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最高精度の宇宙地図が公開!宇宙の詳細な姿と大きな謎が解明される

どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。

今回は「史上最高精度の宇宙地図と新発見」というテーマで動画をお送りしていきます。

●最高精度の宇宙地図

地球から夜空を観測し、超遠方にある銀河やクェーサーの正確な位置や明るさなどのパラメータを明らかにすることで、詳細な宇宙の地図を作ることを目的としたプロジェクト、「スローン・デジタル・スカイサーベイ(SDSS)」があります。

そんなSDSSの中のプロジェクトの一つである「eBOSS」は、SDSSの過去20年間の観測によって得られたデータも合わせ、実に200万個以上の銀河とクエーサーの分布をもとにした史上最高精度の宇宙地図を作成することに成功しました!

(※以下は映像を前提とした解説なので、YouTubeでの視聴がおすすめです。)

Credits: EPFL
Credits: EPFL

早速ですが、こちらが実際の地図となります!

中心は地球であり、地球から138億光年彼方にある球は、宇宙背景放射が届いている領域であり、これが観測可能な宇宙の果てになります。

そして色ごとに地球からの距離や、天体の分類が分けて描かれていますね。

どの色で描かれた粒も、一つ一つ全てが大量の星々やブラックホールが集まって構成される、巨大な銀河となります。本当に壮大ですね。

どの色の領域でも、銀河が多く存在している場所(銀河フィラメント)と何もない領域(ボイド)で分かれており、物質の密度のムラがあるのがわかります。

このように非常にマクロなスケールで宇宙を見たときに見える、銀河フィラメントとボイドから成る網目構造を、「宇宙の大規模構造」と呼んでいます。

また、遠方の銀河でも「今この瞬間地球から見える光」をもとにその姿を見ているわけですが、地球から遠いほど光が届くのに時間がかかるため、過去の姿を見ています。

例えば1億光年彼方の天体なら今見えている姿は1億年前の姿、10億光年彼方の天体なら10億年前の姿を見ています。

宇宙は今この瞬間の全体像を見られない代わりに、遠ざかるほど過去の宇宙を遡って見ることができます。

この地図では最大で実に110億光年彼方の天体、つまり110億年も前の宇宙の姿が鮮明に描かれています!

●地図から何がわかる?

credit: Anand Raichoor (EPFL), Ashley Ross (Ohio State University) and the SDSS Collaboration
credit: Anand Raichoor (EPFL), Ashley Ross (Ohio State University) and the SDSS Collaboration

大勢の科学者たちが協力してこの美しい地図を作ったのは、単に美しいからという理由ではなく、この地図から新たに非常に多くの、かつ重大なことがわかるからです。少々難解ですが、その辺りを解説してみたいと思います。

様々な観測から、宇宙にはダークマターと呼ばれる、「光では観測できないが、質量を持つ物質」がたくさん存在している可能性が高いと考えられています。

そんな正体不明のダークマターに対して、私たちがよく知っている通常の物質や、それを構成する粒子を、天文学では「バリオン」と呼びます。

そんなバリオンもダークマターも、宇宙誕生直後の灼熱時代は、超高温で高エネルギーのために細かい粒子の単位で独立して存在していました。

このあたりの詳細な説明は非常に複雑なので端折りますが、そのような宇宙初期の時代、光(光子)はバリオンと結びつき、巨大な音波のような波として宇宙空間を伝わっていきました。

そのような波は、「バリオン音響振動」と呼ばれています。

バリオン音響振動はどんどん広がりますが、宇宙誕生から約38万年後、宇宙の温度が下がって光子が他の物質と相互作用せず、直進できるようになる時代(宇宙の晴れ上がり)以降は波が消えてしまいました。

Credits: EPFL
Credits: EPFL

ですがこの宇宙誕生直後にあったバリオン音響振動は、それ以降の宇宙にも「銀河の分布の周期性」としてその痕跡が残っているそうなんですね!

宇宙の晴れ上がりまでの時間、そして波の伝わる速度から計算すると、バリオン音響振動の痕跡として残る銀河分布の周期は、約5億光年であると考えられています。

credit: Anand Raichoor (EPFL), Ashley Ross (Ohio State University) and the SDSS Collaboration
credit: Anand Raichoor (EPFL), Ashley Ross (Ohio State University) and the SDSS Collaboration

そして新たに公開された最新の宇宙地図の画像右側に、地球からの距離ごとに示された、銀河分布の周期性のグラフが記載されています。

これがバリオン音響振動の痕跡となっています。

credit: Eva-Maria Mueller (Oxford University) and the SDSS Collaboration
credit: Eva-Maria Mueller (Oxford University) and the SDSS Collaboration

この銀河分布の周期性のデータから、宇宙の時代ごとの膨張率や、宇宙の曲率といった、宇宙論において非常に重要なパラメータが理解できるんだそうです!

最新の地図から分析すると、宇宙の膨張率を示すハッブル定数の値(画像縦軸)、そして宇宙の曲率(横軸)共に、これまでの研究と比べて非常に高い精度で求められていることがわかります!

さらに地図から、今から約60億年前にこの宇宙の膨張は加速し始め、その後現在に至るまで加速が続いていることも示されているそうです。

この宇宙膨張の加速は「ダークエネルギー」という全く未知のエネルギーによるものであるとされており、先述のダークマターと並んでその正体の解明が待たれています。

今後も同様の研究が続けられ、この宇宙の真の姿についてより深く理解されていくことに期待しましょう!

https://www.sdss.org/press-releases/no-need-to-mind-the-gap/

「宇宙ヤバイch」というYouTubeチャンネルで、宇宙分野の最新ニュースや雑学などを発信しているYouTuberです。好きな天体は海王星です。

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