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ベテルギウスの超新星が迫っていると再び話題に?急増光中の星で何が起きているのか

どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。

今回は「現在のベテルギウスで起きている異変」というテーマで動画をお送りしていきます。

オリオン座のα星ベテルギウスは赤く輝く一等星で、地球から見て非常に明るく見えるだけでなく、一生の末期段階に入っており、いずれ超新星爆発を起こすと期待されている点でも有名な恒星です。

そんな何かと話題豊富なベテルギウスで最近また異変が見られているということで、話題になっています。

●最近のベテルギウスの異変

ベテルギウスは2019年末から2020年2月下旬あたりまで急激な減光を続け、一時は二等星に相当する明るさになるなど過去に類を見ないほどにまで暗くなり、大きな話題を呼んでいました。

その後この大減光は直接超新星爆発に関係するものではないことが明らかになり、ベテルギウスの状態も元に戻ると考えられていたものの、実は現在でも平常とは言えない状態が続いています。

まずベテルギウスは変光星であり、200年も前から約400日という周期で比較的規則的な増光と減光を繰り返す性質が知られていました。

ですが大減光イベントの後、上の画像に表記されている赤の実線で示された実際のベテルギウスの光度変化は、青い点線で示された約400日周期の従来の変化に基づく推定と比べて明確に異なり、その周期は約130日と明確に短くなっています。

さらに2023年に入ってからのより直近のベテルギウスは、従来と比べて非常に短い周期変化を維持しているだけでなく、非常に明るくなっている点でも異常です。

このように大減光イベント後に周期が短くなったり、さらには短期間で増光を見せたりと、不規則な変化を見せているメカニズムについては詳細なことがわかっていません。

こういった背景から、一部界隈では「ベテルギウスの超新星爆発がやはり迫っているのではないか」と再び話題になっているようです。

●超新星爆発はまだまだ遠い

ではベテルギウスの超新星爆発は迫っているのでしょうか?

結論から述べると、これまで言われていた通り私たちが生きている間にベテルギウスの爆発を見れる可能性は極めて低いと考えられています。

○理由①:ヘリウムの燃焼段階にある

オーストラリア国立大学や東京大学などの研究チームは、ベテルギウスは現在進化のどの段階にあるのかを調べていました。

ベテルギウスの内部構造は、その脈動の様子を詳しく分析することで知ることができるそうです。

その結果、ベテルギウスの核ではヘリウムの核融合が起こっている可能性が高いと判明しました。

ベテルギウスのような大質量星の核では、最も軽い水素から始まり、ヘリウム、炭素、酸素…と徐々に重い元素が核融合で生成されていき、最終的に鉄ができると星の核が重力崩壊を起こし、超新星爆発に至ります。

そのためヘリウムの反応が起こっているベテルギウスは、まだまだ核融合の段階を残しているため、今すぐに爆発することはなさそうです。

具体的には今から10万年間は爆発しない可能性が高いのだとか…

宇宙スケールではあっという間かもしれませんが、人間スケールではまだまだ先ですね。

○理由②:現在の異変が回復過程に過ぎない

現在見られている異常についても確定的なことはわかっていないものの、「大減光後の異常状態からゆっくりと回復している過程に過ぎない可能性が高い」と考えられています。

ではそもそもベテルギウスの大減光はどのように発生し、星全体にどのような影響を与えたのでしょうか?

ベテルギウスが大減光していた原因は、「ベテルギウス表面から大量のプラズマが放出され、それが凝固して巨大な塵の雲となり、ベテルギウスを覆ったこと」であると発表されています。

減光の原因となった最初の巨大な質量放出は、「表面質量放出(SME)」と呼んでいます。

SMEによって、月の質量数個分に相当する膨大な質量のプラズマガスが表面から一気に放出されたと考えられています。

太陽でも同様に、太陽コロナからプラズマガスが大量に放出される「コロナ質量放出(CME)」という現象が知られています。

ですがベテルギウスのSMEは、太陽のCMEと比べて実に4000億倍に相当する、まさに桁違いの質量を放出していたことが判明しました!

あまりに桁違いすぎるため、SMEがCMEと根本的に異なる現象である可能性もあるそうです。

研究者がこれまで他の星を含めても見たことがないような巨大すぎる質量放出により、ベテルギウスには現在でも後遺症が残っていると考えられています。

現在見られているベテルギウスの異常は、超新星爆発が起こる推定時期が早まるような未知の異常ではなく、単に大減光を起こした既知の質量放出現象の名残であり、一時的な回復過程に過ぎない可能性が高いのです。

一時的な異常に一喜一憂せず、詳細な観測と分析が継続されることが求められています。

また今回の関連で、ベテルギウスが実際に超新星を起こした場合に地球にどのように見え、どのような影響が及ぶのかを以下の動画で詳しく解説しているので、併せてご覧ください。

https://www.scientificamerican.com/article/betelgueses-brightening-raises-hopes-for-a-supernova-spectacle/
https://www.inverse.com/science/betelgeuse-is-taunting-us-again-but-still-not-exploding
https://www.astronomerstelegram.org/?read=16001
https://www.extremetech.com/science/betelgeuse-is-getting-brighter-renewing-hopes-for-supernova
https://pweb.cfa.harvard.edu/news/hubble-sees-red-supergiant-star-betelgeuse-slowly-recovering-after-blowing-its-top
https://esahubble.org/images/opo22037a/
https://iopscience.iop.org/article/10.3847/1538-4357/ac7853
サムネイルCredit:ESO/L. Calçada

「宇宙ヤバイch」というYouTubeチャンネルで、宇宙分野の最新ニュースや雑学などを発信しているYouTuberです。好きな天体は海王星です。

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