『安居はやっぱり持っている』浦和vsG大阪【浦和レッズ川柳試合レビュー】
■浦和レッズにはまったきっかけ
あれから30年か。93年のガンバとの開幕戦については、戦前の予想では「ガンバは10チーム中最弱」で、圧倒的にレッズ有利だったはずなのにまるっきり点が入らず、結局、けっこう押してたはずなのに0-1で負けたのをよく覚えている。アウエーだったから、たぶんテレビで見たんだろう。あの試合をキッカケに連敗街道突っ走って、そのたんびにサポーターのボルテージがあがってた。
実を言えば、私がほぼ初めて真剣に見たサッカーの試合だったかもしれない。相撲が大好き、野球はニュースで結果くらいは見る、でもサッカーなんてほとんど接触する機会のない生活をしてたから。
まさか30年間、ずっとシーズンチケット買い続けることになるとは思わかなかった。自転車も3台くらい乗り換えたな。のぼり坂を漕いで上がるのは平気だったのに、今はちょっとの坂も降りてひいていくようになった。
のぼり坂 自転車ひいて 埼スタへ
■心配な空模様とガンバ大阪
心配なのは雨だ。予報では、夕方からはほぼ確実に雨になるそうなのだが、ヘタすれば浦和美園まで1時間遅れになりかねないギュウギュウの路線バスには乗りたくない。しかも昼の2時くらいの時点ではまだ雨は降っていない。
そんなら帰りはレインコートでビショビショになってもいいから自転車で行っちゃえ、となって、家を出る。
埼スタに到着したのが、2時半過ぎ。広場ではレッズとガンバのレジェンド、福田・本並両氏がゲストのトークショーをやってた。
まだ雨は降らない。スタジアムに入ると、まだ小学校にあがる前くらいの子供たちがコンコースの入り口ではしゃいで走り回っていた。さすがに日曜はファミリー層が多い。いつもの南側自由席の、上の方の階段通路沿いに座り、あまり動かずに先発メンバー発表を待つ。
ブービーに沈むガンバのサポーター席は、かえって応援の気合で低迷から脱しようと考えているのか、試合開始1時間前でも盛り上がっている。
他人事ながら、ガンバは大丈夫なのか、とは思う。先発発表聞いても東口や宇佐美や食野や、そこそこ名前の知られた選手を揃えているのに、ちっとも勝てない。
とにかく4時の試合開始の時点でも、まだ雨は降っていなかった。準備したレインコートは折り畳み傘と一緒にカバンに入ったままだ。
ずぶ濡れに 備えた雨具は サブ待機
■後半開始の天気で勝利を確信
先日、興梠の計算されつくした飛び出しやDFとの駆け引きが「名人芸」だという記事をネットで読み、だったらどんなもんか、と、きょうはまずしばらく興梠に定点観測してみることにしていた。が、前半、南側に向かって攻めてくるから、近いし、よくわかるはずなのに、どうもよくわからない。そもそもあまり興梠が働けそうなボールが来ない。
まだACLの疲れが取れていないのか、と感じられるくらいにゴール前でモタモタしている隙に、相手に1点とられてしまう。
ちょうど同じようなタイミングで、ポツポツ雨が来る。レインコートを着る人が、あちこちに出始め、私も着る。本降りにならなきゃいいな、と心配しているところに、まさにようやく興梠に絶好のチャンスが来たと思ったら、DFに止められた。でも、そのDF、ハンドだろう、と私の方から見てもわかったくらいなので、さっそくVARでPKゲット。ここは、うまく間合いを取ってDFに向かっていく興梠の「芸」が功を奏したのだろうか。ACL決勝の「シャドーヘディング」といい、若手FWにはない、渋みの効いたプレイがしばしば出てくる。
DFの ハンドを誘う 名人芸
当たり前というか、ようやくというか、オーロラビジョンでもファウルシーンを再生したり、「VAR審議中」みたいな表示が出てきたりで、だいぶPKに至る経過がわかりやすくなった。まあ、このくらいのサービスはしてもらわんと。やっと、物言いの判定を場内放送する大相撲並になったといえるか。
ハーフタイムで、コンコースに入った直後、やにわに土砂降りの雨。これが後半続いたら全身ズブ濡れだわ、と恐れていたら、後半始まる時には小雨になってる。ラッキー!
「きょうはツイてるから、勝つだろう」
勝手に確信してしまった。
土砂降りの 雨がやんだら ゴーサイン
このゴーサインのボタンは、大久保の投入によって押される。スコルジャ監督は、ああいう大久保みたいな、小回りがきいて相手をかく乱する選手をいいタイミングで入れていく。
決勝点となったゴールは、南側から見たら、敵ともみ合った末に「おっとっと!」って感じでゴールに吸い込まれて行ったのだが、あれもまた大久保のトリプルの切れの良さゆえか。
DFを おっとっとゴールで 切り刻み
一方でそのあとに出た安居のゴールは、明らかにポジショニングの勝利。ちょうど東口からはね返って来たところを決めてしまったのだから。前の、ホーム開幕戦でも、うまくハネ返って来たボールで1点取った安居。ポジショニングの良さだけでなく、明らかに「ゴール運」がついてる。きょうも先発で出て来たものの、なかなかうまく周囲とフィットせずに前半で引っ込んでしまったリンセンとは対照的だ。
またしても 安居の足に ゴール運
そういえば、観客数は、試合終了前ギリギリに出て3万1千人あまり。決して少なくはないものの、20年くらい前はガンバ戦なら4万超えが普通だった。レッズ側にも問題はあるかもしれないが、ガンバの元気のなさが、こうした数字にも出ている気はする。
オリジナル10、しっかりやろうぜ!
雨はほぼ降りやんだ中、ほとんど濡れないまま自転車で帰宅。
山中伊知郎
1954年生まれ。1992年に浦和に引っ越して来て、93年のJリーグ開幕時にレッズのシーズンチケットを取得。以後31年間、ずっとシーズンチケットを持ち続け、駒場、ならびに埼スタに通う。2021年より、レッズ戦を観戦した後、「川柳」を詠むという「レッズ川柳」を始める。現在、去年一年の記事をまとめた単行本『浦和レッズ川柳2022』(飯塚書店)が好評発売中。代表を務める「ビンボーひとり出版社」山中企画では、昨年9月、お笑い系プロダクション「浅井企画」の元専務・川岸咨鴻氏の半生を追った『川岸咨鴻伝 コサキンを「3億年許さん」と叱責した男』をリリース。11月上旬には『タブレット純のローヤルレコード聖地純礼』も発売。今年4月には、漫才協会在籍30年の浅草芸人・ビックボーイズ・なべかずおが半生を振り返る『たまらんぜ! 芸人人生七転び八転び』を出す。