あえて形を残したふんわり食感が独特な「くうや茶屋餅」もち米の旨味と優しいこし餡のシンプルな二重奏
忘れられない味、というのは案外単純なものであることも多いのではないかと思う今日この頃。創意工夫がなされた複雑な一皿も魅力的ですが、極々シンプルな素材だからこそ個性が発揮されるお菓子やお料理も、記憶と申しますか潜在意識の奥深くで寝息をたてながら、ふとした瞬間に目を覚ますような。
糯米と小豆餡のコンビネーションにお腹も心も和む「餅街道」でも有名な三重県伊勢市。赤福をはじめとする銘菓が揃う町で、2020年6月に惜しまれつつも幕を閉じた鈴木翠松堂さんの「くうや観助餅」。ですが、一年の時を経て2021年に鈴木観助本舗と屋号を変え、歴史をそのまま、いえ、より良いものにしていこうと誕生したお店で復活したくうや観助餅。
今回は名称を変え、バージョンアップした「くうや茶屋餅」をご紹介。
くうや茶屋餅は、糯米でこし餡を包んだ至ってシンプルな和菓子。とはいえ、その風貌はどこか印象的。ヒヨクモチという固くなりにくい糯米を蒸篭で蒸かし、その形を8割~9割ほど保ったまま使用。
そのため、糯米ひと粒ひと粒を噛みしめるたびに穏やかな旨味もじんわりと口の中に広がり、更にふわりとした空気感のおかげで非常に軽やかな食べ口に。以前は機械で製造していたそうですが、全て手作りに変更なさったとのこと。そのおかげで食感と鼻に抜けるお米の芳香がより一層際立っているのかもしれませんね。
また、北海道産小豆のこし餡もさらりとしているではありませんか。こういった包餡するとなると、やはりある程度の保形性がなければなかなか難しいところもあるかとおもいますが、大切に引き継がれてきた約130年のノウハウがあるからこそですね。
あっさりとしているのですが、口の中で糯米とひとつになることでお米の甘味とこし餡の甘味の豊かなハーモニーがうまれ、あれよあれよという間に丸ごと一つ平らげてしまうほど。
生成りの白と薄紅色、そして緑は蓬の香り引き立つちょっと大人なほろ苦さ。とはいえ、柔和な清涼感ですのでこちらもまた優しいアクセントとして頂けます。
実はこちらのくうや茶屋餅、普段は伊勢市の店舗でしか購入することができないのです。お電話とファックスでのお取り寄せも可能ですが、今回は日本橋三越本店にて開催されていた「旬味まるごと三重展」にて曜日限定で購入することができました。昨年いただいて美味しかったので、今年も…!とチャンスをうかがっておりました。
また、日本橋三越本店の目の前に暖簾を掲げる三重県のアンテナショップ「三重テラス」でも販売されることもあるそうです。
和菓子でほっと一息つくまでは、アンテナをあちこちに張っておかねばなりませんね。なんて。
最後までご覧いただきありがとうございました。
<鈴木観助本舗・伊勢二見浦本店>
公式サイト(外部リンク)
三重県伊勢市二見町茶屋537-18
0596-43-1112
9時~17時
定休日 水曜