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天の川銀河の150倍以上!?「宇宙最大の銀河」を新発見

今回は「宇宙最大の銀河を新発見」というテーマで動画をお送りしていきます。

●宇宙最大の銀河を新発見

Credit:Martijn Oei et al. (2022)
Credit:Martijn Oei et al. (2022)

2022年2月11日とつい先日、オランダのライデン大学などの研究チームは、地球から実に30億光年も彼方で、直径が最低でも1600万光年ある、観測史上最大の構造を持つ銀河を発見したと発表しました。

こちらの画像は新発見の銀河が放つ電波を、LOFARと呼ばれる電波望遠鏡で撮影した実写画像ですが、中心にある銀河本体の両端に、とてつもなく巨大な何かが写りこんでいます。

これは銀河中心にあるブラックホールが放出した、ジェットの残骸です。

ブラックホールは周囲にある大量の物質を重力で捕らえ、自身の周囲を公転させて降着円盤を形成したのち飲み込んでしまいますが、その一部はブラックホールに飲まれず、

亜光速のジェットとして宇宙空間へと放たれています。

そんなジェットとして吹き飛ばされた物質が電波を放ち、その電波を地球から観測できている、というわけです。

Credit:Martijn Oei et al. (2022)
Credit:Martijn Oei et al. (2022)

この天体は30億光年も彼方にあるにもかかわらず、地球からの見た目の大きさは、なんと満月にも匹敵します!

あまりに巨大であるため、研究者たちはこの巨大構造を、ギリシャ神話に登場する巨人の名から「アルキオネウス」と命名しています。

遠くの天体を観測するとき、地球からだと一つの視点からしか観測できないため、その天体の奥行きを知ることは困難です。

アルキオネウスも地球からの見た目の大きさが1600万光年というだけで、正確な大きさについてはわかっていません。

つまりアルキオネウスは最低でも1600万光年、直径約10万光年の天の川銀河が150個ほど並んだような巨大さを誇っています。まさに異次元の巨大構造です。

なお、アルキオネウスの中心にあるブラックホールの質量は、太陽の4億倍あると考えられています。

天の川銀河中心部にある、太陽の430万倍の質量を持った超大質量ブラックホールいて座A*と比べると100倍ほど大きいです

アルキオネウスがここまで巨大になった要因として、このような超巨大なブラックホールや、中心の銀河の星の密度が非常に高いことなどが考えられましたが、実はどれも同規模の電波銀河と比較すると、アルキオネウスは決して優れていないどころか、むしろ平均以下の要素が多いそうです。

現在でもアルキオネウスがここまで巨大な構造を持つに至った理由については解明されていません。

研究チームは電波銀河の成長にどのような要因が影響しているのかを調べていく予定です。

●コズミックウェブの理解に繋がるかも

Credit:Springel et al. (2005)
Credit:Springel et al. (2005)

宇宙を非常にマクロなスケールで見ると、銀河が密集している場所と、何もない空洞が網目構造のように連なっています。

銀河が密集した網の部分は銀河フィラメント、空洞部分はボイドと呼ばれています。

銀河フィラメント部分には明るい銀河だけでなく、コズミックウェブと呼ばれる非常に暗い水素のガスが、銀河間を結ぶように存在していると考えられています。

ですがコズミックウェブはあまりに地球から遠く、暗いため、その性質については未だ多くの謎が残っています。

そんな中、アルキオネウスのような巨大な電波ジェットは、それが宇宙空間を突き進む際、コズミックウェブの影響を受け、進行方向や形などが変化するはずです。

そのため、アルキオネウスのような巨大電波ジェットをより深く理解することは、地球から見えない謎多き存在であるコズミックウェブの解明にも繋がるかもしれないんですね!

このように銀河中心にある巨大ブラックホールの活動によって、宇宙の大規模構造にまで影響を及ぼすことが確かめられたのも、今回の研究の大きな成果と言えそうです。

●IC 1101超え!?

Credit:NASA/ESA/Hubble/Sloan Digital Sky Survey
Credit:NASA/ESA/Hubble/Sloan Digital Sky Survey

これまでの観測史上最大の銀河は、「IC 1101」という銀河です。

IC1101は地球から10億光年ほど離れた場所にあります。

この銀河の直径は、実に400万光年以上にもなり、100兆個もの恒星が所属しているそうです。

これは天の川銀河の300倍以上の数であり、質量も天の川銀河の約100倍もあると考えられています。

IC 1101の中心にも超巨大なブラックホールがあると考えられています。

ブラックホールの具体的な質量までは明らかになっていませんが、銀河中心部に明るい電波源が発見されていて、その明るさから中心ブラックホールの質量は太陽の400億~1000億倍に相当すると考えられています。

観測史上最大のブラックホールは、TON 618と呼ばれるブラックホールで、その質量は太陽の660億倍です。

なのでIC 1101の中心にあるブラックホールの質量が判明すれば、観測史上最大記録を大幅に更新する可能性があります。

そんなIC 1101ですが、直径が400万光年とのことなので、最低でも1600万光年の直径を持つアルキオネウスよりも遥かに小さいことが分かります。

とはいえアルキオネウスの大きさの大部分は電波ジェットであり、IC 1101のように、星が十分に密集した領域だけで400万光年にも及ぶ銀河は未だ発見されていません。

今後これらの銀河を超える大きさを持つ超巨大銀河が宇宙のどこかで発見される可能性もあるはずです。

それが今から楽しみですね!

https://arxiv.org/abs/2202.05427
https://phys.org/news/2022-02-astronomers-largest-radio-galaxy.html
https://ecokhaan.com/universes-largest-known-galaxy-is-discovered-measuring-around-16-3-million-light-years-long/
https://www.eurekalert.org/news-releases/879078?language=japanese

「宇宙ヤバイch」というYouTubeチャンネルで、宇宙分野の最新ニュースや雑学などを発信しているYouTuberです。好きな天体は海王星です。

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