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冷めやらぬゴジラ熱。今こそ、世界を代表する日米の怪獣「ゴジラ」と「コング」の夢の共演作を見てみよう!

渡辺晴陽作家・脚本家/エンタメアドバイザー

上映中の映画『ゴジラ-1.0(マイナスワン)』。興行成績は公開後3週連続の1位を記録していましたが、4週目で2位になってしまいました。
(ちなみに、1位は『翔んで埼玉 琵琶湖より愛をこめて』です)

とはいえ、ゴジラの週末3日間の観客動員数も20万人近くあり、興行収入もすでに30億円を超えていて、国内の実写映画としては大ヒットと言っていい状態です。今後の展開次第では、久しぶりの100億円超(邦画実写)をたたきだすのではと期待が膨らみます。

と、ゴジラに注目していると、無性に怪獣映画を見たくなってきますね。
少し前には、初代の『ゴジラ』と『キング・コング』を見比べてみるという企画もしました。

日本を代表する怪獣の「ゴジラ」と、アメリカを代表する怪獣の「コング」。
東宝は「キング・コング」のライセンスを取得し日本版のキング・コング作品を作っていますし、アメリカでもハリウッド版(エメリッヒ版)のゴジラ『GODZILLA』(1998)を皮切りにゴジラの登場する作品が作られています。

もはや、ゴジラとコングは世界を代表する怪獣と言っても良いでしょう!

そんなゴジラとコングを一度に楽しみたい。
ということで、今回の作品はゴジラとキング・コングの共演映画『ゴジラvsコング』です。
本作は、2021年に公開されたアメリカの映画で、小栗旬さんの出演でも話題になりました。
ゴジラとキング・コングのリブート作などを作るシェアード・ユニバース(共通の設定・世界観で様々な作品を作る)事業であるモンスター・ヴァースの作品群の一つで、映画『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(2019年)に続く4作目です。

さらに、来年2024年には、本作の続編の『Godzilla x Kong: The New Empire』の公開も予定されています。

※ゴリラです
※ゴリラです

この映画を見てまず感じたのは、「ゴジラ」と「キング・コング」への愛情でした。
1998年の『GODZILLA』(1998)と比較すれば分り易いですが、ゴジラの造形は日本のゴジラに近くキャラクターもどこか哀愁を感じるものになっており、ゴジラ愛が伝わってきます。
コングも、ただの怪物ではなく、人間的な部分を持ちながらも、飼いならされることのない誇り高き王者として描かれていました。
(ちなみに、キング・コングの「コング」は、デンマーク語で王〈King キング〉を指す言葉だそうです。つまり、キング・コングは同じ意味の言葉を重ねた名前なわけです)

ただし、やはりエンタメ性重視のアメリカ映画という感じで、核兵器とゴジラの関係など深刻な部分はカットされていて、複雑な人間模様や、怪獣に襲われた街の悲惨な現実も描かれていません。

全体的にはパワーで押し切る感じのストーリーと映像で、深いドラマこそありませんが、テーマパークのアトラクションに乗っているような迫力がありました。戦艦を巻き込んでの怪獣たちの戦闘や、戦闘機が怪獣と戦うシーンもかなりカッコイイです。

思い返せば、日本のゴジラ作品ではゴジラが建物を壊したり、電車を持ち上げたりするシーンが印象的でした。怪獣の演出として、身近なものを破壊させることで、怪獣の巨大さや怖さを表現しているのでしょう。
一方、本作を含めたアメリカの怪獣ものは、戦闘機を叩き落とすなど、兵器との対峙が多いように感じます。
日本でも兵器を使って怪獣を倒そうとするシーンはありますが、墜落した戦闘機が民家を潰すとか、流れ弾に当たって一般人が傷つくといった生々しいシーンはあまり描かれません。
アメリカでは兵器と怪獣の戦闘がリアルに描かれています。軍隊や銃が身近な社会を反映した演出なのでしょうか。その辺りも興味深いですね。

本作のゴジラは体長100メートル以上だそうで、それに合わせてコングも大きい体をしています。(初代の『キング・コング』ではコングは15mほどでしたが、それではゴジラと戦っても勝ち目がなく、迫力にも欠けるでしょう)

ただ、ゴジラやコングが暴れる香港の街には300m級の高層ビル(東京タワーくらい)の建物がたくさんあり、怪獣そのものの迫力という点では背景が大き過ぎて少し残念でした。

ちなみに、日本のゴジラでは、背景となる街並みから頭一つ突き出るくらいの大きさにゴジラが設定されていて、見るからに巨大で恐ろしく感じられる造形がされているそうです。
では、本作ではなぜ日本と同じような背景と比べて大きな造形にならなかったのかを考えると、一つの要因は「大きさの迫力」には一長一短があるせいだと思われます。
古い特撮の巨大怪獣を見ると動きがコミカルにみえることがあるはずです。
背景に対して体が大きいと、迫力が出る代わりに、ゆっくり動かさないとちょこまかして見えてしまいます。だからゴジラはのっしのっしと歩くのでしょう。でも、ゆっくりした動きでは、激しいアクションを演じさせることができません。

本作では、怪獣たちの大きさと街のバランスで、ゴジラやコングの動きを素早くしても軽さは出ていません。重厚かつスピーディな動きは、なんだかゴジラとコングのプロレスを見ているようで、手に汗握る熱戦を楽しめました。

ゴジラが熱線で地面に穴を開けるシーン、コングに心臓マッサージをするシーン、地底の世界など、本作にはちょっと無理のある場面も多かったように思います。ですが、ゴジラとコングが戦う世界線を描いたファンサービス的な作品だと思うと、戦いの迫力、ゴジラとコングのカッコ良さなど、見どころは盛り沢山でした。

『ゴジラ-1.0』を見る前後で本作を見れば、日米の演出の違いや、ゴジラのとらえ方の違い、戦争や兵器への感覚の違いなどが感じられて、より楽しいかもしれません。

それから、東宝の映画『キングコング対ゴジラ』(1962)でも、ゴジラとコングが戦っているので、本作を見て面白かったという人は、そちらもチェックしてみてはいかがでしょうか?

作家・脚本家/エンタメアドバイザー

国立理系大学院卒、元塾経営者、作家・脚本家・ライターとして活動中。エンタメ系ライターとしては、気に入ったエンタメ作品について気ままに発信している。理系の知識を生かしたストーリー分析や、考察コラムなども書いている。映画・アニメは新旧を問わず年間100本以上視聴し、漫画・小説も数多く読んでいる。好みはややニッチなものが多い。作家・脚本家としては、雑誌や書籍のミニストーリー、テレビのショートアニメや舞台脚本などを担当。2021年耳で読む本をつくろう「第1回 児童文学アワード」にて、審査員長特別賞受賞。

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