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理論的に説明不能な場所で「超巨大ブラックホール」を発見!?

どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。

今回は「天の川銀河のすぐ隣の矮小銀河で超大質量ブラックホールを新発見」というテーマで動画をお送りします。

●矮小銀河「しし座I」

しし座Iは、地球から見てしし座の方向に約80万光年彼方にある矮小銀河です。

天の川銀河を公転する伴銀河の一つで、伴銀河の中では現時点で天の川銀河から最も遠く離れた場所に位置しています。

しし座Iは星が低密度で分布しており、しかも約10億年前に新たな星が作られなくなったせいで、低質量で長寿の暗い星しか現存していないため、銀河自体が非常に暗いです。

さらにそのすぐ隣にしし座の一等星「レグルス」があるため、その強い光がより一層この銀河の観測を困難にしています。

ただしその中でも研究が進み、現在では、この銀河の質量は太陽の約7億倍という測定結果が得られています。

これは銀河としては極めて低い値です。ちなみに天の川銀河の質量は太陽の1.5兆倍と言われています。

●予想外の場所で新発見の巨大BH

2021年には、しし座Iの中心部付近にある恒星が、銀河中心に近づくにつれて加速していることが判明しました。

そのことから、この銀河の中心部には太陽の実に300万倍もの質量を持つ「超大質量ブラックホール」が存在することがほぼ確実視されるようになったそうです。

ブラックホールは質量ごとに大きく3つに分類されます。

太陽の100万倍以上の質量を持つブラックホールが最も大きな「超大質量ブラックホール」に分類されますが、これは通常巨大な銀河の中心部のような環境でしか発見されません。

例えばしし座Iより遥かに巨大な銀河である天の川銀河の中心には、太陽の約430万倍の質量を持つ超大質量ブラックホール「いて座A*」が存在しています。

一般に銀河中心に存在するブラックホールは、その周囲の星やガスなどの物質を飲み込むことで、成長していきます。

そのため銀河全体の質量が大きく物質が豊富に存在するほど、その中心のブラックホールの質量も大きい傾向があります。

ですがしし座Iで発見された超大質量ブラックホールは、一般的な銀河とブラックホールの質量関係から大きく逸脱しています。

現に矮小銀河で超大質量ブラックホールが発見されたのはこれが史上初の例とのことです。

このブラックホールがどのようにしてこれだけの質量を獲得できたのか、現時点では多くの謎が残っています。

ちなみにしし座I中心のブラックホールは、地球から見ていて座A*に次いで2番目に近い位置にある超大質量ブラックホールとなっています。

●しし座IのBHの検出可能性

しし座Iの中心には、その周囲に存在する星の運動によって、太陽の約300万倍もの質量を持つ超大質量ブラックホールが存在していることがほぼ確実視されているのでした。

ですがこれは間接的な証拠に過ぎず、このブラックホールに物質が落ち込むことで降着円盤などの構造が形成され、そこから放たれた光を観測することが次に期待されています。

ですが先述の通り、しし座Iは非常に物質が希薄な銀河で、ブラックホールに落ち込む物質が少ないため、その周囲に形成された明るい構造から放たれた光を直接捉えるのは非常に困難であると考えられていました。

そんな中、2022年11月末とつい先月発表された論文によると、しし座Iの中心のブラックホールの周囲にある約100個の赤色巨星から放たれる恒星風により、地球からでも観測できる規模の降着円盤が存在する可能性があるそうです。

今表示されているのは、しし座Iのブラックホールから放たれていると予想されている電磁波のスペクトル分布です。

特にマイクロ波の波長で強度が高く、ALMAなどいくつかの望遠鏡で検出が可能であることが示されています。

これらは10パターンの降着円盤規模の予想値をもとに計算され、色ごとに結果が分けられています。

電波に分類される波長帯では、降着円盤の規模に寄らず、アメリカのVLA(超大型電波干渉計群)で観測ができそうです。

このことから、今後ブラックホール周囲の構造からの電磁波を検出できる可能性が高いこと、さらに今年5月にいて座A*を直接検出したEHTプロジェクトなら、長期的にはしし座IのBHも直接検出できる可能性も示されています。

今回の関連で、2022年の2月、太陽が放つ光の実に1000兆倍を超えるという、異次元な明るさの突発現象由来の光である「AT 2022cmc」が地球に届き、その現象の研究成果が11月30日に公表されています。

この現象についての詳細は以下の動画で解説しているので、併せてご覧ください。

https://iopscience.iop.org/article/10.3847/2041-8213/ac9b21
https://pweb.cfa.harvard.edu/news/astrophysicists-hunt-second-closest-supermassive-black-hole
https://arxiv.org/pdf/2111.04770.pdf
https://en.wikipedia.org/wiki/Leo_I_(dwarf_galaxy)
サムネイルCredit:http://www.wikisky.org/

「宇宙ヤバイch」というYouTubeチャンネルで、宇宙分野の最新ニュースや雑学などを発信しているYouTuberです。好きな天体は海王星です。

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