ダークマターの正体も解明!?未知の素粒子「ステライルニュートリノ」を新発見か
どうも!科学ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「ダークマターの有力候補 ステライルニュートリノ発見か? 」というテーマで動画をお送りしていきます。
●「ステライルニュートリノ」とは
2022年6月、ロスアラモス国立研究所は、未確認の素粒子である「ステライルニュートリノ」の証拠かもしれないという実験結果を発表しました。
ただし、この結果はステライルニュートリノの存在を示唆していますが、その確証には至りませんでした。
新しい粒子の発見とするには、まだ精度が足りないと判断されたのです。
ニュートリノは素粒子のひとつで、イタリア語で「中性の」+「小さい」という意味をもっています。
そもそも、素粒子とは何でしょうか?
素粒子は物質を細かく砕いていくと最終的に現れる物質の最小の要素です。
私たちの身体も、着ているものも身の回りのものすべて素粒子からできています。
素粒子は「物質を作る物質粒子」、「力を伝えるゲージ粒子」、「質量を与えるヒッグス粒子」に大きく分けることができます。
ニュートリノは物質粒子のレプトンと呼ばれる素粒子のグループに属します。
ニュートリノは電荷を帯びていないので他の素粒子と相互作用しません。
また、非常に小さくて原子の中も通過することができるまるで幽霊のような粒子です。
私たちの周りにもたくさんのニュートリノが飛んでいます。
この瞬間も1秒間に約100兆個という大量のニュートリノが私たちの身体を通過しているのです。
現在、ニュートリノには3つの種類があることが確認されています。
電子ニュートリノ、ミューニュートリノ、そして、タウニュートリノの3種類です。
ニュートリノは幽霊のように、かすかな存在ですが、わずかに質量を持っています。
ニュートリノに質量があることは「ニュートリノ振動」によって発見されました。
ニュートリノ振動とは、ニュートリノが飛行中に別の種類のニュートリノに変わる現象のことです。
例えば、電子型→ミュー型→タウ型→電子型というように変化します。
ニュートリノには3種類あると説明しましたが、4つめの種類がある可能性が指摘されています。
それが「ステライルニュートリノ」です。
「ステライル」とは「不毛な」という意味です。
重力以外の力では他の素粒子と相互作用しないためこう呼ばれています。
既知の3つのニュートリノには重力の他に「弱い力」が作用します。
「弱い力」は原子核の崩壊を引き起こす力です。
ステライルニュートリノには「弱い力」も作用しません。
また、ニュートリノの質量は小さいので重力の作用は事実上ゼロです。
他の粒子と相互作用しない幽霊のような粒子をどのように見つけるのでしょうか?
ステライルニュートリノの存在はニュートリノ振動によって間接的に証明するしか方法がありません。
●ステライルニュートリノの検索実験
現在、多くの科学者・研究機関が実験によるステライルニュートリノの検出に取り組んでいます。
最初にステライルニュートリノが存在する可能性を示した実験が、1990年代に米国立ロスアラモス研究所で行われたLSND(Liquid Scintillator Neutrino Detector)実験です。
LSND実験の結果は、既知の3つのニュートリノによるモデルの予測と食い違っていました。
この矛盾を解決するために、ステライルニュートリノの仮説が提唱されたのです。
その後、ロスアラモス研究所ではステライルニュートリノの検出実験が精力的に行われています。
しかし、冒頭で説明したように、ステライルニュートリノが存在するという確証にはまだ至っていません。
ロスアラモス研究所以外の研究機関でも、ステライルニュートリノの検出実験が行われています。
フェルミ国立加速器研究所では、LSND実験とは異なる方式のニュートリノ振動実験を現在進めています。
この実験(MiniBooNE実験)は、2002年から開始され、2018年にはステライルニュートリノの存在強く裏付けるデータが得られています。
この実験の追試も計画されており、ニュートリノ源から110m、470m、600mの3地点に検出器を設置し、距離の違いによるニュートリノの変化を調べます。
ステライルニュートリノ検出実験は、日本でも実施が予定されています。
茨城県東海村にある大強度陽子加速装置「J-PARC」で行われるステライルニュートリノ探索実験は、JSNS2実験と呼ばれています。
JSNS2実験では、ほぼ光速まで加速した陽子ビームを水銀に照射して中性子、ミューオン、ニュートリノなどの2次粒子を生み出します。
標的から検出器に至るまでの間に反ミューニュートリノが、反電子ニュートリノに変化するかどうかつまり、「ニュートリノ振動」が起きるかを探ります。
通常、ニュートリノ振動が起きるには長い飛行距離が必要です。
例えば太陽からのニュートリノの場合、その飛行距離は1億4960万キロメートルです。
また、日本の長距離ニュートリノ振動実験では、J-PARCのある茨城県東海村から295キロメートル離れた岐阜県神岡までニュートリノビームを飛ばしていました。
しかし、反ミュー型→ステライルニュートリノ→反電子型とステライルニュートリノを経由すれば短い距離で済みます。
JSNS2実験では24メートルという非常に短い距離で反ミュー型から反電子型へのニュートリノ振動が発生するか調べます。
ステライルニュートリノは重力以外では相互作用しないので直接検出することは困難です。
そのために、「ニュートリノ振動」を利用して間接的にその存在を確認します。
実際には振動後にできる反電子型ニュートリノをニュートリノ検出器で検出するのです。
●ダークマターの有力候補
もし、ステライルニュートリノが発見されたなら、素粒子の標準モデルは大きく書き換えられることになります。
また、ステライルニュートリノはダークマターの有力候補と考えられています。
ダークマターは宇宙全体の23%を占めています。
また、ダークマターは宇宙の初期に出来たと考えられています。
宇宙誕生から38万年後の宇宙背景放射にダークマターの痕跡が残っています。
もし、ダークマターがなかったら銀河系や太陽系も存在できなかったでしょう。
そうすると、私たち人間も生まれなかったはずです。
ステライルニュートリノは物質の起源だけでなく、宇宙の起源についての重要な手がかりとなるかもしれません。
これからの研究の動向に目が離せないですね。