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怖いくらい?当たりすぎる最近の南岸低気圧予報…はずれたような気がするのはナゼ??気象予報士解説

植松愛実気象予報士・防災士・野菜ソムリエ
3月8日6時の実況天気図(気象庁HPより)。関東の南東の沖を南岸低気圧が進んだ。

今日8日は未明から都内を含む関東の広い範囲で雪が降り、積もったところもありました。

皆さんは朝起きて外を見て、あるいは実際に通勤や通学をして、どう感じたでしょうか。

実は天気予報としてはこれ以上ないくらいドンピシャで当たっていたわけなのですが、そうは感じていない方が大多数だと思います。

なぜここまで予報は当たったのか、そして、なぜはずれたように感じるのでしょうか。

予想のど真ん中

東京23区内の3月8日朝の様子。建物の屋根や植え込みにはうっすら雪が積もった。
東京23区内の3月8日朝の様子。建物の屋根や植え込みにはうっすら雪が積もった。

多くの人がご存じの通り、現在では天気予報はコンピュータが計算します。

気象予報士はコンピュータの計算結果を人間にとってわかりやすい言葉に翻訳するわけですが、今回、前日7日のうちにコンピュータが出していた計算結果をそのまま鵜呑みにすると、「都心は8日未明から水分の多い湿った雪が降り、道路には積もらないけど屋根や生け垣や芝生など積りやすい場所にはうっすら積もるだろう」という見通しだったのです。

そして実際、今朝起きて筆者が目にした都心の光景は、まさにその通りでした。

当たりすぎてちょっと怖いくらいです。

予報はなぜ当たったのか

今回の予報が当たった原因はもちろん複数ありますが、その中でも大きいのは予想気温の計算精度が年々上がっていることです。

今の時期、雲から落ちてくるものは、空の高いところの段階ではほぼすべて氷(雪)で、それが地上付近まで落ちてきた時に雪のままなのか解けて雨になるのかが重要なので、地上付近の温度をどのくらい正確に計算できるかが南岸低気圧予報の鍵を握ります。

数年前まで、特に冬の朝の気温はなかなかぴったり当たらず、気象予報士もそれを折り込んで解説する必要がありました。

しかし今では、かつての苦労が嘘のように気温の予想が当たりやすくなっていて、結果的に南岸低気圧による雨・雪の予報精度も上がっているのです。

なぜはずれたように感じる?

今回、NHKでも民放でも、前日7日のうちに放送されたほとんどの番組では、「都心でも雪は降るけど、たとえ積もったとしても都心はうっすら積もる程度で、大規模な交通規制などの影響はなさそう」という見立てが解説されていました。

ただ、いくら最近のコンピュータの計算が当たりやすくなったとはいえ、予報は予報であり、確定的な未来などあり得ません。

そのためどの気象予報士も、万が一、予報より気温が下がった場合は大雪に気をつけて、とコメントする必要があります。

なぜなら気象現象は、少しでも予報がズレた場合に人の命を奪うおそれがあるからです。

ところが、そのような幅を持った解説をすると、聞く人はだいたい自分に都合のよい解釈をしてしまいます。

そのため、結果として実況を目にした時になんだか予報がはずれたような気がしてしまうのです。

このあとの天気は

3月8日21時の予想天気図(気象庁HPより)。日本海の低気圧は上空に強い寒気を伴う。
3月8日21時の予想天気図(気象庁HPより)。日本海の低気圧は上空に強い寒気を伴う。

8日は一旦天気が回復しても、日本海の低気圧上空の寒気の影響で大気の状態が不安定になり、再び天気が崩れるところがあります。

午後は近畿や東海、夜は関東でも、一時的な雨や雷雨、場合によってはあられが降るおそれがあるため天気の急変に注意が必要です。

気象予報士・防災士・野菜ソムリエ

気象予報士・防災士として講演・執筆を行う傍ら、野菜ソムリエ・食育インストラクター・薬膳マイスターとして出張料理人(一般家庭での作り置き代行)としても活動。NHK・民放各局で気象キャスターを歴任し、報道の現場や防災、気候変動・地球温暖化に関する最新情報にも詳しい。著書に『天気予報活用ハンドブック~四季から読み解く気象災害』(竹下愛実名義・共著)がある。

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