京都の「花びら餅」を食べ比べ!求肥に牛蒡、味噌餡が織り成す優雅で美麗な老舗の拘りを大満喫
これが店頭に並ぶと、年の瀬もしくは新年へ思いを馳せるなぁというものはありますか?鏡餅や年賀状にポチ袋、お節料理のご予約案内のリーフレットにダイレクトメールなど様々ございますが、私は花びら餅が和菓子屋さんの店頭やSNSにて告知が掲載されると、もうそんな時期なんだなぁと。
花びら餅が発売される期間は、お店によっては年末から、もしくは新年最初の営業日からなど。と申しますのも、花びら餅の由来は元々お正月の宮中行事から。これには諸説ありますが、「菱葩(ひしはなびら)」というお餅から。
健康長寿や無病息災を願う歯固めの儀式の際に用いられていた、薄い丸餅に二本の押し鮎(干した鮎)を並べ、白味噌を塗って使用したもの。また、宮中に勤めている役人や警護の方々にお供えされていたお餅や野菜を配り、そこへ白味噌や野菜を包んだ包み雑煮として食べたものが原型と言われています。
いわゆる菓子ではなく、食事寄りの存在だったようですね。その後京都の老舗でもある「川端道喜」さんがお茶席の和菓子として確立させたものが徐々に広まっていったというのが有力な説のひとつ。
そこで、今回は花びら餅の発祥でもある京都の老舗和菓子屋さん三軒の「花びら餅」をご紹介。
まずは二条城から徒歩5分程度に本店を構える「二條若狭屋」さん。創業106年を迎え、夏場は寺町店のほうにて斬新かつ可愛らしいかき氷で行列を成すという様々な表情をみせてくれる和菓子屋さん。
二條若狭屋の花びら餅は、ぽってりふっくらとした見た目が印象的。そしてふと気になったのが、ちらりと垣間見えている味噌餡に、なにやら粒粒としたものを目視できるのです…。
その正体は、なんと山椒!白小豆と手亡豆の上品な味噌餡は塩気も丁度いい塩梅に効いているほか、存在感抜群のお餅の粘り気も十分。そのおかげで山椒が浮くことなく、粋なアクセントとしてピリリと効いています。
お次は「亀屋良長」さん。素材だけではなく水にも拘りを持ち、店先より湧いている「醒ヶ井水」という名水を使用して餡子を炊くなど、様々なお菓子に用いていらっしゃるとのこと。一般の方も汲んで持ち帰ることが可能という配慮も嬉しいですね。
容姿端麗な美女、というのが見た目の第一印象でした。中心の膨らみから滲む薄紅が愛らしく、春へと思いを馳せてしまいました。
もちもちとした心地よい噛み応えのお餅と柔らかな牛蒡の蜜煮が、咀嚼するたびにスムーズに混ざり合い食べやすいお菓子。卵白入りというのもあり、滑らかな餅肌です。白味噌の塩気よりも、白餡のすっきりとした甘味が引き立つような余韻でした。
最後は「千本玉寿軒」さん。四季折々の上生菓子を茶寮にていただけるだけではなく、職人さんの手捌きを目の前で堪能できるライブ感も人気のひとつ。
その「千本玉寿軒」さんの花びら餅は、とろとろとした質感が特徴の一つ。一口頬張れば、ゆっくりと流れていくような瑞々しい口溶けです。
また、牛蒡の風味も強かで、土の香りというよりは甘露煮としても甘やかな印象を、白小豆の慎ましやかな香り立ちの味噌餡がそっと縁取っているようなイメージ。
優雅な佇まいと白味噌のまろやかさは共通しているものの、それぞれの個性が別なベクトルから魅力してくるあたりは流石。優柔不断といわれればそれまでですが、いずれも甲乙つけがたい迎春の味わいでした。
<二條若狭屋・本店>
公式サイト(外部リンク)
京都市中京区二条通小川東入る西大黒町333-2
075-231-0616
8時~17時
定休日 水曜
<亀屋良長・本店>
公式サイト(外部リンク)
京都府京都市下京区四条通油小路西入柏屋町17-19
075-221-2005
9時30分~18時
定休日1月1日~3日
<千本玉寿軒・本店>
公式サイト(外部リンク)
京都府京都市上京区千本通今出川上ル上善寺町96
075-461-0796
8時30分~17時
定休日 水曜