漆黒のダイヤとも言われる「本わらび粉」が高級品と呼ばれるわけとは?仙太郎さんのわらび餅で解説します
和菓子にも和食にも欠かせない要素といえば、旬。突き刺すような暑さ寒さはなかなか悩ましいものがありますが、日本の四季が恵んでくれる旬の味覚を活かしたお料理やお菓子は、決して華美ではなくとも日常に彩を添えてくれますね。
さて、今回のテーマは「わらび餅」。
わらび餅、と聞いてパッと思い浮かぶのはどんなわらび餅でしょうか?角切りのわらび餅にきなこや抹茶を塗したもの、スプーンで掬うもの、あんこを包んだもの、はたまたドリンクや透明なタピオカのような形状のもの。わらび餅風の低カロリースイーツもスーパーやドラッグストアでみかけることがありますね。
その材料も、実は色味によって異なるのです。本来のわらび餅は、わらびの根から採取したでんぷんを洗い沈殿させたものを取り出して乾燥させた粉を練り上げて作ります。そうすると、食材本来の灰汁(といってもえぐみなどはありません)が作用し、射干玉色のような深い黒色へと変化します。
漆黒から透明に近づくほど、本わらび粉意外のでんぷんを合わせていることになります。葛粉やさつまいものでんぷんを使用したものですね。
本わらび粉は、雪が降る前の冬場(11月上旬)あたりから採取され、作業は冬に行うため厳しい環境のもと作業しなくてはなりません。
しかもわらびの根をあらって、叩いて、でんぷんを出して、洗って乾燥させて…と非常に重労働かつ作業できる期間も限られているため高級品。それゆえに、スーパーで販売されている透明なものと本わらび粉100%のわらび餅は値段にかなりの差がでてくるのです。
通年販売されているわらび餅ですが、わらびの季節に合わせてお作りなさる和菓子屋さんもあり、4月~5月で終売というところも。また、2月上旬から3月にかけて「早わらび」という意匠の練り切りをはじめとする上生菓子や、薯蕷饅頭にわらびの焼き印を施すお店も多く、和菓子の世界らしく季節は先取り。
涼やかなイメージやいわゆる和スイーツのような甘いドリンクが普及したことにより、夏にいただく涼し気なお菓子のイメージが強いわらび餅ですが、本来は春が旬。
山菜の旬と同様に、ぜひ春にわらび餅を召しあがりなが日本の四季からの贈り物、それらを美味しく仕上げてくださる農家さんや職人さんへ感謝しながら、甘いひとときをお過ごしくださいね。
今回は京都に本店をかまえる「仙太郎」さんの「本わらび」を参考にお話しさせていただきました。
最後までご覧いただきありがとうございました。
<仙太郎・本店>
公式サイト(外部リンク)
京都市下京区寺町通仏光寺上る中之町576
075-344-0700
8時~18時(時期によって変動あり)
定休日 元旦