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天の川銀河の「最新最高精度の地図」が公開される!

どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。

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今回はこのような「最新の観測で得られた天の川銀河の詳細な地図」というテーマについて詳細に解説していきます。

YouTubeでも動画で同様の解説をしているので、以下の再生フォームも併せてご参照ください。

●ガイア計画について

Credit: ESA
Credit: ESA

ガイア計画では、私たちの住んでいる地球がある天の川銀河の、非常に高精度な3次元地図を作成することを目標にしています。

これまでにガイアによって、天の川銀河の地図が公開されていましたが、それ以降にさまざまな発見があったため、最近新しいバージョンが発表されました。

Credit: ESA–D. Ducros
Credit: ESA–D. Ducros

そもそもガイア計画とは、欧州宇宙機関(ESA)による宇宙望遠鏡ミッションのことです。

ガイア計画は科学的に非常に重要なミッションとして採択され、位置天文学を大きく変えると言われています。

位置天文学は天文学の一分野であり、恒星やさまざまな天体の位置、距離、運動などを扱っている分野です。

そして、ガイアは位置天文学用の宇宙望遠鏡を使用することで、およそ10億個もの恒星の正確な位置を測定したり、恒星までの距離や固有運動などを調べています。

ガイア計画の目標は、天の川銀河全体をマッピングして、非常に高精度な3次元地図を作成することです。

そのためガイアの3次元地図には、恒星の固有運動といった詳細な情報も加えられています。

このように、天体の位置や運動を詳しく調べることで、銀河系の起源や今後の進化も推測可能です。

ただ、天の川銀河全体の地図の作成と一言で言われても、あまりその大変さや重要さがイメージしにくいかもしれません。

新しい地図の作成に関して、私たちがより具体的にイメージするためには、15世紀ごろの大航海時代を想像するのが良いでしょう。

その時代には、新大陸を発見しながら、初期の地球の地図を作っていました。

つまり、誰も行ったことのない場所を探索して、地図を埋めていき、すべての大陸や島を発見した際には、世界地図が完成したと実感できたのだと思います。

しかし、15世紀における大陸や島の位置や形を示した世界地図の作成と大きく違うのは、地球や太陽の周りに存在するあらゆる星の位置だけでなく、星の運動まで示すための銀河の地図だという点です。

●最新のリリースで明らかになったこと

これまでにガイアによって、太陽系の周辺にある、およそ32光年以内のすべての重要な物体を示した地図が公開されていました。

例えばその地図には、太陽や太陽系だけでなく、近くに位置するあらゆる星や、超新星の残骸に覆われたさまざまな構造体などが示されています。

Credit: ESA/Gaia/DPAC
Credit: ESA/Gaia/DPAC

それから数年間、ガイアでは宇宙を極めて詳細にマッピングしていたそうです。

具体的には、銀河系の円盤を構成している多彩な種類の星団をマッピングし、天の川銀河にあるそれぞれの天体の視線速度や固有運動を調べていました。

視線速度とは、空間を運動している天体の速度のうち、観測者から遠ざかる、もしくは観測者へ近づくときの速度成分のことを指します。

また固有運動とは、恒星のような天体における、天球上の位置の移動のことです。

結果としてガイアにより、天の川銀河内に存在する約3000万個の天体の視線速度や固有運動を含めた、とても高精度な3次元地図が作成されました。

今回リリースされたものは、これまでで最も正確で完全な多次元地図だと述べられています。

天の川銀河の地図が正確に作成できたのは、ガイア望遠鏡による功績であり、スケールがさらに壮大になったためです。

公開された地図には、天の川銀河にあるさまざまな天体が記載されているだけでなく、それぞれの星の金属量や化学組成といった、化学的な情報も含まれています。

さらにガイアは星の表面で、新たにスタークエイクといった現象を発見しました。

これは星全体の形を綺麗な球形から変形させる微弱な振動です。

ガイアは現在の理論ではスタークエイクが起こらないと考えられていた星でもその現象を観測したそうです。

この現象から星の内部構造など、その星のより詳細な情報が得られるため、この発見が天文学を前進させる可能性もあります。

●天の川銀河の詳細な地図

ガイアは太陽系近傍の地図と、それよりも広い範囲の銀河系スケールの地図を公開しました。

太陽系近傍の地図:http://gruze.org/galaxymap/map_800pc/

より広範囲の地図:http://gruze.org/galaxymap/map_2020/

それではまず、2種類の地図のうち、範囲の小さい太陽系近傍の地図を確認してみましょう。

Credit:ESA
Credit:ESA

こちらの1つ目の地図は、太陽系から約2600光年までのエリアに存在する、あらゆる物体を詳細に記載したマップです。

地図の中央を拡大すると太陽があり、その周辺には局所泡(ローカル・バブル)と呼ばれる星間物質の空洞が見られます。

局所泡からオリオン座の方向に離れると、ベテルギウスやリゲルなどといったオリオン座の有名な星々の近くに、オリオン座分子雲と呼ばれる巨大な分子雲があります。

地図で見ても大規模なので非常に特徴的です。

それ以外には、星間物質の一種で、宇宙空間に分布している1ミリ以下の粒子である宇宙塵(黄土色で着色)も、至る所で見られます。

またこのマップは、一見2次元のように思えますが、実際には3次元環境を表現しています。

実は物体に書かれた括弧内の数字が、銀河面の上または下に、どれだけ離れているかを示しているからです。

銀河は比較的平坦だと言われているため、2次元マップは見て理解しやすい上、機能的だと言えるかもしれません。

さらに、だいたいの年代も調べられているため、この地図では年代によって色分けされた丸で表現されています。

具体的には、水色の丸はわずか約1億年前のものであり、それに対してオレンジや黄色の丸なら数十億年前です。

Credit:ESA
Credit:ESA

それではもう一方の、より広範囲を描いた銀河系スケールの地図を確認してみましょう。

こちらの銀河系スケールの地図では、中央から端までで、約2万光年離れています。

中央の一番小さい円は、太陽系から約2600光年までなので、一つ前の地図のサイズと同じです。

地図を拡大すると、中央には先ほどの局所泡が見られます。

太陽系から数千光年離れた右側のエリアには、たくさんの宇宙塵が存在しているので、地図の右の縁は太陽系から見て宇宙塵によって隠されたエリアです。

それに対して、密度が周りよりもはるかに低い部分などもあり、まるで入り江か湾のようにも見えます。

以上のように、ガイアが作成した2種類の地図を紹介してきましたが、今回公開されたこれらのマップは、天の川銀河における非常に初期のバージョンです。

そのため、今後何か間違いが見つかる可能性がないとは言い切れません。

今後数年のうちに、今以上に正確で完全な天の川銀河の地図が、ガイアによって再びリリースされるかもしれませんね。

https://www.esa.int/Science_Exploration/Space_Science/Gaia/Gaia_sees_strange_stars_in_most_detailed_Milky_Way_survey_to_date
http://gruze.org/galaxymap/map_800pc/
http://gruze.org/galaxymap/map_2020/

「宇宙ヤバイch」というYouTubeチャンネルで、宇宙分野の最新ニュースや雑学などを発信しているYouTuberです。好きな天体は海王星です。

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