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名探偵はコナンだけじゃない!?“新時代”を感じさせる令和の謎解きミステリーアニメとは?

渡辺晴陽作家・脚本家/エンタメアドバイザー

こんにちは。

さて、明日4月14日から、いよいよ劇場版『名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)』が公開されます。楽しみですね!!

ちなみに、劇場版コナンは今回で第26作だそうです!
世界最速上映ということで、全国の18劇場では深夜(早朝?)0時0分から上映するとか。30年近く続く長期シリーズでありながら攻めた姿勢がいいですね。日本では、探偵や推理モノのミステリーと言えば、アニメ『名探偵コナン』を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか?

あるいは、『金田一少年の事件簿』とか、ドラマだと『科捜研の女』、『相棒』などの長期シリーズのサスペンスもありますね。

いずれにしても、刺激的で面白いのがミステリーですよね!
何を隠そう、私もミステリーが大好物!!

登場人物の一人になったようなつもりで謎を解きながら楽しむもよし、謎に翻弄(ほんろう)されつつ探偵役の華麗な推理を楽しむもよし。そんなミステリー作品の中で、今回紹介するのは、アニメ『ID:INVADED/イド:インヴェイデッド』です。

アニメ『ID:INVADED/イド:インヴェイデッド』とは?

ジャンルとしてはSFミステリーになりますが、ミステリ小説好きの方には「新本格ミステリ」的な作品だと説明すると分かりやすいかもしれません。

このアニメをひと言で表現するなら……「とにかくスタイリッシュで斬新な作品」です!

・『KADOKAWA Anime Channel』公式トレーラー映像

『ID:INVADED/イド:インヴェイデッド』
TV放送は2020年。全13話(+漫画3巻)。
監督は『Fate/Zero』、『アルドノア・ゼロ』などのあおきえいさん、脚本は『ディスコ探偵水曜日』の執筆や『巨神兵東京に現る』の「言葉」を担当をしている作家の舞城王太郎さん。
出演声優は津田健次郎さん(名探偵・酒井戸役)、 M・A・Oさん(名探偵・聖井戸御代役)、竹内良太さん(名探偵・穴井戸役)、佐倉綾音さん(名探偵・墓井戸役)など、実力派揃いでした。
この年は『虚構推理』、『宝石商リチャード氏の謎鑑定』、『歌舞伎町シャーロック』などミステリー系のアニメが多くて埋もれてしまったのか、新機軸過ぎてミステリーファンに刺さらなかったのか、あるいはタイトルでミステリーだと気づかなかったのか。爆発的なヒットとはなりませんでしたが、最後まで見た人たちからは、おおむね高く評価されています。

カッコイイ音楽とスタイリッシュなアクション

まず、スタイリッシュさや音楽のよさがこの作品の特徴です。
オープニングはSouさんの「ミスターフィクサー」で、海外の音楽チャートで4週連続1位を記録したカッコイイ曲です。さらに、エンディングはMIYAVIさんの「Other Side」で、これまたクールでいい。

アクションシーンなどで使われている挿入歌にも、MIYAVIさんや、水曜日のカンパネラのKenmochi Hidefumiさん、soundbreakersさんなどが手がけた曲が使われていて、シーンを眺めつつ音楽を聞いているだけでも楽しめます。

肝心なストーリーも、斬新でオモシロイ!!

新しすぎて、何っぽいとか、〇〇系というような端的な説明はできませんが、とにかく謎なストーリーがとても面白い本作。できるだけ分かりやすく面白さを解説していきます。

※イメージ画像
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<世界観とあらすじ>
大量殺人や猟奇殺人の対策として発足した組織「蔵」は、殺意を検知できる「ワクムスビ」という携帯端末で事件現場に残された犯人の殺意を採取します。その殺意を「ミヅハノメ」という装置に送って、「イド」と呼ばれる殺意の裏にある深層心理の世界を構築します。そして、探偵がミヅハノメのコックピットに乗って、イドの中に入り込み行動します。一方、蔵のスタッフたちはイドの中の探偵の行動や探偵が見た世界を分析し、現実世界の犯人を特定するための手がかりを探します。
登場する連続殺人犯は、被害者の頭部にドリルで穴を空ける「穴空き」、被害者を密室に閉じ込める「墓掘り」、一対一での殴り合いで被害者を殺害する「対マン」など、特殊な殺害方法に固執しており、それぞれの精神を反映したイド世界が作られます。
イドの中では、カエルちゃんと呼ばれる少女がいつも殺害されていて、イドに入った名探偵はこの少女の死の謎を解くことが使命づけられています。
名探偵はイドの事件を捜査し、蔵のスタッフたちは現実世界の事件を追い、二つの事件が交差して新たな謎や手がかりが得られていくという二重のミステリーが展開されます。
そして、蔵が追う数々の連続殺人事件の裏には、ジョン・ウォーカーという「連続殺人鬼メイカー(人の深層心理を刺激して連続殺人鬼に仕立てる)」の男が存在していることをつかんでいきます。
・ジョン・ウォーカーの正体は誰で、その目的は?
・カエルちゃんは、なぜイドの中でいつも殺されているのか?
二つの大きな謎を追いながら、「蔵」と「探偵」が数々の連続殺人事件を解決していきます。

上記だけでは理解が追いつかないと思いますが、おおまかに言うと……

イドという犯罪者の精神世界に入り込んだ探偵が、そこで起きている殺人事件を解決することで、現実世界の連続殺人事件も解決していくという設定です。

新感覚のミステリー

イドの中で起こる事件はかなり新機軸で、推理や解決の方法も新しくてオモシロイ!!

たとえば、第一話では、イドの中で目覚めた名探偵・酒井戸は、いきなり体がバラバラの状態になっています。
(※バラバラだけど生きていて、バラバラのパーツを動かせる。バラバラの実の能力者?

周囲を見回すと、酒井戸がいる部屋は、家の一部だけが切り取られて宙に浮いたような状態で、遠くにはパズルのピースのように家の残骸や、町の破片が浮いています。

※イメージ画像
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そのイドは“バラバラであることが普通の世界”だったのです。

酒井戸は自分の体をつなぎ合わせて周囲を探索します。すると、胸をナイフで一突きにされて死亡しているカエルちゃんに遭遇します。さらには、体がバラバラで体の一部が足りないという異様な住人たちも現れます。

この世界は町全体がバラバラで、住んでいる人もバラバラで、どこかが欠けている(酒井戸自身も腕の一部が欠けた状態でした)。それをヒントに、酒井戸はカエルちゃんの死の謎を解いていきます。

アリエナイ世界の法則を理解して謎を解け!

ミステリーでは、探偵が科学知識や論理的思考などを駆使して、あり得ない出来事の謎を解き、犯人がどうやってそれを成し遂げたのかを突き止めるという流れが一般的です。

しかし、イドの事件は世界そのものが謎の状態です。

おかしいのはこの世界のほうかもしれませんよ

第一話で名探偵・酒井戸は、バラバラの世界の住人達に向かってそう言います。
そんな世界の規則性や法則を見つけるところから、名探偵の謎解きが始まります。

住んでる世界そのものを疑うヤツなんていないか。
しかし、名探偵の(中略)俺は、世界のありかたすらも疑っていい!

そんな名探偵・酒井戸の一言が、本作の世界観を表しているかもしれません。

世界観や設定含めて最初はまったく意味が分からない状態なのですが、何でもありというわけではなく、謎解きを最後まで見るとちゃんとつじつまが合っています。

イド世界(深層心理の世界)は人(その心理の持ち主)によって毎回変わるので、毎回その世界の謎(規則性)をひも解く必要がある。そして、世界の本質をつかむことができれば、事件解決につながる。
本作はそんな風に「犯人探しだけではなく世界を探求する」特異なミステリー作品です。

これぞ新時代、“令和のミステリー”作品かも!?

柔軟な思考と規則性を見つける分析力が問われるという新しいスタイルのミステリー。
しかも、この世界における探偵は連続殺人の素質を持った殺人犯でなければならないというぶっ飛んだ設定も斬新でした。

複雑なので、最初の数話で見るのをやめてしまった人も多いようです。
たしかに、最初は、ちとムズカシイ……
でも、集中して見だすと、全13話をイッキ見してしまう作品でした!!

※イメージ画像
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というわけで、今回は新機軸SFミステリーアニメ『ID:INVADED/イド:インヴェイデッド』でした。

生々しいグロシーンこそありませんが、猟奇殺人を扱ったミステリーなので、残酷な設定が苦手な人にはオススメできませんが、ミステリー好きならハマるんじゃないでしょうか。
普通のミステリーは探偵よりも早く解けてしまうとお嘆きのミステリー上級者でも、翻弄されることうけあいです!!

作家・脚本家/エンタメアドバイザー

国立理系大学院卒、元塾経営者、作家・脚本家・ライターとして活動中。エンタメ系ライターとしては、気に入ったエンタメ作品について気ままに発信している。理系の知識を生かしたストーリー分析や、考察コラムなども書いている。映画・アニメは新旧を問わず年間100本以上視聴し、漫画・小説も数多く読んでいる。好みはややニッチなものが多い。作家・脚本家としては、雑誌や書籍のミニストーリー、テレビのショートアニメや舞台脚本などを担当。2021年耳で読む本をつくろう「第1回 児童文学アワード」にて、審査員長特別賞受賞。

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