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【日光市】ヘルマン・ヘッセ 昆虫展!ヘッセの名文とヘッセの愛した蝶のコラボレーション

フルリーナYocトラベル・グルメライター/音楽講師/作詞家(日光市・鹿沼市)

道の駅日光・船村徹記念館 1階展示スペースで、「ヘルマン・ヘッセ 昆虫展」が開催されています。中学校の国語の教科書に掲載されているヘルマン・ヘッセの『少年の日の思い出』などに登場する蝶の標本や、ヘッセの作品と”蝶”をコラボレーションした美しい作品、ヘッセ直筆の水彩画のカレンダーも展示されています。ヘッセが43年間過ごしたスイス・モンタニョーラでも開催され,日本全国を巡回し好評を博している見どころ満載の展覧会、ヘッセ好き、昆虫好き、蝶好きの人はもとより、たくさんの人に見ていただきたい展覧会です。

蝶を愛したヘルマンヘッセ

1877年にドイツ南部のカルフに生まれたヘルマン・ヘッセは、蝶類を生涯にわたって愛した作家。ヘッセの詩歌や散文作品の中には、蝶の煌めき消えていく生命のはかなさと神秘を描いたものが数多く存在します。

ヘッセゆかりの地でも好評を博した「ヘルマン・ヘッセ 昆虫展」

そのヘッセの作品と作品に登場する蝶の標本をコラボレーションした作品を展示している展覧会が、2023年11月1日~2024年1月31日まで、道の駅日光 日光街道ニコニコ本陣 船村徹記念館1階展示スペースで開催されています。

この「昆虫展」は、人文科学の観点からの展示となっており、ヘッセの詩歌や散文詩と蝶類の標本をコラボレーションした作品が展示されています。蝶や蛾の標本は、ヘッセの故郷ドイツや、ヘッセ終焉の地スイスなどから取り寄せたものを使っています。まるでヘッセの文章から蝶が飛び出してきたかのような作品は、心の深いところに、様々な思いを与えてくれるでしょう。

展示はその他にも、ヘッセの手書きの水彩画、手書きの水彩画が掲載されたカレンダー、中学の国語教科書に採用されている『少年の日の思い出』に登場するクジャクヤママユ、『少年の日の思い出』に登場する場面を具象化した作品など、多岐にわたります。

ヘッセの文章とヘッセの水彩画と昆虫標本を融合・具象化した「ヘルマン・ヘッセ 昆虫展」は2010年ヘッセの生まれ故郷 ドイツ・カルフ市の「ヘルマン・ヘッセ博物館」で開催され、その後、ヘッセ終焉の地スイス モンタニョーラの「ヘッセ博物館」をはじめ、海外や日本全国各地で開催されてきました。

今回開催されている「ヘルマンヘッセ 昆虫展」は「ヘッセ博物館」などで開催された時と同じ展示。ヘッセの孫やヘッセ研究家からも絶賛された展示を、そのまま日光で見ることができます。

ヘッセの名文を生き生きと彩る数々の蝶。その作品に登場する蝶が組み合わされているため、ヘッセの文章がより鮮やかに心に響きます。

中学の教科書掲載の『少年の日の思い出』を具象化した展示も

この展覧会の大きな見どころのひとつが『少年の日の思い出』の場面を具象化した展示。

『少年の日の思い出』は、長年、中学の国語の教科書に採用されているヘッセの短編小説ですが、実はこの作品、ドイツではあまり知られていません。

この作品は、ミュンヘンの雑誌《青年》に発表した『Das Nachtpfauenauge(クジャクヤママユ)』をヘッセが20年後の1931年に改稿したもので、ドイツの地方新聞に『Jugendgedenken』の題で掲載されました。

この小説が世に出ることになったのは、ヘッセとドイツ文学者・高橋健二氏との交流がきっかけになっています。高橋氏は1931年にヘッセを訪問した際、帰り際にヘッセ自身より『Jugendgedenken』が載った新聞の切り抜きを手渡されました。後にこの短編小説は高橋氏によって翻訳され、『少年の日の思い出』として日本で出版、1947年から現在まで中学の国定教科書に掲載されています。

高橋氏に新聞の切り抜きを渡したため、ヘッセの手元には『Jugendgedenken』が残っておらず、そのため、ドイツではあまり知られていない作品となっています。

後にこの新聞は千葉県の山之内英明氏が、ヴュルツブルクの地方新聞社・マインポストのマイクロフィルムから見出しました。この新聞のコピーが日本にあるということを突き止めたのは、当時栃木県庁職員として働かれていた日光市在住の新部公亮氏。その後、新部さんはこの昆虫展を制作・運営し、現在はとちぎ昆虫愛好会の幹事を務めておられます。

さらに新部さんは昆虫展の監修者である東洋大学名誉教授・岡田朝雄氏とともに、蝶の研究家・木下總一郎氏が入手した標本の中にあったヘッセ採集らしき標本が、確かにヘッセ自身による採集品であることも証明しました。

昆虫展に展示されている、ヘッセの文章と蝶の標本を組み合わせた作品は、これらの大きな発見の立役者である新部さん自らが、企画・制作しています。

ヘッセ直筆の水彩画やカレンダーも展示!

こちらはヘルマンヘッセ直筆の水彩画のカレンダー。写真左上の2013年4月分に採用された「Agno See」と題された水彩画は、広島県在住の方が所有しているヘッセの直筆水彩画。

ヘッセが絵を描き始めたのは、精神的危機に陥っていた40歳の頃。心理療法の一つとして絵を描き始め、スイス ティチーノ州(テッシン)モンタニョーラに移住します。スイス南麓の村の美しい風景や自然は、ヘッセの心を癒していきます。「ヘルマンヘッセ 昆虫展」では、ヘッセが愛した風景を描いた手書きの水彩画もアルバムの写真で見られます。

こちらはヘッセの文・字・絵による寓話『ピクトールの変身』。

さらにヘッセと往復書簡を交わしたトーマス・マンとの写真や、ヘッセ詩集を翻訳した尾崎喜八がヘッセにあてたフランス語で書かれたファンレターなども展示されています。

「ヘルマン・ヘッセ 昆虫展」は、2023年11月1日から2024年1月31日まで、道の駅日光 日光街道ニコニコ本陣 船村徹記念館 1階展示スペースにて開催中です。道の駅 日光街道ニコニコ本陣には、日光や栃木県下のおいしい商品、地物の新鮮野菜なども販売されており、ショッピングやグルメも楽しめるので、ぜひ併せてお楽しみください。

「ヘルマン・ヘッセ 昆虫展」~少年の日の思い出~
開催場所:道の駅日光 日光街道ニコニコ本陣 船村徹記念館 1階展示スペース
入場料:無料
開催期間:2023年11月1日(水)~2024年1月31日(水)
開館時間:9:00~17:00 (最終入館16:30)
定休日:毎週火曜・年末年始
HP:リンクはこちら

トラベル・グルメライター/音楽講師/作詞家(日光市・鹿沼市)

自然と美味しいものが大好きな食いしん坊。宇都宮在住ですが、ばばちゃまをのせた車いすを押して、大好きな日光&鹿沼あたりにあちこち出没しています。Yahooエキスパート、たびハピ、日光市公式観WEB日光旅ナビ、いちご大学などに寄稿しています。

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