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『リカルド・ロドリゲス監督のチームマネジメントが凄い』浦和レッズが3連戦で見せた大胆な戦略とは?

浦議

浦和レッズサポーター(さいたま市)

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■リベンジにした成功した数々の要因

J1第20節、リカルド・ロドリゲス率いる浦和は福岡を2-0で下し、リーグ2連勝を飾った。暫定ながら順位は5位に上昇。ついに、ACL出場圏内が見えてきた。

ほんの2カ月前にアウェーで対戦したときは、4-4-2の堅いブロックを敷く福岡を攻めあぐね、外側で「逃げのボール回し」を行うばかり。チャンスは乏しく、0-2で完敗を喫した。

しかし、今回は違う。浦和は守備ブロックの中へ果敢にボールを運び、相手を引き寄せてサイドへ展開するなど、「攻めのボール回し」で、福岡の守備を翻弄し続けた。2カ月前とは質が違う。FWキャスパー・ユンカーが加入し、チームの軸が定まったことは大きいが、それ以上に、選手個々が自信に満ちてプレーしていることが印象的だ。

槙野智章は相手2トップの脇から、アグレッシブにボールを運び、福岡のブロックを崩すための起点を作った。この槙野の運びに合わせ、ダブルボランチも背後をしっかりカバーする。特に最近は大卒新人のボランチ、伊藤敦樹のパフォーマンスが素晴らしい。中盤でボールを刈り取る守備はより機敏になり、ボールを運ぶ役割も、長短のパスを織り交ぜて展開していく。柴戸海とのダブルボランチは、浦和のファーストチョイスになってきた。

前半11分の小泉佳穂の先制ゴールは、右SB西大伍の酔拳のような一人時間差パスによってアシストされたが、その西に時間とスペースを与えたのが、伊藤と柴戸だった。彼らが中央からボールを運び、注意を引きつけたことで、福岡は西に対するプレッシャーが遅れ、その異端のクオリティーが発揮されることになった。

この点、福岡側にも原因はある。2トップにブルーノ・メンデスではなく、ジョン・マリを起用したため、中盤へのプレスバックが弱く、伊藤や柴戸にライン間でスペースを与えてしまった。もちろん、そのデメリットを飲み込んだとしても、屈強なフィジカルを誇るFWジョン・マリを生かし、攻めるイメージが福岡にはあったはずだが、浦和は岩波拓也が深い位置でカバーリングに目を光らせ、後半に槙野が入れ替わられてピンチを招きかけた場面でも、見事なスライディングカバーを見せた。

福岡が得意とするCKでも、相手の狙うニアサイドを徹底して防いで完封。相手の弱みを突き、相手の強みを防ぎ、浦和は試合をよくコントロールした。

わずか2カ月で、この変わりよう。同じ相手に二度負けるのは、プロとしては屈辱に他ならない。それだけに、このリベンジ成功はチームに一層の自信を与えたのではないか。

■大胆なターンオーバーの裏に隠された戦略

そして、浦和は戦術だけでなく、マネジメント面でも成熟しつつある。

先週の3連戦で、浦和は20人の選手をスタメンへ送り出した。日曜日に湘南戦を終えた後、中2日で行われた19節の柏戦では、9人の選手を入れ替え、控え組中心のメンバーで勝利を収めた。そこから中3日となる今回の福岡戦は、7人の選手を入れ替え、再び主力中心に戻して勝利。過密日程の中、2つのチームで、2つの勝利を得た。

コンディションを考慮した、大胆なターンオーバーである。特に柏戦の9人の入れ替えは誰も予想することができず、驚かされた。カップ戦ならともかく、リーグ戦でここまで大胆な入れ替えを行う監督はあまりいない。

中途半端ではなく、大胆に。それは勇気だけでなく、合理性を伴う決断とも言える。控え組の選手たちは、普段から一緒にプレーする機会が多いため、レギュラー組の戦術練習でも相手チームを務めるなど、控え組同士での連係が深まりやすい。そのため、チームの調子が悪いときは、控え組が練習試合でレギュラー組を圧倒する、といった現象もしばしば起きる。

サッカーの姉妹スポーツであるフットサルでも、選手の組み合わせを固定したファーストセット、セカンドセットに分け、試合中にそっくり入れ替える采配をよく見かけるが、控え組から1~2人だけをレギュラー組に抜てきし、連係に戸惑うよりは、最初から連係が整った控え組を、そのままセットで起用するほうが、メリットを素直に得られる側面はある。まさに、柏戦で2トップ起用された興梠慎三と武藤雄樹は、阿吽の呼吸。フリックを使った難しいコンビネーションを次々と成功させた。左サイドでは山中亮輔と汰木康也も縦のコンビを組んだ経験が多く、お互いの特徴をわかっている。9人の入れ替えは一見、大胆不敵だが、実は大胆なターンオーバーこそ、コンディションと連係、両方のメリットを得やすい。

ただ、言うまでもないが、それが成立するのは、チームの中でレギュラー組と控え組の間に大きな差がないことが絶対条件だ。選手層が日増しに厚くなる今季の浦和は、その条件をクリアしている。今回のように1週間で3連戦が組まれる日程は、今後も頻繁にあるが、その3試合をファーストセットの2試合と、セカンドセットの1試合に分けて考えるのは、有効な戦略になりそうだ。

何よりこうした戦略は、多くの選手がチームに貢献している実感があるため、全員参加型のチームの雰囲気を作り出すことができる。マネジメント上のメリットは計り知れない。柏戦の9人の入れ替えは、リスクを負った決断には違いないが、シーズンをトータルで捉えたとき、その真価が見えそうだ。

今後、浦和には柏から江坂任が加わり、夏が終われば、酒井宏樹とアレクサンダー・ショルツも加入する。

ますます強固になる陣容の中で、酒井が入ってきたら西はどうするのか、ショルツが入ったら岩波はどうするのか、江坂と小泉はどう起用するのか、選手があふれてしまうのではないかと、浦和界隈では贅沢なトークが繰り広げられる昨今だ。

ただ、その結果がどんな11人に落ち着いたとしても、この3連戦を2+1で乗り切った戦略がある限り、大きな問題にはならないのではないか。

今、浦和はとても雰囲気が良い。コロナ禍で入場制限があるため、福岡戦は4724人の観客に限られたが、平時であれば、5万人入ってもおかしくない。ポジティブな雰囲気と、期待感を漂わせるチームになっている。

徳島から浦和へやって来た、今季の指揮官。予算が限られた地方クラブから、戦力の揃ったトップクラブへキャリアアップを果たしたとき、マネジメントや指揮の方針に悩む日本人監督は少なくない。しかし、リカルド・ロドリゲスに、その不安は無さそうだ。彼が指揮するビッグクラブに注目しよう。

清水 英斗(しみず・ひでと)
サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『日本サッカーを強くする観戦力』、『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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