ショートフィルム

"心目(しんもく)" 〜躍進する中国社会の片隅で、暗闇に光を見出そうとする人々の物語〜

山本妙

ドキュメンタリー番組/映画 プロデューサー兼ディレクター

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14億の人口を抱える中国に、視覚障害者は約1200万人(出典:2006年 中国全国障害者サンプル調査)いる。中国では古くから、「視覚障害者はマッサージ師か占い師、もしくは物乞いになるしかない」と言われる。障害者に対する福祉政策は国の発展と共に整ってきた。しかし、社会にはまだ差別意識がはびこり、特に農村では学校に通えない子供もいるという。

北京で視覚障害者を支援する非政府組織(NGO)紅丹丹(こうたんたん)では、4年前から盲学校に通う子供を集めて、週に1回の英語レッスンを行なっている。ボランティアで授業を行うのは、海外に留学経験のある大学生たち。レッスンを受ける子供達の顔が一様に輝いているのが、印象的だ。「あなたは将来何をしたいですか?」「私は指揮者になりたい」「私はお医者さんになりたい」。教室には今日も元気な子供達の声が響く。この英語のレッスンに毎週欠かさずやってくるのが、盲学校2年生のマー・ズーチュン(英語名:エイミー)だ。

ズーチュンは先天性の病気で視力が全くない。河北省の保定という地方都市で祖母と暮らしていたが、5歳の時に北京に出稼ぎにきていた両親の元にやってきた。祖母の家では、周囲の目を気にして、幼稚園から帰ると、家に閉じこもっていたというズーチュン。地方では、視覚障害者への偏見がいまだ強く、また盲学校の教育レベルも低い。娘の将来を危惧した両親が、比較的環境が整っている北京に呼び寄せたのだ。北京市内の盲学校に入学し、紹介されたのがNGO紅丹丹だった。そして、ズーチュンとその両親は、視覚障害を持ちながら、ラジオ局のアナウンサーになったドン・リーナーの存在を知る。「娘は必ずしもマッサージ師にならなくていいんだ。リーナーのようにアナウンサーや、声優、ピアノの調律師など、聴覚を生かした仕事をしてもいいんだ!」将来への展望が一気に開けた。

幼い頃周囲にからかわれた経験から、エイミーは今でも他人の視線に敏感だ。周りが自分のことを“笑っている”と感じ、時に感情を高ぶらせ、「私を笑わないで!」と声を荒げる
しかし、北京の盲学校に入り、週末は紅丹丹に通ううち、自分に自信を持てるようになってきた。今では学校や紅丹丹の行事で舞台に立ち、司会を務めるようにまでなった。そして、リーナーの影響を受けてか、「ピアニストになりたい」という夢を持つようになったー。

3本シリーズで中国の視覚障害者を取り巻く物語をお届けする“心目(しんもく)”シリーズ。次回は、ズーチュン憧れの
「ドン・リーナーの物語」です。

クレジット

監督・編集 商明 山本 妙
撮影 商明

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