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【名古屋市熱田区】旧東海道で唯一の海上路。船着場として栄えた「宮の渡し公園」をご紹介

土庄雄平愛知深掘りライター(名古屋市)

江戸・日本橋から京・三条大橋に至る全長492kmの「東海道」。名古屋もその道中、宿場町や物流網として栄え、その軌跡が今でも点在しています。

鳴海宿や一里塚、有松の街並みなど、近世以降の名古屋の歴史は"街道の歴史"と言っても良いほど、文化や産業などの面で現代までつながる影響を残しました。

そんな街道の歴史の中で、欠かせないスポットが名古屋市熱田区にあります。それが「宮の渡し」です。東海道で41番目の宿場にあたり、最大級の規模を誇っていた宮宿ですが、42番目の宿場である桑名宿までは海を渡る必要がありました。

そこで伊勢湾につながる堀川沿いに船着場が設けられ、桑名まで渡し船が運行されていたのです。その距離は当時の単位で七里(約27.5km)。そのため七里の渡しとも呼ばれていました。

かつての船着場は今は公園として整備されており、散策をすることができます。当時の面影を残していて、手軽に歴史情緒に浸れる公園です。

破損や焼失してしまったメイン施設もしっかりと復元されています。

例えば、かつて犬山城の城主・成瀬正房が建立した常夜灯。宮の渡しの安全を見守る大事な施設でした。何度も破損を繰り返しながらも、昭和30年に復元されて現在まで残っています。

また公園の象徴といえる施設が、時の鐘です。こちらは尾張徳川家2代目藩主・徳川光友の命によって作られたもの。熱田の住民や東海道をゆく旅人に時刻を知らせる役目を担っていました。

江戸時代に使われていた鐘は、今も熱田区の蔵福寺に保管されています。かつてこの鐘の周囲に集い、船の時間を待っていた旅人の姿を連想できますね。東海道で唯一の海路ということで、きっと海をわたる緊張感もあったことでしょう。

有松の街並みなどを思わせる、なまこ壁のトイレはとても清潔に保たれていました。他にも古風な東屋など、公園全体が歴史景観を損ねないように工夫されています。

船着場の張り出しは今でも往時のまま。海に落ちないように柵だけが設けられています。この川の先に伊勢湾があって、その海を渡ったら桑名宿。

東海道の中でひときわ旅情を感じる区間だったのではないでしょうか。対岸には船も置かれており、いっそう宮の渡しの雰囲気を高めてくれます。

冬ということもあり、たくさんの渡鳥が海を泳いでいました。今は静かな宮の渡し公園。鳥たちの絶好の越冬の地のようです。

市内に散らばる歴史をめぐって歩くと、今の名古屋につながる要素やバックグラウンドが見えてくるように思える今日この頃。ディープですが、名古屋の歴史は面白いですね。

<宮の渡し公園>
住所:愛知県名古屋市熱田区内田町
アクセス:名鉄名古屋本線・熱田神宮伝場町から徒歩約7分

愛知深掘りライター(名古屋市)

1993年生まれ、愛知県豊田市出身、同志社大学文学部卒。第二新卒を経験後、愛知へUターンをして、メーカー営業職とトラベルライターを両立。現在は、IT企業に勤務しながら、自然や暮らしに一歩踏み込む、情報発信に精を出す。美味しい地元グルメを探しながら、名古屋市内の色彩豊かな自然を愛でるのがルーチン。 ※12月18日からLINEにて土庄雄平「名古屋深掘りチャンネル」配信スタート!毎週月曜日の10時にお届けします。名古屋のグルメから週末おでかけ情報、ディープなスポットまで盛りだくさん。ぜひ登録してくださいね♪(記事内のリンクは、Yahoo!ニュース エキスパートとの取り組みで特別に設置しています。)

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