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銀河より明るい閃光を放つ「宇宙最大のブラックホール連星」

宇宙ヤバイchキャベチ

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どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。

今回は「宇宙最大のブラックホール連星系」というテーマで動画をお送りしていきます。

奇妙な増光天体

Credit:大阪教育大学
Credit:大阪教育大学

かに座の領域には、「OJ 287」と呼ばれる天体が存在します。

他の光は天の川銀河内にある恒星であり、通常の恒星と見分けることができませんが、実は地球から35億光年も彼方にある超遠方の天体です!

OJ 287の正体は通常の恒星ではなく、その中心領域に物凄く活発で明るいブラックホールを備えた「銀河」です。

ブラックホールが放つジェットがたまたま地球方向に向いている、「ブレーザー」と呼ばれる分類の銀河です。

Credit: NASA/JPL/Abhimanyu Susobhanan (Tata Institute of Fundamental Research)
Credit: NASA/JPL/Abhimanyu Susobhanan (Tata Institute of Fundamental Research)

そしてそんなOJ 287は、実は約12年に2回の頻度で、一見不規則にも見える奇妙な増光を繰り返していることが知られています。

過去の観測データを遡ると、19世紀末から過去実に120年間にもわたりこのような増光が起きていました。

このような増光の仕方は、他の天体では見られません。

ではOJ 287はなぜこのような光の放ち方をするのでしょうか?

この現象を上手く説明し、今後起こる増光を予測できる理論が模索されましたが、長年未解決のままでした。

OJ 287の正体が遂に解明!?

Credit: NASA/JPL-Caltech/R. Hurt (IPAC)
Credit: NASA/JPL-Caltech/R. Hurt (IPAC)

そんな中1996年に、OJ 287の謎を説明する画期的な理論が提唱されました。

それはOJ 287が「近点移動を起こす巨大なブラックホール連星」であるとするものです。

現在でもこの理論がOJ 287の観測データを説明できる唯一の理論です。

理論によると、OJ 287には大小2つのブラックホールが存在し、大きいブラックホールの周囲を小さいブラックホールが約12年周期で公転しています。

また大きいブラックホールの周りには、まばゆい光を放つ降着円盤が存在しています。

降着円盤の面と小さいブラックホールの公転軌道面がズレているため、小さいブラックホールは約12年に2度、大きいブラックホールを取り巻く降着円盤に突入します。

その際に強烈なフレアを放ち、これが増光の正体です!

その閃光は1兆個の星よりも明るく、天の川銀河全体よりも明るく輝くのだとか…

Credit: NASA/JPL/Abhimanyu Susobhanan (Tata Institute of Fundamental Research)
Credit: NASA/JPL/Abhimanyu Susobhanan (Tata Institute of Fundamental Research)

さらにアインシュタインの一般相対性理論によると、重力の強い天体の周囲を公転する天体の軌道は、公転する度に近点(公転軌道上で主星から最も近い点)が徐々にズレていくことが知られています。

このように近点が移動していくために、増光のタイミングが一見不規則に見えるほどに複雑になっていたわけです。

また、実は小さいブラックホールの公転軌道は、重力波を放射しながら徐々に小さくなっていることが知られており、今から約1万年後には2つのブラックホールは衝突すると予想されています。

そしてこれらのモデルが正しければ、大きいブラックホールの質量は実に太陽の183億倍にもなり、観測史上最大級です。

さらに小さいブラックホールの質量でさえも、太陽の1.5億倍に相当すると考えられています!

天の川銀河中心部の超大質量ブラックホール「いて座A*」ですらその質量は太陽の430万倍程度なので、OJ 287のうち小さい方のブラックホールにすら遠く及びません。

まさに宇宙最大のブラックホール連星系です!

フレアのタイミングを決める要因は他にもあり、その発生時期を予測するのは極めて困難ですが、様々な研究の成果により、現在ではたった数時間の誤差で発生を的中させることができているようです。

OJ 287ブラックホールのサイズ比較

では今回出演してくれたブラックホールたちを、そのサイズ感が伝わりやすいようにこの太陽系にお呼びしてみましょう。

ここからは静止画でブラックホールの比較を紹介しますが、動画の方がより伝わりやすいので、4分52秒からの部分をぜひご覧ください。

ブラックホールには「重力が強すぎて脱出速度が宇宙の速度の上限である光速と等しくなり、一度入ると絶対に出てこれなくなる境目」である「事象の地平面」という球面があります。

一般的にブラックホールの半径は、この事象の地平面の中心からの距離(シュワルツシルト半径)で表されます。

ここでも各ブラックホールのシュワルツシルト半径を比較していきましょう。

まずはいて座A*からです。

太陽の430万倍の質量を持ついて座A*のシュワルツシルト半径は、太陽半径(約70万)のさらに18倍にもなります!

すでにこれだけ巨大な領域で、一方通行の世界が広がっているんですね。

続いてOJ 287の大きい方のブラックホールの周囲を公転している、太陽質量の1.5億倍の衛星ブラックホールを見てみましょう。

このようにとてつもなく巨大です!

事象の地平面の半径は約3auで、太陽系の中心に置くと火星の軌道を丸呑みし、小惑星帯に差し掛かっています。(1au=地球と太陽の距離≒1.5億)

ですがこんな超巨大なブラックホールですら小さい方で、本番は太陽の180億倍の質量を持つブラックホールです。

最後にそちらも見てみましょう。

あまりに巨大すぎますね…事象の地平面の半径は355au、太陽と冥王星の距離でも40au前後で、既知の最も遠い太陽系天体でも現在地で130au程度です。

既知の天体全てが丸呑みされてしまう巨大さです!

超巨大ブラックホールと超超巨大ブラックホールが連星を成すOJ 287、本当にヤバすぎる天体でした!

https://www.jpl.nasa.gov/news/spitzer-telescope-reveals-the-precise-timing-of-a-black-hole-dance
https://quasar.cc.osaka-kyoiku.ac.jp/~katsura/OJ_287.html
http://ww1.city.asakuchi.okayama.jp/museum/lecture/080719sadakane.pdf

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