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ひとつの道具で心が豊かになる!「コノヒノ道具店」のアンティーク調カトラリー【高松市】

原田伸一ガーカガワ編集部(高松市)

たったひとつの道具で心が豊かになる。そんな「いいもの」を見つけに高松市鬼無町にある「コノヒノ道具店」のアトリエにお邪魔しました。

テーブルの「かわいい」と「美味しい」を支える小さな脇役たちを作る「コノヒノ道具店」

年季の入った倉庫を改装したアトリエにお邪魔すると、個展でも開かれているのかと思うほどのアーティスティックな空間が広がっていました。

テーブルに並べられたカトラリーはアンティークというより、どこかの古墳から出土したかのような別の文明の道具のような気もする、ちょっと不思議な意匠です。

一見古いものに見えるこれらのカトラリーは、実はこちらのアトリエで1本1本手作りで制作されたもの。

そう言われると、1本1本風合いが微妙に違っていて、まったく同じものがひとつもない。道具というよりアート作品と言ってしまってもいいくらい、何か心に訴えてくるものを感じます。

このアトリエを切り盛りするのが、代表であり、カトラリー作家の樫原ヒロさん。
東かがわ市に生まれ、幼少のころは、手袋職人である祖父がモノ作りに取り組む姿を見ながら育ったそうです。

10代後半から独学でシルバーアクセサリーや洋服、革製品などをハンドメイドで制作していたそうですが、このカトラリーを作るきっかけとなったのは奥様の存在だと言います。
料理好きな奥様は食器やカトラリーを集めるのが好きなんだそうですが、デザインは可愛くても使いにくそうにしているものもあって、「見た目と使いやすさの両方を持った、妻が喜ぶようなカトラリーを作ろう」 と思ったそうです。

「作品」ではなく実用性のある道具としてこだわるのは、これまでアクセリーなど体に触れるものを作ってきたからなのか。手に触れるものだから、使うときの感触や重さなどのバランスも考えたと言います。

実際に制作している工房も見せていただきました。

スタッフさんが作業されていたのが面取りという工程。手に触れるものなので、金属の角をサンドペーパーで丁寧に落としていきます。

お話を聞きながら作業を拝見していましたが、1本1本すごく時間をかけて仕上げています。これだと量産は難しいけど、手に取った感触がまったく違うと思います。

そして次に見せていただいたのが焼付作業。

素材は真鍮だそうで、焼付のあとのコーティングはあえてしないそうです。これにより独特なアンティーク調の風合いや、使い込むほどに個性が出てくるカトラリーに仕上がるそうです。

例えばフォーク1本を取っても、人によって柄の持つ位置や持ち方は違ってきます。使い込まれていくうちに、その部分の色合いなどが変わっていき、さらに愛着が深まってくる「育てるカトラリー」なんだそうです。

アトリエには何種類かのコンセプトに分かれたカトラリーも展示されていました。

こちらは、「ジュテ(jute)」と名付けられたシリーズ。
juteとはバレエダンサーが足を横に蹴って飛ぶジャンプのこと。繊細で緊張感のある軽やかな躍動をシンプルな形に込めたものだそう。

まるで中世ヨーロッパの武器のような印象ですが、素朴でシンプルなんだけど外に伸びる曲線が力強くセクシーでもあり、道具美みたいなものを感じます。

そしてこちらは「トゥルペ(Tulpe)」という愛らしいシリーズ。
春に咲くチューリップの花をイメージして作られたもので、ケーキやデザートなどをいただく際にちょうど良いサイズのカトラリーです。

見ているだけでクスッと笑みがこぼれてきそうな愛らしい意匠です。ケーキと一緒に出てきたら、それだけで会話が弾みそうですよね。

他にも僕の琴線に触れるような「いいもの感」あふれるカトラリーがたくさん展示されていました。
ひとつひとつ丁寧に使う人のことを考えて作られたカトラリー。お気に入りの食器と一緒に長く大切に使いたくなる逸品ばかりでした。

こちらのカトラリーは今のところ、不定期に開催される完全予約制のオープンアトリエと、オンラインショップ、販売会などで購入することができます。あまり数を作ることができない関係でSOLD OUTも多いので、まめに公式webサイトを確認されることをおすすめします。

コノヒノ道具店
香川県高松市鬼無町藤井653-2
Email:hello@konohino.com

ガーカガワ編集部(高松市)

香川のあれこれweb「ガーカガワ」編集長。カメラ片手に香川県内を飛び回るフォト&ライター。グルメや観光などの定番記事のほか、地元の人やモデルなどを積極的に活用する人肌感のある記事が得意です。明太子は心の友。

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