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今年の世相を表す「税」にちなんで、とんでもない大金が出てくるクライム映画3選

渡辺晴陽作家・脚本家/エンタメアドバイザー

いよいよ12月も中盤となり、昨日(12日)には日本漢字能力検定協会の選ぶ今年の世の中を表す漢字も発表されましたね。

選ばれた漢字は「税」だそうで、応募総数約15万票のうちおよそ4%にあたる約6千得票したそうです。ちなみに、それぞれ約500票くらいずつ開いて、2位「暑」、3位「戦」、4位「虎」と続くとのことです。
それにしても、今年を表す一文字が「税」とは……
なんだか景気が悪くてすっきりしないのは私だけでしょうか?

そんなわけで、今回は画面の中だけでも大金を拝めるよう、お金にまつわるスケールの大きなクライム映画をご紹介しようと思います。

大金の出てくる作品をパッと思い浮かべてみると、真っ先に出て来るのがアニメ『ルパン三世』シリーズではないでしょうか?

劇場版『ルパン三世 カリオストロの城』では、主人公のルパンと次元が札束を担いで登場しますし、テレビ放送版のアニメにもヒロインの不二子が札束をプールやベッドにしているシーンが多く存在します。

ですが、ルパン三世ではあまりにもスケールが大きすぎて、ちょっとリアルさに欠けるかもしれません。そこで今回は実話をもとにした洋画作品を2つ、実際にあった事件とよく似た事件を描いた邦画作品を1つ選びました。
いずれも『ルパン三世』並みにスケールが大きな話ではありますが、実際の事件のエッセンスのおかげかリアリティがあります。

美しき巨額横領犯の物語

紙の月

2014年の映画で、監督は吉田大八さん、角田光代さんの原作で、早船歌江子さんが脚本を担当しています。主演は宮沢りえさんで、巨額の横領事件を起こす梅澤梨花を演じています。

本作は実話をもとにした話だと明言されているわけではありませんが、過去によく似た横領事件が日本国内で起こっています。原作の執筆時や映画の製作時には、実際の事件も参考にされているはずなので、かなり説得力のある映画だと思います。

真面目でごく平凡な銀行職員だった梨花が、ひょんなことで顧客のお金に手を付けたところから、劇的な物語が始まります。最初はちょっと借りただけだったはずが、いつの間にか明らかな横領をするようになり、やがて自ら積極的に犯罪に手を染めていく。
犯罪を隠すために更なる犯罪に手を染め続けなければならない。いつか破滅するのが透けて見えているようで、物語には常に緊張感があります。

そう言えば、以前に銀行で働いている人から聞いた話では、銀行職員は有給を利用した長期休暇が取りやすいのだそうです。福利厚生がしっかりしているのではなくて、休んでいる間にその人の仕事を徹底的に調べて横領がないかを確かめるのだとのこと。忙し過ぎて休日出勤をしたり有給取得を先延ばしにしたりするとあらぬ疑いがかかることもあるとかないとか。

たしかに、銀行で働いていれば常に何百万あるいは何千万円ものお金が手元にあるわけですし、ちょっと魔が差したら、この作品の主人公のように大きく人生のレールを踏み外してしまう可能性もありそうです。そんな想像をしながら見ると、より本作のスリルが増すかもしれません。

イメージ:銀行の金庫
イメージ:銀行の金庫

証券詐欺で莫大な金を稼いだ男の物語

ウルフ・オブ・ウォールストリート

2013年のアメリカ映画で、マーティン・スコセッシ監督作。主演はレオナルド・ディカプリオです。本作には過激なシーンが多くR-18指定を受けています。レオナルド・ディカプリオが演じるジョーダン・ベルフォートは実在する人物で、巨額の証券詐欺とマネーロンダリングの罪で服役していました。

ジョーダン・ベルフォートは金持ちになる野心を抱きながら、小さな投資会社で働き始めます。ジョーダンはクズのような株を売って大儲けし、さらなる大儲けを狙ってストラットン・オークモント社という株式仲介会社を立ち上げます。そして、富裕層を相手にしこたま稼ぎ、ジョーダンの生活は信じられないほど派手になっていきます。

麻薬、セックス、パーティ、暴力。とにかく過激な本作ですが、見ていると、どことなく前述した『紙の月』に近い性質も帯びているような気がしました。

ただし、本作の主人公たちは、転落するその瞬間まで野心を燃やして成り上がっていき、生活もどんどん派手で華やかになっていきます。
一方で『紙の月』の主人公は破滅に怯えてより深みにはまっていくような印象で、少しずつ疲弊や歪みが感じられます。

作品が全く違うので、内容が違っているのは当然なのですが、日米の感覚の違いによって荒んだ生活の描き方が変わってくる部分や、ドラッグや武器の身近さの違い、また、主人公が男か女かによってお金に対する価値観が違ってくる部分もあるのかもしれません。

イメージ:商談・詐欺
イメージ:商談・詐欺

麻薬の運び屋の物語

バリー・シール/アメリカをはめた男

2017年の映画で、『ボーン』シリーズや『Mr.&Mrs. スミス』のダグ・ライマン監督の作品です。主演はトム・クルーズで、実在した輸送機パイロットで密輸犯のバリー・シールを演じています。

バリー・シールは腕のいいパイロットで、CIAの偵察任務に従事していました。
その裏で、コロンビアの麻薬カルテルの首領パブロ・エスコバルに雇われて、シールは麻薬の密輸に手を染めます。

輸送機の低空飛行でレーダーの監視をすり抜けて麻薬を運ぶシール。
隠し持って運ぶのではなく飛行機で大量に運べるので、シールは密輸の度に莫大な報酬を受け取ります。やがて家も倉庫も現金で一杯になり、シールは金の置き場に困るようになるほど大儲けするのです。
結末まで見るとシールのようにはなりたくありませんが、お金があり過ぎて置き場所に困る経験はしてみたいものですね!

イメージ:空輸
イメージ:空輸

今回は「税」にちなんで大金にまつわる映画を3本選びました。

いずれも犯罪を描いた作品ですが、小気味よいストーリーと、飛び交う大金を見ていればスカッとするはずです。
不景気な気分なんて映画を見て吹き飛ばしましょう!

作家・脚本家/エンタメアドバイザー

国立理系大学院卒、元塾経営者、作家・脚本家・ライターとして活動中。エンタメ系ライターとしては、気に入ったエンタメ作品について気ままに発信している。理系の知識を生かしたストーリー分析や、考察コラムなども書いている。映画・アニメは新旧を問わず年間100本以上視聴し、漫画・小説も数多く読んでいる。好みはややニッチなものが多い。作家・脚本家としては、雑誌や書籍のミニストーリー、テレビのショートアニメや舞台脚本などを担当。2021年耳で読む本をつくろう「第1回 児童文学アワード」にて、審査員長特別賞受賞。

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