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【駅の旅】桜咲く広大な展勝地・奥州北上の春/JR東北新幹線・東北本線・北上線・北上駅(岩手県)

東北新幹線と東北本線、北上線が接続する要衝駅

 北上市は人口およそ93,000人、盛岡市に次いで岩手県第2の都市。その中心駅、北上からは東北新幹線と東北本線、北上線が発着する。新幹線は東京~盛岡間のすべての「やまびこ」が停車するほか、朝晩の一部の「はやぶさ」も停まる。

北上駅には東京から「やまびこ」に乗って3時間弱で着く。
北上駅には東京から「やまびこ」に乗って3時間弱で着く。

在来線は東北本線と北上線

 東北本線には、新幹線開業以前は多くの特急・急行が通っていたが、現在は地域輸送に特化し、主に一ノ関と盛岡を結ぶ普通列車だけが走る。

盛岡行の普通列車。かつて長大な客車列車が走っていたが、今は2両編成ロングシートの701系電車になってしまった。
盛岡行の普通列車。かつて長大な客車列車が走っていたが、今は2両編成ロングシートの701系電車になってしまった。

 また、北上と横手の間を結ぶ北上線は、岩手県と秋田県との県境を越える風光明媚なローカル線。ただ、運転本数が少なく、冬期間は豪雪のため、運休することも多い。

北上線は駅の西側の0番線から発車する。終点の横手まで行く列車は1日7本しかない。
北上線は駅の西側の0番線から発車する。終点の横手まで行く列車は1日7本しかない。

1万本の桜が咲き誇る展勝地

 その北上は、北上山地と奥羽山地の山々に囲まれた北上盆地にあり、北上川と和賀川が市内で合流する。北上駅の東側に位置する北上川沿いに展勝地(てんしょうち)という広大な公園がある。ここには2キロの桜並木が続き、樹齢百年にもなる1万本もの桜が植えられている国内屈指の桜の名所となっている。

展勝地の園内では毎年、4月下旬に桜まつりが開催される。
展勝地の園内では毎年、4月下旬に桜まつりが開催される。

 展勝地の桜は、1921(大正10)年に地元出身の実業家、澤藤幸治氏の提唱によって造営されたもので、150種の桜が美しさを競っている。

1万本もの桜が咲き誇るさまは、たとえようのない美しさだ。
1万本もの桜が咲き誇るさまは、たとえようのない美しさだ。

公園内でSLとラッセル車に会える

 また、公園内には、かつて仙台、宮古、尻内(八戸)の各機関区に配属され、東北地方を走ったC58342蒸気機関車と、雪深い北上線で冬期間に除雪作業に従事したラッセル車(キ100228)が保存されており、桜まつりの期間中、蒸気機関車の運転台に入ることもできる。

公園内に展示されているラッセル車とSL。きれいに手入れがされており、良好な保存状態だ。
公園内に展示されているラッセル車とSL。きれいに手入れがされており、良好な保存状態だ。

みちのく民俗村は数多くの古民家がある無料の屋外博物館

 展勝地の近くにはみちのく民俗村という屋外博物館がある。こちらは、この地域に古くからあった南部曲がり屋などの茅葺屋根の古民家や、大正時代の洋風建築の建造物などあわせて28棟の歴史的な建物が並んでいる。

みちのく民俗村の入口にある旧今野家住宅。明治・大正期の商家だった。
みちのく民俗村の入口にある旧今野家住宅。明治・大正期の商家だった。

 園内の多くの建物が内部に入ることができる。しかも、なんと入園が無料なのが嬉しい。

こちらは旧北川家の南部曲がり屋。
こちらは旧北川家の南部曲がり屋。

旧女学校校舎の資料館に隣接して珍しい消防資料館

 また、民俗村内の旧黒沢尻高等女学校の校舎は民俗資料館になっており、かつて、厳しい冬を乗り越えたこの地域の風俗文化を知ることができる。

今は民俗資料館になっている旧黒沢尻高等女学校の校舎。
今は民俗資料館になっている旧黒沢尻高等女学校の校舎。

 民俗資料館の棟続きに、全国的にも珍しい消防資料館があり、江戸時代の町火消しから、初期の消防自動車まで、消防に関する機具や資料が展示されている。

初期の国産消防自動車。
初期の国産消防自動車。

北上で見つけた癒やしの居酒屋

 そんな北上の夜の街で、癒やしの居酒屋を見つけた。北上駅西口から歩いて5分ほどの路地にある店の名は「居酒屋あれい」

クマのイラストがかわいい。どうやら、店の女将はクマ好きらしい。
クマのイラストがかわいい。どうやら、店の女将はクマ好きらしい。

 三陸の魚介類や、串焼き、煮物など、笑顔の素敵な若女将の手料理が味わえる。浜千鳥、龍泉、赤武、水神など、岩手の地酒も豊富にそろっている。

盛岡の地酒「赤武」(あかぶ)。口当たりがよく呑みやすいお酒だった。
盛岡の地酒「赤武」(あかぶ)。口当たりがよく呑みやすいお酒だった。

【テツドラー田中の「駅の旅」㉗/JR東日本/東北新幹線・東北本線・北上線・北上駅/岩手県北上市大通り】

1955年神戸市生まれ。本名は田中正恭。生来の鉄道ファンを自認し、1981年国鉄全線、2000年国内鉄道全線走破のほか、シベリア、カナダ、オーストラリアの横断鉄道など、世界27カ国を鉄道旅行。主な著書は『消えゆく鉄道の風景』『終着駅』(自由国民社)、『夜汽車の風景』(クラッセ)、『プロ野球と鉄道』(交通新聞社)など。TBS『マツコの知らない世界』、文化放送『くにまるジャパン極』等にゲスト出演。雑誌寄稿多数。その他、離島めぐり、プロ野球観戦、地酒、エスニック料理など多趣味な人生を送る。2018年10月〜2023年3月までyahoo クリエイターズプログラム・ショート動画に259篇投稿。

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