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【東京都杉並区】荻窪ゆかりの棟方志功の企画展が10月1日(日)まで開催中。学芸員による展示解説も!

酔街草エディター・ライター(東京都杉並区)

生誕120年 棟方志功 暮らしの中の芸業(げいごう)

今年は、棟方志功(むなかた・しこう・1903ー-1975)の生誕120年にあたる。昭和26年(1951年)に疎開先だった富山県から東京の荻窪へ転居し、以後、世界的な版画家としての名声を確立していったのは周知の通りだ。

”板の生命を彫り起こす”という想いから「版画」を「板画」となぞり、自らの仕事を「芸術」ではなく「芸業(げいごう)」と称して、独自の世界観を構築した棟方志功。自分が敬愛する芸術家の中のひとりでもある。

彼の偉業は、作品としての「板画」の範疇に留まらず、本の装幀や挿絵、菓子屋の包装紙といった日々の暮らしに密着したデザインにも眼差しを向けている点にあった。

本展では、『原田忠茂写真展「アトリエの棟方志功」』と『「荻窪の家」の雪隠観音復元展示』を同時開催。棟方志功の荻窪での暮らしぶりや地元民との交流の様子を含めながら、彼の「芸業」の数々を紹介している。

国学院大学に在学当時、写真部長をしていた原田忠茂氏が、棟方志功の家に通い詰めて撮り溜めたという貴重な写真が1階フロアに展示されている。

荻窪の家には、昭和50年に72歳で亡くなるまで住んでいた。トイレに描かれた『雪隠観音(せっちんかんのん)』を、残された写真を元に実物大で復元。棟方志功は「私にはね、便所は大安心所なんですよ」と語り、暮らしていた全ての家のトイレに観音像を描いたという。

棟方志功は、筆で描く肉筆画を「倭画(やまとが)」と呼んだ。色を”塗る“のではなく「筆をほんとうに使って“かく”こと」を信念として、多くの傑作を生み出している。

棟方志功がデザインを手がけた包装紙などの展示。かつて荻窪駅前にあった「金太郎和菓子店」の包装紙は、駅前商店街のアイコンにもなっている。

棟方志功は文学者との交流も深く、谷崎潤一郎の『鍵』を手がけるなど、一躍、装幀家としても高く評価されることになった。装幀のみならず、挿絵や表紙絵、自らの執筆など関わった書籍の数は1000冊を超えるという。

「わだばゴッホになる!」と豪語していた青年が、油絵の世界からやがて版画界の鬼才と呼ばれるように・・・。眼鏡が板に付くほど顔を近づけ、一心不乱に板画を彫っていたこの姿がよく知られている。

同じく荻窪在住だった、角川書店(現・KADOKAWA グループ)の創立者である角川源義(げんよし)氏からの依頼により制作した『光明妃の柵』(昭和40~43年頃)。

JR荻窪駅の北口から天沼八幡通り沿いに10分ほど歩くと、住宅街に囲まれるように佇む天沼弁天池公園に到着する。「杉並区立郷土博物館 分館」は、その一角に位置している建物なので、すぐ分かるはずだ。

9月2日(土)に学芸員による展示解説が開催されるので、興味のある方はぜひ参加してみてはいかがだろう。①午後2時〜2時30分②午後3時〜3時30分の2回が予定されており、場所は西棟2階展示室。予約は不要とのことだ。

生誕120年 棟方志功 暮らしの中の芸業(げいごう)

会期:7月15日〜10月1日(日)まで

場所:杉並区立郷土博物館 分館

住所:東京都杉並区天沼3−23−1

電話番号:03ー5347−9801

アクセス: JR荻窪駅北口より徒歩10分

開催時間:午前9時 から 午後5時 まで

休館:月曜日、第3木曜日 *9月18日(祝)は開館し、翌19日(火)休館

観覧料:無料

企画展HP:生誕120年 棟方志功 暮らしの中の芸業(げいごう)

エディター・ライター(東京都杉並区)

中央線沿線の街並みとお酒をこよなく愛する、元・雑誌編集者です。長年に渡って杉並区の荻窪に在住。居酒屋をはじめ、グルメに関する話題・スポットを中心に、皆さんの役に立つ情報を発信して行きます。

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