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ラストシーンが頭から離れなくなる!?ホラーじゃないけどゾッとする映画3選

渡辺晴陽作家・脚本家/エンタメアドバイザー

暑い日が続いています。猛暑です。いや、酷暑です。
家から一歩外に出ると命にかかわるほどの暑さですが、たとえ家の中にいてもじっとりと体に絡みつく暑さからは逃れきれません。

こんなときは、なるべく家の中でじっと楽しめる映画鑑賞がいいのではないでしょうか?
旧作映画なら、映画館に行かなくても、配信などで手軽に見ることができます!

夏といえば、背筋が寒くなるホラー映画が定番ですが、ホラー系が苦手な人も多いと思います。そこで今回は、ホラーとまではいかないけれど怖い話とか、考えてみたらゾッとする話のなかから、ラストシーンが印象的な作品を3つ選んでみました。
いつもは洋画や邦画、アニメなどを織り交ぜてご紹介しておりますが、今回は洋画のみからのセレクションです。暑さを逃れてお家で過ごす際の参考にしてみてください。

ラストシーンを観たら、きっと巻き戻したくなる

イノセント・ガーデン(原題: Stoker)

2013年公開で、パク・チャヌク監督、ウェントワース・ミラー脚本。主な出演はミア・ワシコウスカ、ニコール・キッドマン、マシュー・グッドです。ミア・ワシコウスカは、アリス・イン・ワンダーランドではアリス役を務めた女優で、本作では主役のインディア・ストーカーを演じています。

インディアの18歳の誕生日に、彼女の父が亡くなり、それと入れ替わりに叔父のチャーリーが現れたところから物語は始まります。インディアは最初はチャーリーに警戒心を抱いていますが、だんだんと彼に惹かれていきます。一方で、彼女の周囲には徐々にただならぬ不穏な空気が立ち込めていき、彼女の周辺の人物が次々に姿を消していきます。

ジャンルとしてはミステリーやサスペンスに分類される作品ですが、本作の最大の魅力は耽美的な感じのする映像でしょう。
インディアは18歳でまだティーンエイジャー。幼い少女ではありませんが、大人の女性とも言い切れない不安定さを持っています。そんな彼女の元に現れた年上の男性としてのチャーリー。それほどあからさまなシーンはありませんが、映画にはどこか妖艶な空気も漂っています。

起こる事件はあまりスピーディではありませんが、ぐっと引き込まれるので展開は実際以上に早く感じられるはずです。そして、ラストシーン。そのワンシーンが、序盤で印象的だったあるシーンとつながり、ゾッとします。
たぶん配信やDVDなどで本作を見た人は、見終わった後に序盤のシーンまで巻き戻すことでしょう。まさか、あのシーンにこんな意味があったなんて、と驚かされると思います。

また、邦題のイノセント・ガーデンも良いタイトルですが、原題のStokerも深いです。最後まで本作を見れば、原題が主人公のインディア・ストーカーの名前のインディアではなく、苗字に当たるストーカーだった理由も分かって「むむっ」とうなるに違いありません。

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トウモロコシを齧る口が恐ろしい

シークレット ウインドウ

2004年公開で、スティーヴン・キング原作、デヴィッド・コープ監督・脚本で、主演はジョニー・デップです。ジョニー・デップは売れっ子作家のモート・レイニーを演じています。

作家モート・レイニーは妻との離婚問題などに悩むうちにスランプに陥ります。そんなとき、彼の元にジョン・シューターという男が現れます。ジョンはモートに自分の作品を盗まれたと憤っており、モートに執拗な嫌がらせをします。
モートは疲弊していきます。そのうえ、別居中の妻や妻の浮気相手とも会い、さらに追い詰められてしまいます。
モートは知人の探偵などの力を借りてジョンの嫌がらせに対応したり、妻と話し合ったりして抱えている問題の解決の糸口を探します。
最終的にモートはあることに気付き、ある手段で全ての問題を解決します。そして、満足げに、茹でたトウモロコシを齧(かじ)ります。

この最後のシーン。ただトウモロコシを齧るだけのシーンなのですが、そこまでの内容を知っている人にはゾッとするシーンです。事件は解決しておらず、また新たな事件が繰り返される。そんな予感すら感じられるはずです。

本作はキングの原作だけあって、伏線や作り込みがしっかりしていて、ミステリーとしての満足度が高い作品です。
大ヒットしたわけではなく、批評家からの評価もそれほど高くはありませんが、ミステリーやサスペンスが好きな人にはオススメできる内容だと思います。「あれは、そう言う意味だったのか!」と点と点がつながる瞬間の爽快感は、暑さでどんよりした気分を、すっきりさせてくれるはず。

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ホラーでもサスペンスでもないけどゾッとする

インセプション

2010年公開で、クリストファー・ノーラン監督・脚本。渡辺謙さんが出演していることでも話題になりました。SFアクション大作と呼ぶべき映画で、アカデミー賞では撮影賞、視覚効果賞、音響編集賞、録音賞を受賞しています。主演のレオナルド・ディカプリオは、夢の中に入って情報を盗む産業スパイのドム・コブを演じています。

斬新な映画を多く撮っているノーラン監督ですが、本作もその一本でしょう。
公開当時はとても話題になっていたので、観た方も多いかもしれません。

夢の中に出入りする機械が開発されていて、その機械を通して夢に入り情報を盗む産業スパイがいるという世界観で繰り広げられるストーリーです。そんななかで、コブは情報を取り出すのではなく、植え付ける(インセプション)という仕事を依頼されます。

夢に出入りするのは、ある意味SFの定番ですが、本作ではそのルールがしっかりと構築されているところが魅力です。細かく考えすぎると難しい部分でもありますが、ちゃんと作り込まれているので、集中するほどに深く楽しめて、リアリティのあるスリルを味わえます。

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本作においてゾッとするのは、夢と現実との区別がつかなくなること。
作中では、夢の中で死ねば簡単に目を覚ますことができるのですが、もしも夢だと思っていた世界が現実だったら。そう思うとゾッとするはずです。

本作ラストシーンは、そんなゾッとする感覚の延長線上にあります。
そのシーンが何を表していたのかは公開当時にも議論を呼びました。
2023年に公開の『オッペンハイマー』(ノーラン監督作で、日本では未公開)のインタビューの中でも、ノーラン監督はこのラストシーンの意味について尋ねられたそうです。
13年を経ても頭に残るラストシーン。まだ見ていない方は見て見てはどうでしょう?

さて、今回はラストシーンが印象的で少しゾッとするところがある作品を3つ紹介しましたが、いかがだったでしょうか?

この他にも、Twitterなどでもオススメ作品やエンタメ情報をちょこちょこ発信しているので、興味のある人は合わせてチェックしてみてくださいね。

作家・脚本家/エンタメアドバイザー

国立理系大学院卒、元塾経営者、作家・脚本家・ライターとして活動中。エンタメ系ライターとしては、気に入ったエンタメ作品について気ままに発信している。理系の知識を生かしたストーリー分析や、考察コラムなども書いている。映画・アニメは新旧を問わず年間100本以上視聴し、漫画・小説も数多く読んでいる。好みはややニッチなものが多い。作家・脚本家としては、雑誌や書籍のミニストーリー、テレビのショートアニメや舞台脚本などを担当。2021年耳で読む本をつくろう「第1回 児童文学アワード」にて、審査員長特別賞受賞。

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