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【目黒区】メタバースでお墓参り!? 「霊柩車と銭湯の不思議な関係 vol.2」後編

Chikuwa地域ニュースサイト号外NETライター(東京都目黒区)

自由が丘にある銭湯「みどり湯」は、これまでもユニークなイベントを仕掛けてきました。今回は、2022年11月にリニューアルしたばかりのロビーとお風呂の脱衣場を使って2023年2月23日(木・祝)にトークショーを開催。

葬儀社エンディングビジネスコンサルタント・増井康高さんが登壇
葬儀社エンディングビジネスコンサルタント・増井康高さんが登壇

「霊柩車と銭湯の不思議な関係vol.2」と題しまして、庶民文化研究家・銭湯研究家の町田忍さんと葬儀社エンディングビジネスコンサルタント・増井康高さんが登壇し、大変貴重なお話をうかがうことができました。

前編では町田さんが長年研究してきた「霊柩車」と銭湯との共通点についてご紹介。

後編では、増井さんによるメタバースを使った、故人との対話を楽しむ未来の墓参りのカタチについてのお話をご紹介していきましょう。

葬儀社エンディングビジネスをトータルにサポートしている増井康高さん

増井康高さんは葬儀社が抱える経営の悩みやエンディングビジネスでのマッチングサービス、DX化などをトータルにサポートされています。

実は増井康高さん、2022年11月にみどり湯で「増井生前納棺式」というクローズドイベントを開催。今回のトークショーで登壇されたのもそのときのご縁がきっかけでした。

納棺式とは、亡くなった方を棺桶に納める際に行われる儀式のことで、身なりを整え、故人が愛用していたものを一緒に納めるなど、旅立ちの準備を整えること。「生前納棺式」は実際に納棺師の方にご協力いただき、本番さながらの納棺式を行うというものです。

今回はそんな増井さんが現在手掛けているメタバースの世界を使った、デジタル故人との交流や未来のお墓参りについてのお話をおうかがいすることができました。

このところよく耳にするのは、後継ぎがいないお墓問題。かく言う私も「墓じまいをする場合はどうしたらいい?」と親から相談を受けたばかりです。

海外では土葬が一般的ですが、日本では火葬が主流。先祖代々のお墓を引き継ぎ、家族が守っていくというのがこれまでのスタイルでした。

しかし、現代では少子化が進み、お墓を引き継ぐ子どもがいないというケースも多いですよね。また、自宅から遠い場所にお墓があり、年齢を重ねるたびにお参りが厳しくなってきたという方も。

墓じまいをしてロッカー式の納骨堂に切り替える、合祀する、散骨するなど、さまざまな選択をするご家族が増えているようです。

これからのお墓参りはリモートで?! メタバースを使い、亡くなった方といつでも会える時代が来る

一般の方のお墓は家族や知人などがお墓参りするだけですが、芸能人や有名人のお墓へは一般の方もお参りするということがよくあること。

また、芸能人の方のブログやSNSは、亡くなった後もコメントを寄せる、アカウントに書き込みをする方が絶えません。また、追悼サイトを立ち上げてファンの方々で守り続けるということもよくあるケースです。

まさにSNSなどが墓標代わりとなり、永代供養の役割を果たしていくわけです。

一般の方も同じようにインターネットを使って、故人といつでも会える空間を作れたら、と考えた増井さん。メタバース(仮想空間)にデジタルで故人を構築して、亡くなった後にいつでも会えて、対話までできる仕組みを作るというチャレンジを行っています。

死んだ後もその人の趣味・嗜好や考え方など、さまざまなデータを蓄積しておけば、故人と普通に会話や相談までできるといういわけです。

デジタルデータに資産価値を持たせることができる時代に

最近では、NFT(偽造できない鑑定書・所有証明書付きのデジタルデータのこと)の仕組みを使い、デジタルデータに固有の価値を持たせることができるようになってきました。

ビットコインを動かすために開発された技術「ブロックチェーン(同じデータを複数の場所に分散して管理する)」上で安全に取引することが可能です。

こういった仕組みをうまく活用すれば、今後は死んだ後のために、さまざまなデジタルデータを蓄積しておいて、家族に残すことができる。家族もいつでも故人に会えて、話もできる。

まるで映画やドラマの中の世界のこと、と思ってきた未来がもうすぐそこまで来ています。そして、新しい供養のカタチとして、これからは普通になっていくのかもしれませんね。

ご葬儀もSDGsの時代、CO2を削減するための工夫が続々

今回のワークショップでは、紙製(トライウォール)で作られたお棺、オルタナスタイルのecoffin(エコフィン)の展示も行われました。段ボールと同じように古紙として回収され、リサイクルが可能な素材。

高度な印刷技術を使い、オーク調の木目を印刷し、見た目も本物の木材と変わらない印象で、紙だと聞いてびっくりしました。

通常お棺に使われる合板よりも、約50%の燃焼時間で済むのでCO2排出量を削減することができます。また、1棺使用するごとに1本、モンゴルに植林が行われるとのこと。

ご葬儀でもSDGsに貢献という視点、これからの時代に必要な選択かもしれません。

コーヒーブレイクが大盛況、九品仏のカフェ「nonohito(ノノヒト)」のポップアップ

「nonohito」のオーナー・岡本野人さん
「nonohito」のオーナー・岡本野人さん

今回のワークショップで、おいしいコーヒーとお菓子、クラフトビールを提供してくれた九品仏にあるカフェ「nonohito(ノノヒト)」。

オーナーの岡本野人(なおと)さんは、オーガニックや自然食、ナチュールワインなどにこだわったカフェメニューを提供。コーヒー豆はオリジナルブレンドで、焙煎もご自身で行っています。

実は「みどり湯」のオーナーである清水さんから、ポップアップに協力してくれるカフェを探しているという相談を受け、私がご紹介したというご縁でした。

「nonohito(ノノヒト)」オリジナルのまぜそばは絶品。また、オーナーの岡本さんが夏限定で提供しているソフトクリームがおいしくて、家族で通い詰めているお店です。

お水にもこだわりがあり、エナジック社の還元水を使用。野菜をたっぷりと食べられるのところが女性にも人気です。

ワークショップでは、すっきりとした後味と香り豊かなおいしいコーヒーとともに手作りスイーツ(バナナケーキもしくはマドレーヌ)を提供していました。

あっという間にコーヒーが売り切れてしまったので、クラフトビールにします。

黄桜の「ラッキーキャット」と「悪魔のビール」、そしておつまみにはお店で出しているラーメンの麺を使ったオリジナルスナックです。パリパリに揚げた麺には、隠し味としてシナモンを効かせてあり、これがビールに合います!

ワークショップの前後や休憩時間に、登壇者や参加者の皆さんと飲み物を片手に和気あいあい、おしゃべりを楽しめて素敵なひとときでした。

生まれた時には産湯につかり、亡くなる時は湯灌する、お風呂は日本人にとって大切な存在

最初に「みどり湯」オーナー・清水さんから今回のワークショップのテーマをうかがった時、「なぜ銭湯でご葬儀や霊柩車の話!?」と思いましたが、参加して納得できました。

人は生まれた時に産湯につかり、亡くなるときは湯灌します。湯灌とは、納棺前に故人のご遺体をぬるま湯で洗い清めることで、穢れを払い、煩悩などを洗い流す意味を込めた儀式なのだそうです。

そして、ご遺体を運ぶ霊柩車と銭湯、遊郭、神社仏閣との共通点。すべてが極楽浄土へとつながる入口という町田忍さんの解釈は目からうろこです。

昔から、ご近所のコミュニティとして機能してきた銭湯。アートや知的好奇心を刺激するイベントが楽しめる、これからの新しいコミュニティとして地元と関わり合っていこうとチャレンジする「みどり湯」の心意気が感じられるワークショップでした。

これからもさまざまなワークショップやポップアップを仕掛けていくとのことなので、ぜひ皆さんもお風呂に入りに行くだけではなく、こういったイベントにも気軽に足を運んでみてはいかがでしょうか。

■取材協力

みどり湯増井康高さん九品仏「nonohito」

地域ニュースサイト号外NETライター(東京都目黒区)

コピーライターからWebライターへ転身。アロマセラピスト・整体師としても時々活動しています。趣味はカンフー(八卦掌・長拳)と古代史。目黒区の魅力やおもしろいところを発信していきます。取り上げて欲しい目黒の穴場や情報もぜひお寄せください!

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