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猫が蛇口からしか水を飲まない理由とは?「ヒゲ疲労」に気を付けて水飲み場を選ぶコツ

いわさきはるかサイエンスライター
PhotoAC 蛇口からだと水がすすむぜ

猫が十分な水分を摂取することは、健康維持に欠かせません。尿路結石や腎臓病のリスクを減らすためにも、猫が水を飲みやすい環境を整えることが大切です。

多くの飼い主さんが何とか水を飲ませたいと思っているにも関わらず、猫は思うようにいきません。「用意した水飲み場から水を飲んでくれない」「なぜか蛇口を開けたときだけ飛んでくる」……そんな話もよく聞きます。

猫はどうして水飲み場ではなく蛇口から水を飲むことを好むのでしょうか?そして水飲み場で水を飲んでもらうためにはどうしたらいいのでしょうか?猫が蛇口の水を好む理由や、猫の水飲み場の良し悪しにも関わる「ヒゲの疲労」について、サイエンスライターの筆者がわかりやすく解説します。

猫が蛇口から水を飲む理由

Pixabay 動く水はキレイだから好き!
Pixabay 動く水はキレイだから好き!

蛇口から水を飲むことを好む猫は少なくありません。蛇口から流れ出る水には動きがあり猫の狩猟本能をくすぐりますし、猫はその水がどの水飲み場のものよりももっとも新鮮であることを知っているのです。

野生下において、動きがなく停滞している水は衛生的に問題があることがほとんどです。猫が本能的に流れがある水を好むのは本能的な危機管理能力の1つとも言えます。

また「蛇口が出る水が好き」なのは「今の水飲み場が気に入らない」からかもしれません。例えば、水飲み場がトイレの近くにあると「衛生的ではない」と判断されてしまいますし、よかれと思って奥まった見通しの悪い場所に置くと「後ろから外敵が来るのではないか」というストレスを与えてしまうことがあります。

それに対し、蛇口があるのは多くの場合床から離れた高い所です。見通しがよく、危険をいち早く察知できる条件がそろっています。

また、水飲み場の形状が気に入らない場合もあるでしょう。猫が気に入る水飲み場の形状は猫のヒゲと大きく関係しています。

「ヒゲの疲労」が猫の水飲みに与える影響

Pixabay 大事な猫のヒゲ
Pixabay 大事な猫のヒゲ

猫の水飲み場選びに大きな影響を与えているのが、「ヒゲ疲労」という現象です。猫のヒゲは、触覚として重要な役割を果たしています。猫のヒゲはただの毛ではなく、立派な感覚器の1つなのです。ヒゲ疲労とは、猫のヒゲが過剰に刺激されることで発生するストレスや不快感のことを指します。

水飲み場の縁にヒゲが触れると、過剰な感覚刺激を受けてしまいます。これが「ヒゲ疲労」です。ヒゲ疲労が蓄積すると、猫はストレスを感じ、水飲み場を避けるようになってしまうのです。

ヒゲ疲労を防ぐためには、猫のヒゲが触れにくい形状の水飲み場を選ぶことが大切です。ボウルの縁が低く、広めの水飲み場であれば、ヒゲへの刺激を最小限に抑えることができます。

また、深すぎる水飲み場を使うと猫のヒゲが水に浸かってしまうことがあります。浅めで飲み口が広い水飲み場を選ぶことで、ヒゲ疲労を防ぎ、猫がストレスなく水を飲める環境を保つことが重要です。

さらに前述した「動く水を好む」という猫の性質も考慮にいれると、噴水型の水飲み器や、循環式の流れる水飲み器もオススメです。ただし、このような水飲み器を使っていても水が清潔に保たれていないと、猫はすぐにそれを学習し、使わなくなってしまいます。形状が複雑で面倒ではありますがこまめな清掃や定期的なフィルター交換は不可欠です。

猫のヒゲを観察して適切な飲食環境を

猫が水飲み場で水を飲まず蛇口を好むのは、新鮮で流動的な水を好む本能によるものですが、同時に現状の水飲み場から与えられる「ヒゲの疲労」を避けようとしている可能性もあります。

冒頭にも書いた通り、猫が水を飲むことは猫の健康を維持するために欠かせません。猫は少しのストレスでも水を飲むのを我慢してしまうことがありますので「ヒゲ疲労」にも配慮した水飲み場を準備してあげることが大切です。

また、実は「ヒゲ疲労」は水飲み場だけでなく、エサ皿でも起こり得ます。エサ皿が狭かったり、深すぎたりすると、猫のヒゲに皿のフチが当たったり、エサが付着したりしてストレスになってしまうのです。

猫がいつもの場所での飲食を避けるようになってしまったら、猫が食器を使うときの「ヒゲ」にも着目してみましょう。もし猫のヒゲが圧迫されていたり、汚れてしまっていたらそれは「ヒゲ疲労」を与える食器なのかもしれません。そのときはぜひ、口が広く浅めの食器と取り換えてみてくださいね。

サイエンスライター

保護猫2匹と暮らす理系ライター。猫や犬などペットとして身近な動物の研究をわかりやすく発信します。動物に関する研究は日々進んでいます。最新研究を知っておくと、きっとペットとの生活がより豊かなものになるはず。読めば人も動物もWin-Winになるような記事を書いていきたいと思います。

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