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精肉店がなぜお洒落?ジビエ×洋服で産み出す最先端のサイクルとは【神戸市・ハイカラブルバード】

Hinata Yoshioka旅するフォト&ライター(神戸市)

ジビエの美味しさは特徴深く、そして決まりきった味ではありません。狩猟で得た野生の肉だからこそ環境や食べ物、年齢や雌雄の違いでお肉の風味なども変わってくるもの。それだけにジビエを楽しめるのは上級者のようなイメージもあります。

そういった感覚をガラリと変えてくれるお店が、ジビエ精肉店の「ハイカラブルバード」。外観もとてもお洒落で、まさかここがお肉屋さんだとは思えないような装いです。ちょっと海外感のあるマルシェ的な感じかも。

まるでセレクトショップに入ったかのような感覚でお肉選びを楽しめる店内。鹿肉や猪肉のひとつずつが既にパッキングされていて、部位も他では見かけないような珍しいものなど種類も豊富です。

お客さんも様々で、料理人もいればお洒落な紳士など、街中の精肉店とは少し違った雰囲気も見受けられます。子連れのお客さんが来た時に子供が飽きないようにと、壁のスクリーンには可愛らしい海外アニメも。

家庭で簡単に使えるスライス肉から料理人が欲しがる塊のままの肉などもあるのですが、例えば焼いたり煮たりなど、どんな料理にどんな部位を使えばいいのかなど分からないこともありますよね。そういった不安には店長の入舩さんが丁寧に答えてくれます。

入舩さんはオーナーでもありながら、このお肉の解体から販売までのひと通りに常に関わっていて、自らが主体となって動いています。だからこそジビエ肉の持つ特徴を理解できる上、接客で得られるお客さん目線の要望なども知っています。

「お客さんが求めているお肉のサイズ感や状態などで提供できるようにと思って。」初めて出会うジビエ肉を、とりあえずちょっとだけ試してみたいという要望にも応えられるように、塊肉でもひとり用程の100gをきった小さなパック等もあります。

ロース、モモ、バラ、ミンチからスネ、ハツ、タンまであり、精肉してから急速冷凍しているものは臭みはほとんど無く、氷水でゆっくり解凍すればドリップもほぼ出ずに美味しいまま頂けるそう。

ジビエを家庭で簡単に食べられるようになれば…元々は害獣駆除のために捕獲され捨てられていた鹿をどうやったら無駄にせずに循環していけるかという事に、20年程前から取り組んでいるというから驚きです。

そう、このお店がお洒落なのには訳があるのです。私が3年程前にこのお店に来た時、ここは洋服屋さんでした。鹿の皮や角を使った、デザイナブルな洋服や小物などが並べられたオリジナルブランドのお店だったのです。

そして何年か後に通りかかるとそこが精肉屋さんに。理由を聞くと、以前の洋服屋さんは大阪梅田と神戸の阪急百貨店内に移店したとか。洋服とお肉?という疑問の答えは、入舩さんの会社が持つ「循環」という大きな理念にありました。

この何年かで注目されるようになったジビエですが、入舩さんが10年程前に東京で出店した時は相手にもされなかったそう。私財を投げ売り、時間をかけてようやくここまで来れた…それは簡単なことではなかったと当時を振り返ります。

野生のものを流通させる大変さ、常にある訳ではなく物が入らない可能性や、あっても売れるか分からないものを冷凍庫を準備して大量ストックする費用のリスクなどきりがありません。

「これは生きもの相手の、覚悟がいる仕事。獲る人や捌く(さばく)人、売る人や買う人、そんな全てがあって初めて循環を作り出すことができる。それを皆んなでやっていく為の仕組み作りをしています」と入舩さん。

アパレル出身の入舩さんには、日本でこの先100年続くようなブランドを作りたいという想いがあります。「それは夢のような遠い世界だけれど。ただ洋服作りをやるだけでなく、循環しながら、関わる人達に喜ばれるようなやり方でやっていけたら。」

洋服を作ることもお肉を売ることも、ここではひと繋がりのこと。皆さんも美味しくお肉を食べながら、そんな素敵な循環に参加してみませんか?

ハイカラブルバードジビエ精肉店

旅するフォト&ライター(神戸市)

旅なしに人生は語れない、ノマド系フォトライター。国内から世界各国まであちこち歩きまわって取材する、体当たりレポートを得意とする。趣味は美味しいもの食べ歩き、料理、音楽、ダンス、ものづくり、イベント企画などなど、気になる物には何でも手を出してしまう。南国気質で、とにかくマイペースな自由人。

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