ショートフィルム

イチロー担当の地元紙記者との交遊  14年ぶりの再会 #dearICHIRO

山崎エマ

ドキュメンタリーフィルムメーカー

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シアトルの街を訪れたのは2005年以来、14年ぶりだった。

当時の私は16歳。シアトル・タイムズでマリナーズの番記者を務めていたボブ・シャーウィンさんにメールを出したことがきっかけだった。イチロー選手の全ての記事を読み尽くすことが日課になっていたあの頃、英語で書かれた彼の記事も読んでいた。自分の現実からは程遠く、毎日イチロー本人に接しているボブさんから返事が返ってくる可能性は小さいと理解しつつも、気持ちを込めて送った一通のメール。「あなたの記事を読んでイチローさんの活躍を経験しています。いつもありがとうございます。」

ボブさんから返事が来たときは声を出して驚いたことを覚えている。その瞬間から、私の世界は広がり始めた。その秋、ボブさんが来日した際、家族でおもてなしをした。そして、そのお礼として翌年の夏にはシアトルの家に招待してもらって家族に手料理を振る舞ってもらった。さらには、記者である特権を使って、開門前の球場にも入れてもらい、試合の何時間も前に一人でイチロー選手が黙々とトレーニングする姿を、数メートルの至近距離で見学した。それはまるで映画のようだった。今も目を閉じ、その時の記憶を呼び起こせばその光景がスローモーションでプレイバックされる。私の青春時代の最も感激した瞬間の一つだった。

14年ぶりのシアトル。球場の入り口の看板はもうイチローではない。球場名でさえ、馴染みのあった「セーフコ・フィールド」から「Tモバイル・パーク」に変わっていた。

ボブさんとの再会。彼の容姿は変わっていなかったが、子供だった私は大人になっていた。14年前に手土産に渡した日本人形が部屋の一角に飾ってある。「これは宝物なんだ」と言ってくれた。当時は聞くことがなかった、ボブさんがどうして名もなき私のメールに返信し、シアトルにまで招待してくれたか、聞き始める。

「僕はまだあまり知らない日本の文化や特徴にとても興味があった。イチローがマリナーズに来てから寿司を食べるようになったり。他の日本人記者を見習ってお辞儀をするようにもなった。だから僕は返信した。あなたはイチローに対してとても情熱的できっとアメリカの文化にも興味があるんじゃないかと感じた。僕が日本の文化に興味があったように。」

考えてみると、ボブさん一家は、のちに住む国となるアメリカでの、ほぼ初めての知り合いとなった。イチローのことをもっと知りたいと思って交流をしていたボブさんは、アメリカ人の代表として、知らない国への案内人となっていたことに気づいた。そして、私もイチローとは違う立場の日本人として、ボブさんに日本文化の案内人となっていたのであれば、とても嬉しい。

ボブさんは言う。「イチロー本人はどれだけの人を鼓舞したか分かっていないかもしれない。スポーツの世界でだけでなくあなたのように全く違う分野の人も、イチローの仕事に対する取り組み方やトップになるためのビジョンを受け継いでいる。」

私はイチローから『好きなことを見つける大切さ』を学んだ。イチローにとっての『野球』となるようなものを、自分も見つけたいと思い、積極的に探し、そして『映像製作』というものを見つけた。「好きなことが見つからない」と悩む同世代の知り合い達に比べて、私は自分の全てを注ぎ、惜しみなく努力し続けたいと感じる職業を見つけて幸運と感じている。でもそれは運だけではない。イチローにそのことを教わることができた結果なのだ。
ボブさんに送った一通のメールから広がった自分の世界。『行動を起こしていけば、なんでも可能なんじゃないか。』小さい時に自らの経験に基づいて築いたその視点は、その後の自分の道に間違いなく影響を与えている。

球場の外の一角に、今年新しいイチローの写真を見つけた。他の選手の写真にはない言葉が足されている。「THANK YOU ICHIRO」。イチローがいたから今の自分がある。その理由は、語りつくせない。ただ、感謝の気持ちだけでも、届いて欲しい。

平成のヒーロー、イチローの、ファン物語。シアトル編が、次回に続きます。

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クレジット

監督・編集 山崎エマ
プロデューサー エリック・ニアリ
撮影 マイケル・クロメット
オンライン 佐藤文郎

制作 シネリック・クリエイティブ

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