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【英会話】剣と銃で行われた で、was done with を使ったら首を振られた。なんで?

英語雑学エッセイスト 徳田孝一郎英語・英会話研修スクール「英語・直観力」代表

 20年ほど仕事で英語を話していますが、慣れないことを言おうとすると一瞬詰まったり、日本語を直訳したりしてしまうことが、まだまだあります。
 そんな私の失敗英語や、今も私の周りで起こっている失敗英語を多少脚色も加えて、ご披露したいと思います。今回は、読むと自然な英語を得られるお得なエッセイです。

戦争は剣と銃で行われると思ってたんだよ。

 このまえの12月8日にRichと話していたんですが、日付も日付なんで国際情勢の話になりました。Native English Speakerの世界では国際情勢や宗教、政治、性、軍事の話というのは親しくないと話さないというのがマナーなんですが、まぁ、だいぶ付き合いも長いので、たまにそういう重い話題も出て来る。

 そこでRichが言ってきたのは、欧米人も自信を失っているという話。
 大昔なら、あそこもあそこも力でねじ伏せてしまったのに なんて物騒なことを言ってくる(あ、もちろんRichはそうしないのはいいことだと思っています)。でも、そういうことをあまりせずに、迷うようになった。それがいつごろからなんだろうね? って訊かれたんです。

 この手のヨーロッパ文明の迷いみたいな話は、実は私が大学で修めた現代思想ではメジャーな話でして、それは第1次世界大戦のあとから、とよく言われます。
 それまで、ヨーロッパ近代文明(=哲学)は人々を幸せにして、便利で素晴らしい世界を作れるんだ! と思われていたんですが、第1次世界大戦の惨禍を目の当たりにして、おれたち、なんか間違ってない? と思うようになったんです。そこにハイデガーという哲学者が「存在と時間」を引っ提げて現れ、「存在と時間」は大ベストセラー、20世紀を代表する哲学書になるんですが、それはまた別の話。

 ともかく、Richには、第1次世界大戦のあとからと答えて、それはなぜかという話をする。で、

一般的に、第一次世界大戦前、人々は戦争は剣と銃で行うと思っていたんだよ

 と言おうとしたら、詰まってしまった。これは間違いなく直訳では伝わらない。でも、他の言い方も思いつかないんで、ええいっままよっ、と言ってみる。

Generally, people thought war was done with swords and rifles before the Great War.

 そしたら、あっさり首を振られました。悔しい。みなさんなら、これ、どう英語にされるでしょうか?

ヨーロッパの人々が迷っていても、近代兵器がどんどん進化していくのは困ったことです。
ヨーロッパの人々が迷っていても、近代兵器がどんどん進化していくのは困ったことです。

 Richのヒントは、内容をよく考えて具体的にということ。
 剣や銃で戦争を行うというのが具体的にどういうことなのかと考えると、戦う ってことです。なので、そこを具体的に表現する。

Generally, people thought war was fought with swords and rifles before the Great War.
一般的に、第一次世界大戦前、人々は戦争は剣と銃で戦われると思っていたんだよ。

 すると、Richがサムアップ。前近代的な戦争を上手くあらわした英語だと褒めらられました。
 こういう出来るだけ具体的な表現というのは、ふわっと表現して相手の想像に任せる日本語にはない英語の特徴で、より正確な情報伝達が必要なビジネスでは便利です。この辺りも、英語を話す効用ですね。

 と、こんな感じで、Native English Speakerたちとの英語やカルチャーギャップのお話をご披露したいと思っております。お気に召しましたら是非ともごひいき(フォロー)くださいますようお願い申し上げます。

 え? じゃあ、第一次世界大戦はどうだったかが気になる?
 話し出すと長くなってしまうので、簡単にまとめると、剣と銃の戦争は、機関銃・火炎放射器・戦車の戦争になってしまいました。それを可能にしたのはいわゆる科学技術の力。そして、科学技術はヨーロッパ近代思想に基づいています(形而上学はヘーゲルのもとで完成し、以後は技術として猛威を振るう という言葉がありまして)。そこから、ヨーロッパの人々は、おれたちの根本的な考え、なんか間違ってない? と迷いが始まるというわけです。

イラスト 大橋啓子

英語・英会話研修スクール「英語・直観力」代表

英語嫌いだったが、仕事で必要に迫られ日本語を英語にする方法で英文法をマスター。その実績を買われて英会話習得カリキュラムを作成するために英会話スクールに転職し活躍する。この時期に英文法をネタにした小説「英語の国の兵衛門」も上梓。その後Vice-presidentに就任。Native English Speakerのマネージメントを経験し、日本人とは違った価値観や思考法に振り回されるという経験を多々する。現在は独立し、英会話スキルだけではなく、Native English Speakerとうまく交渉できるスキル習得を目指した英語・英会話研修スクール「英語・直観力」を経営している。

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