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光速の8%!?異次元の速度で巨大ブラックホールを公転する星

宇宙ヤバイchキャベチ

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どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。

今回は「光速の8%の速度に相当する最高速度星」というテーマで動画をお送りしていきます。

天の川銀河中心部の過酷な環境

私たちの属する天の川銀河の中心部には、太陽の400万倍を超える質量を持つ超大質量ブラックホール「いて座A*」があると考えられています。

このブラックホールはあまりに質量が大きいため、その周囲にある天体を強大すぎる重力によって物凄い勢いで公転させています。

本来ならより小さく軽い惑星などの天体を振り回す側の恒星ですら、いとも簡単に捉えられてしまいます。

実際にこれまでいて座A*の近くを物凄い速度で公転する恒星はいくつも発見されていて、S1、S10などのようにS(数字)と名前を付けられています。

その中でもS2という恒星は、長らくいて座A*の最も近くを公転する天体であると考えられてきました。

S2はいて座A*からわずか120au(1au=地球と太陽の距離)の距離にまで接近し、強力な重力によってなんと秒速7600km、実に宇宙の速度の上限である光速の2.5%にまで加速させられてしまうんですね!

想像を絶する環境です。

ちなみに参考までに、地球の太陽に対する公転速度は30km/sです。7600km/sがいかにとんでもない数値なのかが伝わると思います!

接近するとは言っても、S2の軌道は太陽系最遠の惑星である海王星の軌道と比べても非常に大きいです。

これだけ大きい軌道にもかかわらず、S2の公転周期はたったの約16年です。

太陽に対する海王星の公転周期が165年なので、これだけ大きな公転軌道を10分の1以下の周期で公転させる、いて座A*の凄まじい重力が伺えます。

ですがその後、このS2よりも遥かにブラックホールに接近するS62という恒星も発見されています。

なんとS62はいて座A*からわずか17.8auと太陽と天王星よりも近い位置まで接近し、最速で20000km/s、光速の6.7%にまで達します!

S2の公転周期が約16年なのに対し、S62は約10年です。

S62がいかに近い距離を短い周期で公転しているのかがわかりますね。

さらにヤバイ環境の星が見つかる

そして去年2020年8月、過去7年間にわたる観測の結果、S2よりもさらにブラックホールに近い領域を公転する星が新たに5つも発見されたと発表されました。

S4711、S4712、S4713、S4714、S4715という星々です。

その中でもS4711S4714は特筆すべき軌道を描いています。

S4711は観測史上最も公転周期が短く、なんとたったの7.6年でいて座A*の周囲を周回してしまいます。

そしてS4714は公転周期は12年程度とS4711やS62と比べても若干長いですが、極めて細長い楕円型の軌道を描いているため、いて座A*に最も近いところまで接近します。

S4714はなんといて座A*までわずか12.6au、太陽と土星間に近い距離にまで接近することが判明しました!

接近時にはなんと24000km/s、光速度の8%にまで加速させられていることがわかります。

公転する天体は主星に近付くほど公転速度が速くなるため、瞬間的には最もブラックホールに接近するS4714がいて座A*周囲の星々、むしろ天の川銀河全体の中で最速の星ということになります!

一般相対性理論の正しさを証明

一般相対性理論によると、ブラックホールの近くほどに重力が強い場所では、重力赤方偏移という現象が起こっていると予言されていました。

救急車が観測者に対して近づくとサイレンの音が高音に、逆に遠ざかると低音に感じる「ドップラー効果」は非常に有名ですよね。

このドップラー効果は、実は光でも起こります。

Credit:NASA JPL-CaltechR. Hurt (Caltech-IPAC)
Credit:NASA JPL-CaltechR. Hurt (Caltech-IPAC)

地球から見て近づく天体が放つ光は地球から見ると波長が短く、つまりより青みがかかって見え、逆に遠ざかる天体が放つ光は波長が長く、つまりより赤みがかって見えます。

このように地球から見て天体が遠ざかっているとき、その天体が放った光の波長が伸び、赤みがかって見える現象が、赤方偏移と呼ばれる現象です。

宇宙は膨張していて遠くにある天体ほど地球から速い速度で遠ざかっているため、遠い天体ほど強く赤方偏移が起きていることが知られています。

Credit:ESO/M. Kornmesser
Credit:ESO/M. Kornmesser

そんな赤方偏移は、一般相対性理論によると実は強い重力によっても引き起こされると考えられていて、それを特に重力赤方偏移と呼びます。

そして実際にいて座A*のすぐ近くを公転する星のような極限の環境にある天体が放つ光を観測し、そこで重力赤方偏移が起きていることを示すことができれば、逆に一般相対性理論の正しさを示すことができるんですね!

そんな中、S2がブラックホールに接近し、強い重力を受けるようになるほど、S2の光が赤みがかっていく様子を観測することに成功しています。

これによって一般相対性理論の正しさが一層示されたことになります。

Credit:ESO/L. Calçada
Credit:ESO/L. Calçada

さらに一般相対性理論によると、周囲を公転する星々の公転軌道が少しずつずれる、歳差運動と呼ばれる現象が起こる事も予言していました。

この歳差運動についても、S2の観測から起こっていることが明らかになっています。

今回紹介したようにいて座A*に極めて近い星々をさらに見つけられれば、より正確な検証ができることでしょう。

今後も銀河系中心部領域の研究から目が離せません!

https://www.sciencealert.com/the-fastest-star-in-the-galaxy-zooms-as-high-as-8-percent-of-the-speed-of-light
https://www.cnet.com/news/fastest-ever-star-discovered-orbiting-milky-ways-supermassive-black-hole/
サムネイルCredit:ESO/L. Calçada

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