数多に存在するといっても過言ではない、日本全国の郷土のグルメ。王道や定番から、その土地でしか出回らないものまで沢山！その食材、そして郷土の食文化を評価されるということは、非常に名誉なことなのではないでしょうか。

先日ニュースにて拝見した、滋賀県高島市の地域資源を活かした新商品のコンテスト。最高金賞に輝いた和菓子は、ひょっとしたら日本でここだけなのではないかと思う意外すぎる組み合わせのお菓子でした。

今回は、あの鮒寿しと白餡などの素材を合わせた滋賀県の和洋菓子屋「とも栄」さんのベイクド羊羹「ふなチー」をご紹介。

しっかりと封をされたわっぱの紐を解くと、鮮やかな黄金色のお菓子に映える水上船の焼き印。焼き印がなくとも立派な佇まいですが、そこからもストーリー性や拘りが伝わります。

ホールの状態で眺めても、まさにベイクドチーズケーキそのもの。爽やかな香りが立ち上りますが、魚の生臭みは皆無。

土台の部分はアーモンドプードルなどのほか、はったい粉という大麦を乾煎りして挽いたものを配合。麦焦がし、とも称され、その豊富な食物繊維と亜鉛などの栄養素から、腸活にも取り入れられる食材のひとつです。

肝心の羊羹の部分はと申しますと、とも栄さん謹製の丁寧に炊き上げられた白餡をベースに、サワークリームや生クリーム、卵、そして都内百貨店やお取り寄せでも名高い「魚治」さんの鮒寿しを合わせた生地を、独自の製法でじっくりと焼き上げていくのだとか。

爽やかで角の無い酸味はすっきりと心地よく、更にしっとりと滑らかな口当たりが奥深いコクと旨味をより一層引き立ててくれるような重厚感。上質なベイクドチーズケーキのような味わいなので、チーズを使用していない、というのがにわかには信じられません。

しかし、最後に広がる余韻は確かに乳酸発酵による特有の深い酸味。深煎りの珈琲だけではなく、自然と白ワインや日本酒が頭をよぎります。

ところどころぽりっとした食感の米粒、飯（いい）や魚肉の部分と遭遇しても変な臭みはなく、むしろちょっとラッキーな気分になるから不思議…

シックな金色の帯は高級感のある箔押し仕様。目上の方やお世話になった方へのギフトやお取り寄せ、お中元としてもちょっぴり周りに差をつけられそうですね。

お酒好きな方へのバレンタインやホワイトデー、自分へのご褒美にも重宝できそうです。

一見奇抜に思えても、長年その土地の風土共に歴史を紡ぎ、その土地の魅力を熟知しているお店だからこそ、きちんと美味しいと評判になるお菓子という「作品」になるのではないでしょうか。

まだ見ぬ琵琶湖やメタセコイア並木の景色を思い描きながら、地図アプリとふなチーで子供と楽しく過ごしていると、きっと長く愛されていく新しい歴史のお菓子になるのではないかなぁと思うのです。

最後までご覧いただきありがとうございました。

柳谷ナオ