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モンゴル遊牧民の必須アイテム「ゲル」が減少…進化により失われていく伝統文化と彼らの歴史を紹介

山内琉夢歴史プレゼンター

鳥取県にあるアジア博物館井上靖記念館の庭に設置されている「ゲル」の写真です。11世紀~12世紀ごろ、西暦では1000年~1200年代、チンギス一族によって繁栄した「モンゴル」。

世界最大級の遊牧国家として知られ、最盛期には世界最大の国土と武力を保持していたともいわれています。

そんなモンゴルは「遊牧民の国」というイメージが強いですが、現在では遊牧だけで生活をしている「遊牧民」の割合は年々減少傾向にあるのだとか。

どうしてなのか、みていきましょう。

遊牧する理由

上の写真はイメージです。2017年に隠岐の島で撮影したものです。
上の写真はイメージです。2017年に隠岐の島で撮影したものです。

昔、モンゴル国民の多くは家畜の飼育を行って生計を立てていましたが、1900年代以前は、雨量が極端に少ない乾燥地帯が原因で家畜のエサとなる農作物が入手困難だったといいます。

そのため家畜のエサを求めて1年に4回、決まった土地へ住居を移動する牧畜形態の一種「遊牧」で生活を安定させていたのです。

そして遊牧をするために必須だったアイテムが、移動できる住居「ゲル」でした。

遊牧の必須アイテム・ゲル

鳥取県にあるアジア博物館井上靖記念館の庭に設置されている「ゲル」の写真です。
鳥取県にあるアジア博物館井上靖記念館の庭に設置されている「ゲル」の写真です。

遊牧のお供である「ゲル」は、床となる木板と布、ロープを中心に作られています。

一般的な住居の場合、ゲルの大きさは直径4.5~6.5メートルほど。室内には、タンスやベッドを設置することも可能だったようです。

鳥取県にあるアジア博物館井上靖記念館の庭に設置されている「ゲル」室内の写真です。
鳥取県にあるアジア博物館井上靖記念館の庭に設置されている「ゲル」室内の写真です。

室内には水道を設置することができないため、川や池のほとりに建てて生活に必要な水を補っていました。

居住スペースは性別ごとに区切られており、入口扉から入って右側が女性と子供・左側で男性が生活していたようです。

時代の変化

鳥取県にあるアジア博物館井上靖記念館の庭に設置されている「ゲル」横の看板の写真です。
鳥取県にあるアジア博物館井上靖記念館の庭に設置されている「ゲル」横の看板の写真です。

遊牧を便利にするアイテム・ゲルを用いて、家畜の餌を求めて大移動を繰り返していた遊牧民。

しかし、現代では農作物の品種改良が進んだことで砂漠地域のような厳しい環境に対応した植物が開発されました。

そのため、遊牧の需要が低下。

現在では遊牧を行っている国民は1割程度にまで下がり、ゲルを見かけることも珍しくなっているそうです。

遊牧のために培ってきた技術と知恵、モンゴルの伝統的な文化が失われつつあるのは残念ですね。

歴史プレゼンター

歴史ライターとしての活動経験を持ち、今までに32都府県の歴史スポットを巡ってきました。実際に現地へ行くのが難しい方に向けて、取材した歴史スポットについて紹介します。また、歴史に興味をもったことがなかった方にも楽しんでいただけるよう、歴史偉人の意外な一面や好きな食事・おやつの紹介など、ワクワクするような内容をお届したいです。

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