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WEB予約の入力ミスでレストランを【無断キャンセル】してしまった!青ざめた顧客に店側がとった対応とは

樋口智香子マナー・コミュニケーション講師

飲食店への「無断キャンセル」が、業界に深刻な被害をもたらしています。
事前に予約をしたにもかかわらず、当日、来店しないことを「無断キャンセル」といいます。
無断キャンセルによる被害は、得られるはずだった売上、人件費、食材費などの金銭面はもちろんのこと、準備をして待っていた店側スタッフの心にも、大きな痛手をもたらします。

無断キャンセルが起きる原因のひとつに、予約サイトの普及があります。WEBから必要情報を入力するだけで、手軽に予約ができる一方、入力ミスによるトラブルが起きることもあります。
この記事では、WEB予約の入力ミスでレストランの無断キャンセルをしてしまった顧客と、店側がとった対応、実際のエピソードをご紹介します。

A子さん(40代・自営業)は、久しぶりに会う友人と2人、ディナーをすることにしました。
レストランは、A子さんが何度か通ったことのある、お気に入りのイタリアンにしました。
予約サイトから、ディナーの予約を完了。あとは、当日を待つばかりで、楽しみにしていました。

ところが、仕事を終えて自宅で過ごしていたある夜、このレストランから電話がかかってきました。

「本日、2名でご予約をいただいておりましたが、お越しにならないようなのでご連絡をいたいました・・・。」

A子さんは、この電話に青ざめました。そう、WEBの入力ミスにより、本来行こうとしていた日時と違う日で、予約をしてしまっていたのです。

A子さんは、平謝りしました。
別な日時で行こうとしていたこと、入力を間違えたあげく、そのことに気づけなかったことを深く詫びました。これに対し、店側は「かしこまりました。では、改めて〇月〇日へのご予約に変更いたします。」と答え、この日のやりとりは終わりました。

予約変更を受けてもらったものの、シェフやスタッフの方々のことを思うと、A子さんの心は激しく痛みました。何度か利用したお気に入りのお店だっただけに、尚更です。
改めて、予約サイトのキャンセルポリシーを確認すると「当日キャンセル料 100%」とありました。

当日、A子さんは、事前にキャンセル料を用意して出かけました。
金額は、予約していたコース料理の金額×2名分+10000円ほど。2人で飲み物をオーダーすれば、だいたいそのくらいになるだろうと予測してのことでした。

入店後、いつもどおりに出迎えてくれたホールスタッフに、封筒に入れたキャンセル料を渡しました。同行した友人に気を遣わせないよう、小声で「先日は、ご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした。こちら、キャンセル料です。」と、重ねてお詫びをしました。

その後のディナーは、いつもどおりの心地よいサービスと、美味しい料理を楽しむ時間となりました。
食事代は、A子さんが友人へご馳走しました。
金額を見たときに「思ったよりも安い」と思ったものの、もしかしたら、何らかの配慮をしてくれたのかもしれないと察し、会計を終えて店を出ました。お見送りの接客も、普段どおりの心地よいもので、改めて「迷惑をかけてしまって申し訳なかった。とてもいいお店。ぜひ、また利用したい」と思ったのでした。

帰宅後、改めて金額を確認すると、やはり明らかに安いのです。領収証をお願いしてしまったために、明細は書かれていなかったものの、料理のコース代金だけで、飲み物代は含まれていない金額だと思いました。
おそらく、キャンセル料の規定よりも少し余分に支払ったぶん、店側が配慮してくださったのでしょう。A子さんは、この対応にとても感動し、またお友達を誘ったり、いいお店だと紹介しようと思ったのでした。

いかがでしょうか。
このエピソードには、賛否両論あるかもしれません。A子さんの不注意への非難や、会計時に何らかの申し出をすべきだったという考え方もあるでしょう。
しかし私は、何も言わずに互いの思いを察しあったこのエピソードに、どこか心あたたまるものを感じました。

どのような理由であれ、無断キャンセルは絶対にあってはならないことです。
予約サイトという便利なツールがあれど、その先にいるのは「人」です。顧客としてサービスを受けるときは、そのことを常に念頭におき、責任を持つことが大切です。また「お店を利用させていただく」という、感謝と敬意を持っていたいものですね。

マナー・コミュニケーション講師
アカデミー・なないろスタイル 樋口智香子

マナー・コミュニケーション講師

マナー・コミュニケーション研修講師。千葉県出身、元資生堂ビューティコンサルタント。NLP心理学とマナーをかけ合わせた独自のプログラムにより、セミナー・研修を実施。全国250か所から招致され、指導人数は延べ20000人以上。セミナー・研修の他、書籍の出版、コラム執筆、雑誌記事や教材監修など幅広く活動中。

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