『折角の5万人試合でこの試合内容はもったいない』浦和vsFC東京【浦和レッズ川柳試合レビュー】
■2006年埼スタの息吹を感じつつ・・・
「GoGoReds!デイ」というのもあって、当然、子供の数は多かった。だが、そればかりではなく、お年寄りもいれば若いカップルもいる、ファミリーもいればサッカー好きなオジサンもいる、といった具合で、きょうの埼スタの客席は、私のいた南側自由席に限っても、バラエティーに富んでいた。
しかも、最近ではACLの決勝とかにならないと満杯にならないバックアッパーがほぼ埋まっていた。リーグ戦でこれは久しぶり。この前のアントラーズ戦でもここまではいかなかった。
案の定、試合終了10分前くらいに出る観客数は5万人近く。コロナ前よりも、リーグ優勝を果たして2006年頃を思い出す雰囲気に場内は仕上がっている。
ポツリポツリと小雨がきても、あまり気にならない。
仕上がった 小雨5万の ひといきれ
試合が始まるちょっと前、近くから子供たちの「ウラワ、レッズ!」の声が聞こえてきた、それに合わせて、ごく自然に南側の人たちも叫び出す。こんな感じも、あんまり味わったことはなかった。
FC東京の応援も、相変わらず妙に秩序だっていて、しかもパワフル。
こういう、舞台が整った日に、ぜひレッズのいい試合を見せて、老若男女をいい気分にさせて帰ってほしいものだ。
■空模様と同じ試合展開に
先発メンバー発表では、やはり長友へのブーイングが目立つ。私の前に座っていたカップルの女性の方は、「わー、長友!」と喜びの声を上げてた。左サイドの長友とぶつかるのは右サイドの酒井。この2人の勝負が楽しみだな、と期待していたら、試合開始すぐに酒井がケガでひっくり返ってしまった。
残念!全力疾走しているように見えないのに、いつの間にか前にも後ろにいる酒井の「名人芸」を長友がどう封じるか見たかったのに。名人同士の対局が行われるはずが、いきなり片方が対局場から姿を消してしまった。
一手目で いきなりドローの 名人戦
それにしてもレッズの攻撃陣は、この前の湘南戦で見せたような切れ味がほとんどなかった。関根や大久保も目立たなかったし、興梠も、大事な一歩の出が遅い感じで、チャンスはあったものの、決めきる勢いはない。かえって降る雨の方が勢い出てきて、ちらほらとレインコートを着こむ人たちが目立つ。せっかくの5万人、出来ればいい天気のもとで見てもらいたいところだが。
後半になっても、どうもパッとしない。FC東京側もさほど決定機を作れていないため、全体として、これは「凡戦」に見えてしまう。おいおい、バックアッパーまでいっぱいになったこの状況の中で、それはないだろ、とグチりたくもなる。
長友は、あんまり上がってこない。縦横無尽、といった昔のイメージと比べると、グループを束ねる「不動の長老」みたいで、そこはちょっとイメージとギャップがある。
60分ころ、FC東京のイエローカードでレッズサポが「トーキョー、トーキョー、くそったれ!」をかましたのと、ときどき味方のバックパスにぎこちない動きで返す西川が少し不安だったのが印象的なくらいで、空模様と同じで、「爽快感のあまりない、湿っぽい梅雨試合」になってしまった。
満員の 客も湿らす 梅雨試合
帰り、ほぼ雨がやんだのは助かった。
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山中伊知郎
1954年生まれ。1992年に浦和に引っ越して来て、93年のJリーグ開幕時にレッズのシーズンチケットを取得。以後30年間、ずっとシーズンチケットを持ち続け、駒場、ならびに埼スタに通う。2021年より、レッズ戦を観戦した後、「川柳」を詠むという「レッズ川柳」を始める。現在、去年一年の記事をまとめた単行本『浦和レッズ川柳2022』(飯塚書店)が好評発売中。代表を務める「ビンボーひとり出版社」山中企画では、今月、漫才協会在籍30年の浅草芸人・ビックボーイズ・なべかずおが半生を振り返る『たまらんぜ! 芸人人生七転び八転び』をリリース。夏には、テレビの夢グループCMで、石田社長の横で「社長~! 安くしてエ~!」の甘え声でお馴染の歌手・保科有里の本を出す予定。