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根室本線部分廃止で寄せられた賛否の声 これまでの盲腸線廃止とは異なる注目の高さ

鉄道乗蔵鉄道ライター
根室本線東鹿越発滝川行の最終列車(筆者撮影)

 2024年3月31日限りで部分廃止されたJR北海道根室本線の富良野―新得間81.7km。筆者は、この件について、2024年4月12日付記事(幹線ルートの分断で腑に落ちない根室線の部分廃止 ドライバー不足や災害時の「リスク分散の視点」が欠如?)と2024年4月14日付記事(根室本線部分廃止によるネットワーク分断はなにが問題なのか 日本の食料安全保障からの懸念点)の2本の記事を執筆したが、筆者のX(旧ツイッター)には賛否を含めて様々な意見が寄せられており、この問題の関心の高さを実感した。

廃線反対派の意見は?

 廃線反対派の意見として主だったものは、鉄道貨物が運休した場合に、馬鈴薯などの農産品の高騰を心配する声や、災害時のリスク分散として冗長性を確保するためにネットワークとしての鉄道網を確保するべきだという声だ。

 近年、ドライバー不足問題が深刻化していることから、国土交通省も今後10年間で鉄道貨物を倍増させる方針を取っていることから、今後は倍増された鉄道貨物を万が一の際にすべてトラックで代替することは、より困難を伴うことにもなりかねない。

 2016年8月水害により道東―札幌・苫小牧間の貨物列車のトラック代行輸送では、北海道内だけでは車両・運転手を確保できずに、首都圏からの応援部隊を含めて運行されたという情報も寄せていただいた。

 こうした中で、鉄道路線網の分断・廃止が進む北海道においては、基幹産業である農水産業を支えるための物流網がより脆弱なもとのなってしまった印象は否めない。

廃線賛成派の意見は?

 一方で、廃線賛成派の意見としては、今まで8年間も根室本線が寸断されていたなかで特に不自由は生じていない。この10年間で石勝線が寸断されたこともあったが問題はなかったので、トラックと船で運べばよいという意見が多く目についた。

 しかし、これまでとこれからでは、状況は大きく変わっている。根室本線の東鹿越―新得間が寸断された2016年当時は、ドライバー不足の問題は表面化しておらず、国も鉄道貨物を倍増させるという具体的な方針を示してはいなかった。

 北海道の農産物の生産拠点は内陸に位置していることも特徴で、例えば、帯広市から十勝港までは約80km、釧路港までは約120km、苫小牧港までは約170km離れており、貨物列車の運行がストップした場合には、この間のドライバー確保を本当に行えるのかという問題も生じる。なお、十勝地方北部の農業地帯である上士幌町から十勝港までは約130km離れており、同じ十勝地方であっても港までは相応の距離がある。輸送効率が悪化すればそれは首都圏を始めとした本州方面での野菜価格の高騰を招き、家計を直撃することになる。

 こうしたことから、今後の考え方として重要なポイントは、鉄道かトラック、鉄道か船という安易な二元論ではなく、北海道経済の根幹である農水産業を支える安定した物流体制を確立するためには、それぞれのモードをどのように組み合わせることが最適であるのかという議論ではないだろうか。

(了)

鉄道ライター

鉄道に乗りすぎて頭の中が時刻表になりました。日本の鉄道全路線の乗りつぶしに挑戦中です。学生時代はお金がなかったので青春18きっぷで日本列島縦断修行をしてましたが、社会人になってからは新幹線で日本列島縦断修行ができるようになりました。

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