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核融合実験の大進歩!遂に夢の「臨界点」を超える…

どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。

今回は「核融合実験の最新の進歩がヤバすぎる」というテーマで動画をお送りしていきます。

核融合反応とは?

まず簡単に核融合反応の仕組みを説明していきます。

核融合反応とは、物質を構成する原子核同士が衝突し、より大きな原子核が形成される反応のことです。

原子核には陽子や中性子が含まれています。

陽子は+の電荷をおびているため、原子核同士が接近するとクーロン力の反発が起き、簡単にはくっついて融合することができません。

このクーロン力の反発をかいくぐって核融合を起こすためには、原子核自体が非常に高速で移動していて高いエネルギーを持っている、つまり超高温の環境である必要があります。

さらに激しく飛び交う原子核を狭い空間にとどめておかないと衝突が起きないので、非常に高い圧力も必要になります。

このような超高温・超高圧の条件が揃うと、核融合反応が起こります。

太陽のように自ら光輝く天体である「恒星」は、地球の約318倍重い木星のさらに80倍程度の質量を少なくとも持っているため、中心部が強大な重力で圧縮され、核融合が起こるほどの超高温・超高圧な環境が実現しています。

核融合反応が起こると、質量の一部がエネルギーに変換され、膨大なエネルギーが生成されます。

そのため恒星はあのようにとてつもないエネルギーを放ち続けているんですね!

核融合の臨界条件を達成

credits: Damien Jemison/LLNL
credits: Damien Jemison/LLNL

核融合反応は発生条件が厳しいものの、非常に高いエネルギーを効率よく取り出すことができ、かつ高レベル放射性廃棄物を生成しないクリーンな現象なので、人類はこの核融合をコントロールすべく、様々な研究を行っています。

ローレンス・リバモア国立研究所は8月8日、国立点火施設(NIF)での実験によって核融合から大量のエネルギー生み出すことに成功したと発表しました。

国立点火施設はサッカー競技場3面分の大きさの巨大なレーザー実験装置です。

研究チームは、装置内に配置された192本のレーザー光線を微小な一点に集中させ爆発的なエネルギーを生成しました。

Credit:National Ignition Facility
Credit:National Ignition Facility

周囲からレーザー光線を当てることで核融合を起こす原子のかたまりを非常に狭い領域に圧縮することができます。

その領域の大きさは約0.03ミリメートルで、人間の髪の毛の直径(長さではなくて太さ)と同程度です。

燃料を圧縮する、つまり高い密度、圧力、温度の状態にすることで核融合反応が連鎖して起こるようになるのです。

物体がその場所に留まろうとする慣性のために、圧縮した燃料はほんの一瞬だけ高密度の状態を保ちます。

そこでこの方式は「慣性閉じ込め方式」と呼ばれています。

また、レーザー光線を使用するので、「レーザー核融合方式」ともいいます。

Credit: John Jett, LLNL.
Credit: John Jett, LLNL.

今回の実験では、100兆分の1秒という非常に短い間ですが、1京ワット(W)を超える核融合出力を生み出すことが可能になりました。

そのエネルギー量は1.3メガジュール(MJ)を記録し、この値はエネルギー生成量が使用量を超える「臨界プラズマ条件」に達したことを示しています!

臨界プラズマ条件は核融合発電などの実現のための、非常に重要な第一歩として考えられてきました。

それが実際に達成されたのは、本当に目覚ましい進歩と言えます。

核融合で発生したエネルギーによって新たな核融合を発生させ、追加の過熱をしなくても勝手に核融合が継続して起こるようになる条件は、「自己点火条件」といいます。

今回エネルギー生成量が使用量を上回ったことは、自己点火条件の達成に向けた偉大な進歩となります。

今後さらに核融合の効率が高まり、自己点火条件に達せば、飛躍的に人類のエネルギー問題が解決されるかもしれません!

白色矮星の環境を再現!?

credits: Damien Jemison/LLNL
credits: Damien Jemison/LLNL

極限的な密度・温度・圧力を作りだすNIFはまったく新しい未踏の科学の最前線を切り開きます。

それによって「実験室宇宙物理学」という新しい学問分野が誕生しています。

NIFは従来の実験室では不可能と思われていた極限状態を作りだすことができます。

その設計上、一千億気圧の圧力、1億度以上の温度、1000g/立方センチメートルの密度が可能です。

このような極限環境は惑星や、惑星より重い褐色矮星、さらにはもっと重い恒星の内部に匹敵します。

そのため、NIFの実験によってそのような場所で何が起きているのかを調べることが可能になります。

さらに、通常の恒星よりも高密度な天体である「白色矮星」の性質を理解するのにも役立つと期待されています。

白色矮星とは、太陽の8倍未満の質量を持つ小中規模の恒星が進化の果てに到達する最終状態です。

例えば地球から最も近くにある白色矮星シリウスBは、地球とほぼ同等の大きさを持ちながらも、その質量は実に地球の30万倍にもなります!

そんな極端すぎる環境を持った白色矮星では、私たちの住む地球上の環境とは異なる状態で、物質が存在していると考えられています。

このような高圧での物質の状態を決める正確なモデルはこれまで構築できておらず、恒星の進化のモデルに大きな空白が空いていました。

そんな中、科学者たちは特定の分類の白色矮星の極限環境を実験室で再現し、その結果、このような極端な圧力の下では炭素原子の内側にある電子が引き剥がされ、電離していることが明らかになりました!

この事実を従来のモデルに組み込むと、これまで正確な説明ができていなかった白色矮星の環境を理解できるようになります。

さらに、恒星の進化論をより正確に決定づけることも可能になります。

今後さらに技術が発展し、宇宙のより厳しい環境が再現できたり、安定した核融合発電が実現されるのが楽しみです!

情報出典元:
https://www.llnl.gov/news/national-ignition-facility-experiment-puts-researchers-threshold-fusion-ignition
https://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/iter/019.htm

「宇宙ヤバイch」というYouTubeチャンネルで、宇宙分野の最新ニュースや雑学などを発信しているYouTuberです。好きな天体は海王星です。

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