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今年のクリスマス、この作品を見るのはどう? あえて選んだ心を揺さぶる名作映画&アニメ作品3選!

渡辺晴陽作家・脚本家/エンタメアドバイザー
鑑賞のおともはポップコーンとココアで!

今日はクリスマス・イブですね。そこで今回は、クリスマスを描いた作品や、クリスマスにオススメしたい作品を紹介します。

『グリンチ』や『ホーム・アローン』など、クリスマスには定番となっている作品が沢山ありますが、今回は若干定番からは外れそうなものの中から、あえてこの時期に見てほしいと思うアニメ・映画作品を合わせて3つ選びました。

あえてこっちは、どう?

ティム・バートンのコープスブライド

本作はティム・バートン監督によるストップモーションアニメ映画です。

ティム・バートン監督の作品でクリスマスと言えば『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』が有名ですが、今回はあえて本作を選びました。

コープスブライドは「死体の花嫁」という意味で、本作ヒロインのエミリーのことを表しています。

不気味で可笑しな世界観を作るティム・バートン監督作品らしく、本作も不気味かつ楽しい雰囲気に包まれています。
たとえば、エミリーは片手が白骨化し、顔には穴が開いてしまっています。その姿はさながらホラー映画のゾンビのようで、最初はぎょっとするはずです。ところが、映画が進むうちに、だんだんとエミリーの優しさや純真さが分かってきて、彼女が可愛らしく見えてくるはずです。

そして、本作もう一つの特徴が死生観にあります。

本作の舞台の19世紀のヨーロッパには、貴族のしがらみや貧富の格差があり、生きている人々は灰色で描かれ、陰鬱なムードが立ち込めています。

一方で、亡者たちの住む世界は、カラフルで温かみに満ちています。ガイコツや体が半分になった男など不気味な人たちばかりですが、みんなが楽しそうに暮らしています。

今年の日本には暗い話題も多かった気がします。鬱憤が溜まっている人も多いのではないでしょうか?
そんなときに本作の登場人物たちの生き方(死に方?)を見れば、鬱屈した気持ちも浄化されるかもしれませんよ!

別れから始まるクリスマス

ホリディ

本作はアメリカの映画で、定番とまでいくかどうかは分かりませんが、クリスマス映画として紹介されることも多い作品です。

本作の見どころは何と言っても、豪華な出演俳優陣!

二人いる主演女優のうち一人は『マスク』や『チャーリーズ・エンジェル』で知られるキャメロン・ディアス(アマンダ役)で、もう一人は『タイタニック』のヒロイン役でも有名なケイト・ウィンスレット(アイリス役)です。

さらに、ヒロイン二人の相手役となる男性俳優はそれぞれ、主演から敵役までこなし様々な作品に出演しているイケメン俳優のジュード・ロウ(グレアム役)と、『スクール・オブ・ロック』などで知られる個性派ジャック・ブラック(マイルズ役)です。

ロンドンに住むコラムニストのアイリスと、ロサンゼルスで映画予告編の製作会社を経営していたアマンダが、クリスマス直前のタイミングでそれぞれに酷い失恋をし、傷心旅行を決意するところから物語は始まります。

失恋した相手への未練が捨てきれずに悩むアイリス。

過去にした悲しい経験からどんなに辛くても泣けなくなってしまったアマンダ。

二人はホームエクスチェンジ(互いの家を交換して滞在する)を斡旋するサイトで知り合い、互いの家を2週間交換する約束をして旅立ちます。

失恋や裏切りから始まる本作ですが、全体を通して見ると、とてもキュートな物語です。

この一年、楽しいことばかりじゃなかった人も多いかもしれません。そんな方でも、本作を見れば励まされ、楽しい気分になることができると思います。

昨日までが最悪だったとしても、涙の後には笑顔になれる瞬間が待っている。そう感じられる作品でした。

楽しいクリスマスのすぐ背後では……

機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争

アニメ『ガンダム』シリーズのOVA作品で、全6話の構成です。本作はシリーズの外伝・番外編で、他のシリーズ作品を見ていなくても楽しめます。
ガンダムというとロボットアニメという印象しかない人もいるかと思いますが、ガンダムは「戦争」を描いたアニメです。ガンダムは作中に登場する兵器の名前で、戦車や戦闘機の発展形として作られた2足歩行の機体(モビルスーツ)の一種です。

本作を見ていると登場人物それぞれの優しさや思いやりに、まず胸を打たれます。敵側か味方側かで立場の違いはありますが、登場人物はみんな好感の持てるキャラクターでした。主人公のアルという少年も、少年の住む中立コロニー(戦争に参加していない居住地)に作戦のためのやってきたバーニィという軍人の青年も、バーニィとは敵にあたる立場のクリスという女性も、悪い人間ではありません。その3人は作中で知り合い親しくなっていきます。ところが、ある理由からバーニィはコロニー内で戦争を始めなければならなくなります。

本作で印象的なのは、楽し気なクリスマスムードの街と戦闘場面との対比です。

中立コロニーは一見すると平和で、クリスマス前の楽し気な空気が漂っています。コロニーの子どもたちにとって戦争は遠い世界の出来事で、子どもたちは生々しい怖さではなく、ヒーローショーを見るような感覚すら抱いています。
ところが、その日常のすぐ外側では現在進行形の戦いが繰り広げられていて、誰かが命を落としています。そして、コロニーにも危険が迫っているのです。
そんな場面を見ていると、現在の世界を見せられているようでハッとさせられます。

単純に「敵は悪」で「味方は正義」というわけではなかったり、戦争さえなければ友達や恋人になっていたかも知れない相手と殺し合わなければならなかったり。
アニメなので見やすく作られていますが、深く考えさせられるシーンが多い本作。2時間強で見られて、熱くなり、楽しくなり、泣けもする内容なので、今年のクリスマスにはぜひ見てほしいと感じる作品です。
ガンダムを見たことがない人の入門編としてもオススメです!

今回は少しだけ定番から外れるクリスマス向け作品を3つ紹介しました。
いずれも、配信やレンタルなどで手軽に見られる作品です。もしも興味を持たれた方はチェックしてみてはいかがでしょうか?

作家・脚本家/エンタメアドバイザー

国立理系大学院卒、元塾経営者、作家・脚本家・ライターとして活動中。エンタメ系ライターとしては、気に入ったエンタメ作品について気ままに発信している。理系の知識を生かしたストーリー分析や、考察コラムなども書いている。映画・アニメは新旧を問わず年間100本以上視聴し、漫画・小説も数多く読んでいる。好みはややニッチなものが多い。作家・脚本家としては、雑誌や書籍のミニストーリー、テレビのショートアニメや舞台脚本などを担当。2021年耳で読む本をつくろう「第1回 児童文学アワード」にて、審査員長特別賞受賞。

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