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【丸亀市】答えの出ない対話「哲学対話」を体験してみよう 「思考が深まる」「成績もアップ」と評判

ちぃちぃライター(丸亀市・善通寺市)
哲学対話をイメージしたイラスト(提供)

哲学対話という言葉を聞いたことはありますか。参加者が輪になって対話し、簡単に答えの出ない「問い」(テーマ)と向き合う試みです。上下関係などのないフラットな関係で対話が進み、終了後は「気づきが得られた」「考えが深まった」という充実した気分になれるとか。丸亀市市民交流活動センターマルタスでは12月23日に、香川県立丸亀高校の時間講師、島田修作さん(ハンドルネーム・楽水)が主催する哲学対話が開かれます。

答えを出さないから面白い

「話すことが苦手でも、哲学の知識がなくても大丈夫です。何か言葉を発すると、参加者が受け止めて、その人なりの言葉というボールを投げ返してくれます。普段、深く考える時間や機会がない人も、思考を深める面白さを体験できますよ」。

哲学対話を主催する「楽水」こと島田さん
哲学対話を主催する「楽水」こと島田さん

哲学対話の魅力を島田さんに聞くと、こんな風に話してくれました。島田さんは2019年に新聞で哲学対話の存在を知り、勤務先の丸亀高校で先生や生徒とともに実践。

きっかけになったのは、こんな記事でした。東京都内の公立高校で哲学対話に取り組んだところ、「奇跡」と表現されるほど成績が著しく向上したというもの。簡単に答えが出ない哲学的な問いに仲間とともに向き合うことで、思考を深めていった経験が「考える生徒」を育て、成績アップに役立ったと考えられています。

日常に追われて一人で深く考えることが少ない大人たちにも、「答えの出ない問いを深める面白さ」を体験してほしい。そう考えた島田さんは、2023年8月から月1回のペースでマルタスを会場に、誰でも参加できる哲学対話を開催しています。

聞いているだけでもオッケー

具体的に、哲学対話はどのように進むのでしょう。「何を言ってもいい」「人の発言に否定的な態度をとらない」「知識ではなく、経験に基づいて話す」など、8つのルール(東京大学の梶谷真司教授による)に基づいて進行されます。その中に、「聞いているだけでもいい」という項目があるので、話すことが苦手な人も安心してください。

ホワイトボードに哲学対話で「話したいテーマ」が並ぶ(提供)
ホワイトボードに哲学対話で「話したいテーマ」が並ぶ(提供)

とはいえ、初対面のメンバーの前で発言するのは少しハードルが高いと思われます。最初に参加者の気持ちをほぐすため、簡単な質問ゲームで発言できる雰囲気を醸成。そして、いよいよ本題に。

参加者全員から対話してみたいテーマを2つずつ募り、多数決で1つのテーマに絞ります。例えば、ある日の参加者からは「幸せってなに?」「時間はどうして大切なの?」「今と将来のどちらが重要か」などが並びました。話したいテーマが思い浮かばない人も、専用のカードを使って好きな「問い」を探すことができます。

対話中は、コミュニティボールと呼ばれる毛糸のボールを持っている人だけが発言。これも大事なルールなので、他の参加者はじっくり耳を傾けます。途中で発言をさえぎられてしまうことはないので、安心して話したいことを話してみましょう。

これがコミュニティボール。島田さんは「フワフワしているので安心できるんです」。(提供)
これがコミュニティボール。島田さんは「フワフワしているので安心できるんです」。(提供)

モヤモヤから思考が深まる

「なぜ出る杭は打たれるのか」というテーマで対話した時は、「変化を嫌う社会では、出る杭は嫌われるのだろう」「今は変化の時代だから、むしろ出る杭が歓迎されるのではないか」という具合にテーマを深めていきました。参加者が思いがけない体験談を話してくれたり、子育ての話題に広がったりしながら、島田さんにも予想できない展開で60分程度の対話を終えました。

しっかりテーマを深めることは目指しても、「答え」や「結論」は出しません。「対話の中で、どれほど素晴らしい発言があっても、哲学対話はそこで終わりません。答えが出たらそれ以上は考えなくなるので、あえて答えを出さないんですよ」と島田さん。

円形に椅子を並べて、哲学対話が進みます(提供)
円形に椅子を並べて、哲学対話が進みます(提供)

島田さんは教師として「(教科という枠組みの中にある)『答え』を教える」という経験が長かったこともあり、あえて答えを出さない哲学対話の楽しさや奥深さに魅了されたそうです。哲学対話では「なるほど」「そんな考え方もあるのか」という具合に、参加者の発言から気づきを得られる場面の連続。島田さん一人では到達しないところに思考が及んでいく過程が、「とても楽しい」と話していました。

「何気なく普段考えていることを言葉にするのは、意外と難しいんです。言葉にして初めて、自分の考えと出あうことができ、自分を発見する時間にもなります」

「哲学対話を終えると、気づきが多い一方でモヤモヤが残ることもあります。でも、言葉にならないモヤモヤを一人で考えてみると、みんなで対話する前には考えもしなかった言葉が浮かんだりするので何度やっても飽きません」

哲学対話の面白さを語る島田さんは、とても楽しそうでした。

2024年3月までのスケジュール

12月23日以降も2024年の開催日程が3月まで決まっているので、一度体験してみてはいかがでしょう。

1月27日午前10時から正午(会場・マルタス2階のルーム3)▼2月18日午後2時半から午後4時半(会場・同2階のルーム2)▼3月9日午後2時から4時(会場・同2階のルーム2)。

ところで、丸亀高校でも哲学対話に取り組んで成績がアップしたのか聞いてみました。はっきりした因果関係は不明ながらも、「成績が上がった生徒もいます」とのこと。高校生だけでなく、大人にとっても頭脳が活性化する体験が期待できそうですね。

会場のマルタス
会場のマルタス

基本情報
名称 : 楽水さんと哲学対話
住所 : 香川県丸亀市大手町2丁目4-11 市民交流活動センターマルタス

アクセス : JR丸亀駅から車で5分程度(駐車場あり)
開催日時 : 12月23日午後2時から午後4時
場所 : マルタス2階のルーム2
参加費 : 500円、高校生は無料(予約不要、定員20人)

問い合わせ : p4u.rakusui@gmail.com(楽水)

ライター(丸亀市・善通寺市)

ヘルシーなごはん、そして、雰囲気を含めた「心地よい食体験」が大好きです。時には、知的な発信も手がけたいと思っています。香川県丸亀市・善通寺市での時間を楽しんでいただけたら嬉しいです。

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