筆者撮影)

 学園都市線の列車は、札幌市北区の住宅密集地帯を走り、北海道教育大学札幌校最寄りとなるあいの里教育大学駅で多くの乗客を降ろす。ここから先は単線区間となる。あいの里公園駅を過ぎると列車は石狩川を渡り、札幌市から当別町へと入る。

広大な田園地帯の中にポツンと立地の医療大学

畑の中に立地したロイズコンフェクトの工場(筆者撮影)
畑の中に立地したロイズコンフェクトの工場(筆者撮影)

 石狩川を渡ると、車窓風景は住宅密集地から広大な田園風景へと一変し、左手側に製菓メーカーのロイズコンフェクトの工場が見えてきたところで、列車はロイズタウン駅に到着。ロイズタウン駅は当別町とロイズコンフェクトの請願駅として2022年に開業した。そして、当別町の中心部である当別駅を過ぎ、終着の北海道医療大学駅には15時28分に到着した。

北海道医療大学駅に到着した列車(筆者撮影)
北海道医療大学駅に到着した列車(筆者撮影)

 当別町の人口は約1万5千人。町の基幹産業は農業で、生花や米作りが盛んだ。こうしたことから、学園都市線で当別町内にはいると車窓にはとにかく広大な田園風景が続く。北海道医療大学は、当別町の市街地から約1km離れた場所に立地する。

駅前は大学関係者専用駐車場となっている(筆者撮影)
駅前は大学関係者専用駐車場となっている(筆者撮影)

 この日は3連休中ということもあり、北海道医療大学まで乗り通した乗客はまばらではあったが、休日中でも大学に用事のある学生や教職員の利用は一定数はいるようであった。また、駅には大学関係者専用の広大な駐車場が隣接しており、大学までの車での通勤や通学にも対応がなされている様子であった。

石狩月形方面のバス停と待合室(筆者撮影)
石狩月形方面のバス停と待合室(筆者撮影)

 また、北海道医療大学駅からは、2020年に廃止された石狩月形方面への鉄道代替バス路線が接続しており、バスへの乗り換え客も利用できる待合室が整備されていた。バス停の時刻表確認すると月形へは平日9本、土休日7本の便数の設定があったが、次の機会にはこちらのバスにも乗車して現状を確認してみたいと思う。

 駅周辺には、大学施設以外には数件の民家が点在するのみで、大学移転による駅利用者への影響が計り知れないのら明らかであるが、多額の費用をかけた電化開業からはまだ10年あまり。現状の北海道医療大学駅は日中でも概ね1時間に2本程度の札幌行の列車が設定されており、道内の他地域と比較しても鉄道の利便性は非常に高い。関係者にはこれまでのような目先のコストカットばかりに気を取られ、結果として地域を衰退させてしまうような政策ではなく、鉄道を含め地域にある資源を再活用することにより、地域の経済を活性化させ税収増につながるような発想を持っていただけることを願いたい。

車止めの先には、雑草に覆われ錆び付いた線路が伸びていた(筆者撮影)
車止めの先には、雑草に覆われ錆び付いた線路が伸びていた(筆者撮影)

(了)

鉄道ライター

鉄道に乗りすぎて頭の中が時刻表になりました。日本の鉄道全路線の乗りつぶしに挑戦中です。学生時代はお金がなかったので青春18きっぷで日本列島縦断修行をしてましたが、社会人になってからは新幹線で日本列島縦断修行ができるようになりました。

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