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幹線ルートの分断で腑に落ちない根室線の部分廃止 ドライバー不足や災害時の「リスク分散の視点」が欠如?

鉄道乗蔵鉄道ライター
最終日の富良野駅の様子(筆者撮影)

 2024年3月31日をもってJR北海道の根室本線の富良野―新得間81.7kmが廃止された。これにより根室本線は滝川―富良野間と新得―根室間に分断され、滝川側からは根室に行くことが出来ない根室本線となってしまった。今回、廃止された区間のうち東鹿越―新得間は、2016年の豪雨災害により不通が続いており、最後まで復旧されることなく廃止となった。

4両編成で運行される東鹿越行普通列車(筆者撮影)
4両編成で運行される東鹿越行普通列車(筆者撮影)

 最終日の富良野―東鹿越間ではキハ40形4両編成による列車が、東鹿越―新得間では4台の列車代行バスによる運行が行われたが、富良野駅からの乗客は、東鹿越駅で代行バスに乗り継ぐものはそれほど多くはなく、用意された4台の代行バスのうち3台はほとんど乗客を乗せることなく新得方面へ発車していった。大半の乗客は東鹿越駅から折り返し列車に乗車し、富良野―東鹿越間を何度も往復乗車していた乗客も多かったようだ。

東鹿越駅では大半の乗客が折り返し列車の待機列に並んだ(筆者撮影)
東鹿越駅では大半の乗客が折り返し列車の待機列に並んだ(筆者撮影)

 また、この日は、前日の30日と合わせて札幌―富良野間に臨時特急ふらの号も運行された。臨時特急ふらの号は札幌駅を10時20分に発車し富良野駅に12時22分に到着。その後、約2時間待ちで14時38分発の東鹿越行に接続するダイヤが取られた。折り返しのふらの号は、東鹿越―富良野間の最終1本前となる18時43分着の普通列車に接続し、富良野駅を19時20分に発車し札幌駅に21時19分に到着するダイヤで運行された。しかし、乗客の大半は、最終列車となる富良野19時9分発の東鹿越行と、東鹿越20時20分発の滝川行に集中したことから、札幌行の特急ふらの号の乗客はわずかで、JR北海道はこうした乗客のニーズを汲み取れていないような印象を受けた。

特急ふらの号は初となるラベンダー編成とはなます編成の混結が話題となった(筆者撮影)
特急ふらの号は初となるラベンダー編成とはなます編成の混結が話題となった(筆者撮影)

札幌行の特急ふらの号は乗客がまばらだった(筆者撮影)
札幌行の特急ふらの号は乗客がまばらだった(筆者撮影)

 東鹿越発の最終列車は、ほかの廃止路線同様に、全国から押し寄せた4両編成の列車に乗り切れんばかりの乗客を乗せて発車したが、今後のほかの廃線地域と同様に富良野―新得間の沿線では観光振興の波から取り残されることは容易に想像がつくことがしのびない。すでに、只見線など道外のケースでは閑散路線であっても観光路線化したほうが地域経済全体では鉄道の赤字額を上回る経済効果を生むとして公費を投入して存続されるケースも出ているが、北海道では一向にそのような発想が見られないことは非常に残念だ。

東鹿越駅で最終列車に並ぶ人たち(筆者撮影)
東鹿越駅で最終列車に並ぶ人たち(筆者撮影)

特に、海外では鉄道に乗ること自体が観光資源として認知されていることからインバウンド振興の波は鉄道のある地域に波及しやすいという傾向がある。この冬の観光シーズンでは、JR石勝線沿線では、札幌や新千歳空港からアクセスが容易なトマムが大勢のインバウンド観光客で賑わっていた一方で、石勝線夕張支線の「攻めの廃線」を行った夕張市では、マウントレースイスキー場の営業を再開し、市が目標とする60万人の入り込み観光客数の目標を達成するために観光HPの充実など様々な手は打ってはいるものの「目標達成は厳しい状況であることは事実」と2023年12月の定例市議会で市長が答弁している

最終列車のサボ(筆者撮影)
最終列車のサボ(筆者撮影)

 トラックドライバーやバスドライバーの労働規制が強化される2024年を迎えて、今後はより一層、ネットワークとしての鉄道が果たす役割が重要になると考えられるが、北海道でこうした鉄道網の分断が進めば、特に災害時に迂回ルートを確保できないといった問題が生じることも懸念される。根室線の存続運動を行っていた新得町の団体が今後は根室線を復活させる運動に切り変えて活動を行っていくという報道を目にしたが、今後の彼らの活動を応援したい。

(了)

鉄道ライター

鉄道に乗りすぎて頭の中が時刻表になりました。日本の鉄道全路線の乗りつぶしに挑戦中です。学生時代はお金がなかったので青春18きっぷで日本列島縦断修行をしてましたが、社会人になってからは新幹線で日本列島縦断修行ができるようになりました。

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