湊川にある、長い商店街通りをご存知でしょうか。ここには大小いくつかの商店街が続く一帯があります。

歩くだけで元気が出てくるような賑やかで活力ある商店街は、今ではもう珍しい存在なのかもしれません。先日、ふらりと散策してきたのでご紹介しますね。

湊川公園のすぐ近くにある「東山商店街」。細い通りを入っていくとまず目に入ったのが、洋服屋さんでズボンを引っ張り品定めしているおばあちゃん達の元気な姿。

狭い通り道は混雑していて、山積みされた焼鳥や、焼売、ぶたまんなどが並んでいる店頭屋台が続きます。この通り沿いは買い食い天国らしく、たい焼きやたこ焼きまで、とにかく品数豊富に揃っていて充実した様子。

通りがてら強烈なビジュアルに二度見してしまったのは豚頭煮込み、豚首骨、豚心臓が並ぶ中国物産店の店頭です。そのままの姿形がなんともダイナミック。

中国人の店主さんと話しているうちに、未知の食材も食べてみたいと思うようになるから不思議です。「ウチは土曜日の手作り揚げパンも人気だよ〜」と教えてくれました。

長い商店街を進みます。鮮魚店だと思って覗き込んで見たらあれもこれも全部、貝。「何でこんなに貝の種類が多いの？」と聞くと「ウチは貝専門店やから」と笑われました。七海水産は開業42年、ここに来てからは11年経つそう。

サザエやアワビなどの姿もあります。「あれっ、ここにおった貝がおらん」と、店員さん。お客さんも皆で探して、他のカゴに脱走した貝を見つけて笑うといったハプニングも面白い。商店街っていいなぁって思うひとコマでした。

どんどん商店街を進むと、何やらマシーンが回っているのを発見。看板には「サキイカ」の文字が。イカを裁断しているマシーンを見ていると、お店のおっちゃんが「食べるか？」と。うんうんと頷いた私の手に、出来立てのサキイカを乗せてくれました。

香ばしい〜！なんでこんなに香ばしいのだろうと奥を覗き込むと、ぺたんこになっているイカを焼き器のようなもので焼いて、そのまま熱々をマシーンに入れていました。楽し珍し商店街めぐり。

ここに来ると、いつも立ち寄るのが鼻知場商店。筒状のガラスケースに「レモン水」と「冷やしあめ」が入っています。キンキンに冷えたのを、小さなコップでキュッと飲み干すのがいいんです。

この日、冷やしあめのガラスケースにガムテープが貼られて補強されていました。店主のおじいちゃんと一緒にご家族の女性が手伝っていたのですが「90歳やからね。もう継ぐ人もおらへんし…」という言葉に、少し切なくなってしまいました。

関西特有の、串カツ屋さんも健在です。暖簾の下には数人の足だけが見え隠れしています。初めて見た人は、ここで何をやっているのだろうと覗きたくなるような光景です。

人々の隙間に入り込むと、目の前の網の上に次々と揚げたて串カツが乗せられていきます。注文はせずに、じゃがいも、うずら、牛肉など名札を確認して勝手に取って食べるシステム。

もちろんソースは二度漬け禁止〜！値段はどれも一緒なので、帰るときに何本食べたと自己申告してお金を払います。こどもの頃に駄菓子屋に群がっていた感覚を思いだすような時間。

ここではもちろん串カツを食べることが目的ですが、それと同時に自分がこの中に参加する面白さを求めているというのもあります。レモン水同様、ここで立って飲み食いするという行為自体が楽しいのです。

商店街の端っこまで来たので、来た道を引き返して湊川公園近くまで戻ります。お洒落な焼き芋屋さんに、カフェスペースが併設されていました。焼き芋3種食べ比べができるそうですよ。

面白い暖簾を掲げた食堂も発見。仕入れ先の店名がずらりと書かれているようですね。ここら近辺の連帯感を象徴しているかのように思えて嬉しくなってしまいました。

新旧交わる湊川界隈、人や歴史を感じられる商店街の、長い時を経て移り変わっていく姿。そこには物を買うという行為だけでなく、人との会話や体験がありました。

私たちが1日をどう過ごすか、その中に含まれる楽しい時間として、「商店街」という存在がこの先ずっとあり続けてくれたらいいな。そんなふうに感じた東山商店街でした。

東山商店街