史上最強望遠鏡「ジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡」がもたらしそうな大発見3選
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「ジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡でもたらされる革新的大発見3選」というテーマで動画をお送りします。
2021年12月25日、ジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が打ち上げられました。
その後望遠鏡の展開作業を終えながら地球から150万キロ離れた、観測地点となる目標地点に到着しました。
JWSTはこれから未開拓の領域の観測に挑み、様々な成果がもたらさせることが期待されています。
今回はJWSTによってもたらされると期待される主要な成果について、どのようなものがあるのか見ていきましょう。
●ファーストスターの発見
ファーストスターとはビックバンから数億年後に誕生したと考えられている、第一世代の大質量星たちです。
これらの星は宇宙で最初に重い元素を生み出し、それが最初の銀河を構成する素材となりました。
ここで「重い元素」とは、水素とヘリウム以外の元素のことです。
最も軽い元素である水素と2番目に軽いヘリウムは、宇宙誕生直後に高温高圧状態だった「火の玉宇宙」の中で合成されました。
それ以外の元素は恒星内部の核融合反応によってつくられ、星が爆発することで宇宙空間にまき散らされたと考えられています。
天文学者たちは重い元素の量によって恒星を「種族」に分類しています。
現在、実際に確認されているのは「種族Ⅰ」と「種族Ⅱ」の2種類の恒星です。
種族Ⅰは重い元素を多く含む恒星で、比較的最近できた星です。太陽もここに含まれます。
ちなみに太陽は木星14個分の質量に相当する重い元素を含んでいます。
種族Ⅱは重い元素の含有量が少ない恒星で、早い時期に形成された星です。
最も軽い元素である水素と2番目に軽いヘリウムが主成分です。
種族Ⅱの星が集まっている領域を調べると、想定よりもはるかに多い割合で重い元素が含まれていました。
なぜ、そこに重い元素が存在していたのでしょうか?
そこで提唱されたのが、「種族Ⅱよりも前に種族Ⅲとして、第一世代の恒星が存在していたのではないか?」という仮説です。
種族Ⅲ、すなわちファーストスターが、重い元素をまき散らしてそれが最初の銀河を構成する材料となったと考えれば謎が解けます。
ファーストスターは非常に高温のため紫外線を放出しますが、宇宙の膨張によって遠方の天体から放たれた光の波長が伸びる「赤方偏移」の効果のため、地球に届く頃には赤外線になっていると考えられています。
JWSTの主な観測波長は赤外線領域であり、ファーストスターのような超遠方にある天体の観測に最適化されています。
つまり超遠方の宇宙の観測がJWSTの主な任務であると言えるでしょう。
ハップル宇宙望遠鏡でもファーストスターは発見できませんでした。
後継機のJWSTに期待が持たれるところです。
●プラネットナインの発見
現在太陽系には水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星の8つの惑星が発見されています。
冥王星が惑星から外れてから現在まで、太陽系に第9惑星は存在していません。
ですがもしも発見されれば新たに惑星に分類されそうな巨大天体が太陽系外縁部に存在する可能性が何十年も前から囁かれてきました。
そんな中、5年前の2016年には、プラネットナインが存在する観測的な根拠が新たに提案されました。
その根拠は既知の太陽系外縁天体の公転軌道にあります。
内部の惑星たちはほぼ同じ面を公転しているのに対し、外縁天体はまた違った角度の平面で公転していたり、軌道が一方向に集中していたりしています。
これらの特異な公転軌道を持つ天体たちが単なる偶然で似たような公転軌道になったとは考えにくく、偶然でそうなる確率は15000分の1程度なのだそうです。
こうなった原因を、質量が地球の5-10倍程度ある巨大な惑星サイズの天体の重力的な作用によるものだと考えると、非常につじつまが合うので、これがプラネットナインの根拠とされました。
しかしプラネットナインは地球から400-800au(1au=地球と太陽の平均距離≒1.5億)という超遠方を公転している可能性が高いと考えられ、その場合非常に暗く、さらに存在位置も不確定なので、観測が極めて難しく、発見には至っていません。
それ以来、プラネットナインの存在を支持する研究や、逆にそれを否定する研究成果も発表されるなどして、プラネットナインが実在するかどうかの議論が非常に盛り上がっています。
仮にプラネットナインが実在した場合、非常に微弱な赤外線を放っていると考えられています。
JWSTによる赤外線波長の観測が行われれば、プラネットナインの直接の発見に大きく前進するかもしれません!
●惑星系形成過程の解明
天文学者がJWSTの観測によって解き明かそうとしている宇宙の謎の一つに、惑星の形成過程があります。
太陽とそのまわりを公転する惑星は「原始太陽系星雲」から誕生したと言われています。
しかし、原始太陽系星雲からそれぞれの惑星ができるまでのプロセスは完全には分かっていません。
例えば、地球は「水の惑星」と言われていますが、現在の惑星科学では地球に水が豊富に存在する理由を明確に説明できません。
また、最近の観測技術の発展により、太陽系以外にも恒星のまわりを惑星が公転する惑星系が数多く存在することが分かってきました。
ところが、発見された系外惑星の軌道は太陽系惑星の軌道とまったく違っていました。
そのため、それまで太陽系を標準モデルとしていた惑星形成論は大きく見直しを迫られることになりました。
JWSTは、17個の若い生まれたての恒星(原始星)を赤外線で観測します。
これらの若い星の周囲には惑星の元となる原始惑星系円盤が存在します。
目標とされる17の原始惑星系円盤の外側の領域については、世界最大の電波望遠鏡であるアルマ望遠鏡によって下調べが済んでいます。
JWSTの役割は、原始惑星系円盤の内側からやってくる赤外線を詳細に観測し、例えば水、一酸化炭素、二酸化炭素、メタン、およびアンモニアなどの物質がどのような割合で存在しているのかを調べることです。
JWSTの観測によって、地球のような岩石惑星がどのようにして形成されたかの手掛かりが得られるかもしれません。
最初の観測は2022年6月を見込んでいるとのことです。初観測の報告が待ち遠しいですね。