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京都の和菓子文化を牽引する老舗「鶴屋吉信」さんの看板銘菓!柚子薫る求肥は止まらない美味しさ

柳谷ナオ和菓子ソムリエ・ライター

和菓子の文化は地方それぞれ実にさまざまですが、西の和の文化、和菓子の文化といえばまず思い浮かぶのは京都という方も多いのではないでしょうか。古より脈々と続いていく食文化の中でも華々しい上生菓子をはじめとする和菓子に憧れを抱き、修行に訪れる若き職人さんたちも後を絶ちません。

柚餅を愛した文人画家・富岡鉄斎作が贈った書画の面持ちを取り入れた包装
柚餅を愛した文人画家・富岡鉄斎作が贈った書画の面持ちを取り入れた包装

さて、京都の和菓子の歴史を語る上で必須ともいえる言葉が「五亀二鶴」。江戸時代以前からの老舗なのですが、現在は姿を消しその意志や流れを汲むお店となっているところも。その中で現在に至るまでその暖簾を掲げているお店のひとつ、「鶴屋吉信」さん。

歴史と合わせてぜひお召し上がりください
歴史と合わせてぜひお召し上がりください

京都のほか東京にも喫茶併設の店舗を日本橋や虎ノ門ヒルズに、販売のみのお店も関西をはじめ関西圏にも都内を中心に展開なさっているのですが、京都の本店の看板が印象的。実は暖簾には屋号が印字されているのですが、看板には150年以上愛される名物の菓銘が刻まれているのです。

今回は鶴屋吉信さんの「柚餅(ゆうもち)」をご紹介。

柚餅
柚餅

柚餅は鶴屋吉信さんの三代目によって1868年に考案されたお菓子とされています。1868年といいますと、丁度遷都により都が江戸へ移った年。新しい時代の幕開けに誕生した柚餅はその親しみやすく上品な味わいが評判を呼び、現在に至るまで多数の文化人や時の人からも愛されています。

小粒ですがたっぷりぎっしり!
小粒ですがたっぷりぎっしり!

そっとつまんでぱくりと一口で食べられるサイズなので、口紅もよれることなくいただけます
そっとつまんでぱくりと一口で食べられるサイズなので、口紅もよれることなくいただけます

そっと指先でつまめる爽やかな鶯色の求肥。たっぷり纏っているのは、徳島県産の和三盆。その和三盆に包まれているのは、滋賀県甲賀市産のブランド糯米「滋賀羽二重餅」と四国産の青柚子と黄柚子を煮詰めたジャムを合わせた求肥。唇を添えた刹那、極々わずかにさくっとした歯応えの余韻を生み出し、あとはもちもちとした粘りと柚子に負けない濃厚な糯米の旨味がじわりじわりと広がります。親指と人差し指の指先でつまめる程華奢な御菓子ながら、そのひと粒には日本の風土と特産品の魅力、個性がぎゅっと凝縮されているのです。

ほっと心和むような若草色
ほっと心和むような若草色

華美で装飾を施されたような和菓子ではございませんが、何世代にもわたって口にする人たちの心を捉えて離さないその理由は、一粒召し上がっていただければわかるはず。

開封した瞬間はあんなに沢山はいっていたのに…と頭を垂れるという流れを毎度繰り返しているような気がする私。そんな私を横目で見る娘もまた、何年か後には同じリアクションをしているのでしょうか。

<鶴屋吉信・本店>
公式サイト(外部リンク)
京都府京都市上京区今出川通堀川西入ル
075-441-0105
9時~18時
定休日 元旦・水曜

和菓子ソムリエ・ライター

■年間400種を優に超える和菓子を頂く和菓子ソムリエ&ライター。美味しさだけではなく、職人さんやお店、その土地の魅力をいかに伝えるかに重きを置いて執筆中! ■製菓衛生士免許所持・製造・販売・百貨店勤務経験有 ■和菓子・お取り寄せ・お土産・アンテナショップ・都内物産展&催事・和菓子とお酒&珈琲&ノンアルコールとのペアリングなどの執筆や取材、監修を得意としています。

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