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「せめて日本生まれの息子だけでも」 仮放免の親子に無慈悲に適用される入管政策の<凡庸な悪>

山本兵衛

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 外国人労働者の日本で生まれた子供への退去強制令の無効を確認する裁判の判決が、2月28日に言い渡される。出稼ぎのために1992年に24歳で入国したイラン人のガセミ・セイフォラさんは、2008年に入国管理局に身柄を拘束され、不法滞在で家族全員が退去強制令を命じられた。それ以来、3回計2年間にわたり、入国管理局の収容センターに収監された。2018年1月、ガセミさん3度目の拘束中に、日本生まれだがイラン国籍を持つ息子さんが、退去強制処分の無効確認を求めて東京地裁に訴えを起こした。せめて日本生まれの息子だけでも退去強制処分を無効にしたいというガセミさんの願いから訴訟に踏み切ったのだ。

 2018年8月に裁判が始まり、一部のメディアで報道された後、長期に渡る拘束期間を経て、ガセミさんは仮放免で突然解放された。しかし仮放免の状態では働くこともできず、都道府県間の移動も許可が必要で、友人からのサポートが生計を営む唯一の手段とガセミさんは語る。毎月1回、仮放免を更新するために入国管理局を訪れなければならないガセミさんは、再び身柄を拘束されて家族に会えぬまま強制送還される恐怖と隣り合わせで生活している。出稼ぎで来日した外国人労働者がこのような過酷な状況に置かれるのは珍しくない。その原因は最大35万人もの外国人労働者を受け入れる法案を強行採決しながらも、「移民政策はとらない」と明言し続ける矛盾した日本政府の入管政策にあるのではないか。外国人技能実習制度を悪用した外国人労働者に対する搾取や恐喝は後を絶たず、入国管理センターで収容されている外国人に対する非人道的扱いも問題となっている。市民グループや弁護士団体が声をあげているにも関わらず、メディアの数多くは沈黙を護り、外国人労働者の境遇や管理センター収容所内での待遇改善の兆しは一向にない。

 外国人技能実習生制度における問題を数多く担当してきた指宿昭一弁護士は、日本外国特派員協会で記者会見を開き、外国労働者に対する非人道的な扱いを訴えた。「基本的に外国人云々の問題ではなく、我々の働き方や人権に深く関わる問題」と語る指宿弁護士。非人道的な扱いで問題になっている収容センターに関しても、「いままでのむちゃくちゃな入国管理政策が現場で限界にきており、収容者だけでなく入国管理職員も疲弊している」と語る。

 茨城県の牛久市にある東日本入国管理センターでは、病死や自殺が相次いで起こっており、2018年4月にはインド人男性が自死、5月にはブラジル人男性が自殺未遂を図るという異常な自体となっている。待遇の改善を求める収容者によるハンガーストライキが何回も起きており、12月にも収容者が数人病院に搬送された。入国管理センターの収容センターで面会ボランティアを行なっている荒木祐一さんは、排他的な入管政策により、四面楚歌の状況に追い込まれる外国人労働者が後を絶たないと語る。

 10年以上も働くことを禁じられ、仮放免者として生活するガセミさんにとって、日系ボリビア人の奥さんと、日本で生まれ育ち日本語しかできない息子さんにとって、日本が唯一の居場所なのである。「外国人は奴隷じゃないし使い捨てでもない。人として働きに来る。それだけじゃなくて生活しにくる。その人たちは人権が必要。必要なときは受け入れて、いらないときは帰りなさい。どうしても納得できない」と語るガセミさん。

審議中の裁判は2019年2月28日に判決が言い渡される。

更新:3月4日

毎日新聞ウェブサイトより抜粋

日本に生まれ育ったイラン国籍少年の強制送還 
「無効」認めず 東京地裁

日本で生まれ育ったイラン国籍の少年(16)が、父親の不法滞在(オーバーステイ)での逮捕を機に入国管理局に退去強制令書を出されたのは、社会通念に照らして著しく妥当性を欠くとして、国を相手取り無効確認などを求めた訴訟で、東京地裁は28日、原告側の訴えを退ける判決を言い渡した。少年側は「ペルシャ語を話せず、イスラム教徒でもない原告が、イラン社会に適応することは困難」と主張したが、清水知恵子裁判長は少年に責任がないことを認めつつ「客観的にみれば法秩序に違反する」と判断。原告の支援者は「少年の人権を踏みにじる判決」と批判した。

https://mainichi.jp/articles/20190228/k00/00m/040/194000c

クレジット

監督・編集・撮影 山本兵衛
プロデューサー Deborah Barillas

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