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映画公開から40周年 今年こそ行きたい“天国に一番近い島”ニューカレドニアの楽園ポイント5選

岩佐史絵トラベルジャーナリスト
女性のひとり旅にもおすすめの”天国に一番近い島”。のんびりいこう

「♪LOVE 誰よ~りも~ 天国にあな~た~ 一番近い島~♪」

原田知世さんの初々しい歌声とともに大ヒットした映画『天国に一番近い島』は、1984年の公開。2024年は、初公開から40周年の節目の年となります。

映画の舞台はニューカレドニアで、その景色の美しさにも魅了された人が多かった作品。1966年に出版され、一世を風靡した森村桂氏の同名の旅行記がベースとなっています。

フランスの海外領土・ニューカレドニアが日本人に初めて認識されたのは60年前のこと。森村氏の旅行記により「天国に一番近い島」というパワーワードで一世を風靡した
フランスの海外領土・ニューカレドニアが日本人に初めて認識されたのは60年前のこと。森村氏の旅行記により「天国に一番近い島」というパワーワードで一世を風靡した

大ベストセラーとなったこの旅行記、なにがすごかったって、まずは作者の行動力でしょう。日本人の海外旅行が自由化したのが1964年のことで、それまでは一般人が観光で気軽に海外に行く、なんてできなかった時代。森村氏は亡き父上が生前語っていた「花が咲き乱れ果実がたわわに実る夢の島、猛獣や虫もいない楽園」をニューカレドニアではないかと考え、父の面影を求めて渡航を決意します。しかし直行便も就航していなかった当時、人の助けを得てなんとかニューカレドニアにたどり着き、ガイドブックもない土地でさまざまな体験をしたのです。当時彼女は24歳。海外旅行そのものが珍しかった時代に、若い女性が一人で海外へ行くというだけでもセンセーションながら、その動機のロマンチックさ、そして旅先のニューカレドニアは日本人にとってまったくなじみのない南半球の島国であったこともあり、それから20年を経て映画の題材になったのも納得です。

オーストラリアとニュージーランドの中間あたりに位置。首都ヌメア南部のウェントロの丘からは天気がよければグレートバリアリーフも見えるそう。ちなみに、ニューカレドニアのサンゴ礁も世界遺産に登録されている
オーストラリアとニュージーランドの中間あたりに位置。首都ヌメア南部のウェントロの丘からは天気がよければグレートバリアリーフも見えるそう。ちなみに、ニューカレドニアのサンゴ礁も世界遺産に登録されている

彼の地に森村氏が初めて訪れてから60年、そして映画が公開されてから40年という節目が2024年。ニューカレドニアのフラッグキャリアであるエアカランが設立されたのが1983年で、日本(大阪)に就航したのが2000年ですから、撮影隊も当時は森村氏と同様に苦労して現地へ向かったのかもなぁ、なんて想像するのもなんだかエモい。なにしろニューカレドニアへの直行便がある国って、現在日本を含めて8か国しかないんですよ。“天国に一番近い島”に直行便で気軽に行けるなんて、エクスクルーシブ極まりないですよね。

だいぶ前置きが長くなりましたが、というわけで、節目である今年こそぜひ行きたい国・ニューカレドニア。キャプテンクックがニューカレドニアを”発見”したのが1774年で、今年はその250周年という節目でもあり、歴史厨の筆者としても萌え萌えの旅先。実際に行ってみると、なるほど確かに楽園だわ、と思われるポイントがたくさんありましたので、ぜひ語らせてください。

イルデパンのカヌメラビーチ。訪れた日は雨模様だったが、観光に乱開発されていないシンプルで静かな環境に、真のリラクゼーションを感じた
イルデパンのカヌメラビーチ。訪れた日は雨模様だったが、観光に乱開発されていないシンプルで静かな環境に、真のリラクゼーションを感じた

◆楽園ポイント1:エアカランのおフランス的サービス

ニューカレドニアの首都・ヌメアまで成田空港からエアカランが週3便(月・水・土曜日※スケジュールは2024年1月現在)の直行便を運航。所要時間は8時間40分の中距離路線です。機内では公用語のフランス語が飛び交い、エコノミークラスでもシャンパーニュが当たり前に出てきます。食後にはブランデーまでおススメされちゃうあたり、これから南仏にでも向かうのかしら、という贅沢な気持ちになります。

日本とニューカレドニアを約8時間30分で結ぶエアカラン。現地発着時間が深夜帯なので、上手にプランすれば短い日程でものんびり楽しむことができる
日本とニューカレドニアを約8時間30分で結ぶエアカラン。現地発着時間が深夜帯なので、上手にプランすれば短い日程でものんびり楽しむことができる

エコノミークラスでもシャンパーニュ! プラカップの気軽さで、これはかなり気分がアガる! おつまみがグリッシーニなところもヨーロッパのエアラインぽい
エコノミークラスでもシャンパーニュ! プラカップの気軽さで、これはかなり気分がアガる! おつまみがグリッシーニなところもヨーロッパのエアラインぽい

往路は成田を12:25発、ヌメア23:05着。機内食はランチと軽食が出るほか、ギャレーでスナック類ももらえる。機内で食べるヌードルスープってすごくおいしく感じるよね
往路は成田を12:25発、ヌメア23:05着。機内食はランチと軽食が出るほか、ギャレーでスナック類ももらえる。機内で食べるヌードルスープってすごくおいしく感じるよね

帰国便はヌメア01:05発、成田07:55着。ミッドナイトフライトゆえ、1回目の食事はかわいいバッグに入ったスナックが配られた。2回目の食事は朝食
帰国便はヌメア01:05発、成田07:55着。ミッドナイトフライトゆえ、1回目の食事はかわいいバッグに入ったスナックが配られた。2回目の食事は朝食

◆楽園ポイント2:フランス仕込みのグルメ魂

ニューカレドニアがフランス領となってから170年超。ニッケル産業がさかんになったこともあり、フランス本土から食文化を伴って多くのフランス人が移住しています。おかげで、特に首都ヌメアにはフランス料理をベースとした料理を出すビストロも多数。カフェやブーランジェリー(ベーカリー)も充実していて、街歩きの途中にもお楽しみがいっぱいです。

ニューカレドニアは大人気ブランド『天使のエビ』の故郷! 滞在中ぜひトライを。海辺のレストランMarmite et tire bouchonにて
ニューカレドニアは大人気ブランド『天使のエビ』の故郷! 滞在中ぜひトライを。海辺のレストランMarmite et tire bouchonにて

Marmite et Tire-Bouchon

Marmite et Tire-Bouchonの目の前はハーバー。テラス席があるレストランも多く、ランチもディナーもロマンチックな時間を約束してくれる
Marmite et Tire-Bouchonの目の前はハーバー。テラス席があるレストランも多く、ランチもディナーもロマンチックな時間を約束してくれる

有名なショコラティエ『ショコラ・モラン』。芸術的なチョコレートはお土産に、大き目のクッキーは自分のおやつにテイクアウェイも
有名なショコラティエ『ショコラ・モラン』。芸術的なチョコレートはお土産に、大き目のクッキーは自分のおやつにテイクアウェイも

Chocolats Morand

ヌメアの朝市のカフェではトーストしたバゲットをカフェオレとともに。クロックムッシュなどフランスの定番朝ごはんメニューが並ぶ
ヌメアの朝市のカフェではトーストしたバゲットをカフェオレとともに。クロックムッシュなどフランスの定番朝ごはんメニューが並ぶ

ニッケル鉱山で働くアジア系移民も多く、アジア街にはベトナム料理屋さんも。注文しなくてもバゲットが出てくるあたり、いかにもフランス文化圏。本場の味とはいかないものの、これはこれでかなりおいしい!
ニッケル鉱山で働くアジア系移民も多く、アジア街にはベトナム料理屋さんも。注文しなくてもバゲットが出てくるあたり、いかにもフランス文化圏。本場の味とはいかないものの、これはこれでかなりおいしい!

◆楽園ポイント3:手つかずの自然を楽しめる島々

本島(ニューカレドニア島)とロイヤルティ諸島からなるニューカレドニア。首都ヌメアでは街歩きやグルメ探訪などのお楽しみがありますが、ウベア島やパン島(イルデパン)といった島々には先住民文化も色濃く残り、かつ乱開発されていない手つかずの自然が楽しめるのがいいところ。秘境感を楽しみましょう。

今回はイルデパンへ赴き、島内唯一の5つ星ホテル『ル・メリディアン・イルデパン』に投宿しました。

国内線のマジェンタ空港から、各島へ定期便がある。今回はイルデパン(パン島)へ、約30分のフライト。国内線のエール・カレドニー社は1954年設立と、なかなか歴史ある会社
国内線のマジェンタ空港から、各島へ定期便がある。今回はイルデパン(パン島)へ、約30分のフライト。国内線のエール・カレドニー社は1954年設立と、なかなか歴史ある会社

イルデパンへの機窓からの景色。たくさんのラグーンがあり、すでに島への期待値爆上がり。ニューカレドニアのサンゴ礁は世界サンゴ礁ランキング(そんなのあるのか)でも常に上位をキープしているとか
イルデパンへの機窓からの景色。たくさんのラグーンがあり、すでに島への期待値爆上がり。ニューカレドニアのサンゴ礁は世界サンゴ礁ランキング(そんなのあるのか)でも常に上位をキープしているとか

イルデパン唯一の5つ星ホテル『ル・メリディアン・イルデパン』。プライベートビーチもあり、楽園感マックスな滞在ができる
イルデパン唯一の5つ星ホテル『ル・メリディアン・イルデパン』。プライベートビーチもあり、楽園感マックスな滞在ができる

イルデパンの最も人気のアクティビティ、天然のプール「ピッシンヌ・ナチュレル」。岩礁に囲まれた静かな浅瀬の海で、シュノーケリングにぴったり。メリディアンから歩いても行けるのがよき
イルデパンの最も人気のアクティビティ、天然のプール「ピッシンヌ・ナチュレル」。岩礁に囲まれた静かな浅瀬の海で、シュノーケリングにぴったり。メリディアンから歩いても行けるのがよき

島外持ち出し禁止というエスカルゴはイルデパンに来たらマストトライ。10センチ近くもある大きさのエスカルゴは、ガーリックバターが効いてワインにも合うお味
島外持ち出し禁止というエスカルゴはイルデパンに来たらマストトライ。10センチ近くもある大きさのエスカルゴは、ガーリックバターが効いてワインにも合うお味

夕陽を楽しみに、島の反対側のホテルへ。ただ自然のなかに身をゆだねてぼ~っとしたい、そこにホテルなどが快適な場所を提供してくれる。自然こそが最も贅沢なサービスだ
夕陽を楽しみに、島の反対側のホテルへ。ただ自然のなかに身をゆだねてぼ~っとしたい、そこにホテルなどが快適な場所を提供してくれる。自然こそが最も贅沢なサービスだ

◆楽園ポイント4:お買い物も楽しい

ショッピングは旅のお楽しみのひとつ。とはいえ、はっきり言ってニューカレドニアはそれほどモノにあふれている国ではありません。キーチェーンやTシャツのようなお土産用品もそれほど充実していませんが、一方で、バヌアツ産バニラビーンズとか地元のはちみつなどここでしか手に入れられないレアなものがいっぱい。また、スーパーではフランスからの直輸入品がたくさん売られているので、チーズやチョコレートなどを狙い撃ちしてもよさそう。じっくり見ていると、ほしいものがたくさん見つかり、スーツケースがすごいことに……⁉

先述の地元ショコラティエ『モラン』ではチョコレートアソートをお土産に。季節ごとのイベントに合わせたギフトボックスも充実しているので、おしゃれで気の利いたお土産になりそう
先述の地元ショコラティエ『モラン』ではチョコレートアソートをお土産に。季節ごとのイベントに合わせたギフトボックスも充実しているので、おしゃれで気の利いたお土産になりそう

スーパーマーケットではチーズの品ぞろえがすごい! 日本では専門店でないとお目にかかれないようなレアなものもあり、さすが。乳製品は日本に持ち込みOKなので、最終日にヌメアで買うのがおすすめ
スーパーマーケットではチーズの品ぞろえがすごい! 日本では専門店でないとお目にかかれないようなレアなものもあり、さすが。乳製品は日本に持ち込みOKなので、最終日にヌメアで買うのがおすすめ

マーケットにはお土産もちょっと売られている。アクセサリー類はタヒチデザインのものもあるが、かわいい。サメの歯を用いたジュエリーなど、なかなかオリジナリティがある
マーケットにはお土産もちょっと売られている。アクセサリー類はタヒチデザインのものもあるが、かわいい。サメの歯を用いたジュエリーなど、なかなかオリジナリティがある

オーナーで商品開発を手掛けるロドリックさんによるニューカレドニア独特の植物由来のスキンケア、フレグランスの『Botanik』。一度使ったら絶対ハマる高品質。ばらまきにもよさそうな小さいサイズも展開
オーナーで商品開発を手掛けるロドリックさんによるニューカレドニア独特の植物由来のスキンケア、フレグランスの『Botanik』。一度使ったら絶対ハマる高品質。ばらまきにもよさそうな小さいサイズも展開

Botanik

イルデパンで見つけた衝撃のお土産、サンダルウッドの原木がこのサイズでこの値段……(2000パシフィックフラン=2600円ちょっと)。うっとりするほどいい香り
イルデパンで見つけた衝撃のお土産、サンダルウッドの原木がこのサイズでこの値段……(2000パシフィックフラン=2600円ちょっと)。うっとりするほどいい香り

◆楽園ポイント5:オーバーツーリズムを回避

実はこれが一番大きいかも? というくらい、特筆したいポイント。直行便が限られていることもあり、ビーチリゾートのなかでも観光客が少なくとても落ち着いた雰囲気です。街を歩いていてもロコ(地元の人)とすれ違うほうが多く、ありのままの人々の生活ぶりや街の雰囲気を楽しむことができます。

ヌメアの中心地、ココティエ広場では木陰で人々がのんびりと思い思いに過ごしていた。カフェに集うお年寄りとか、音楽を聴きながらお弁当を食べる学生とか、”いつもの風景”が見られる
ヌメアの中心地、ココティエ広場では木陰で人々がのんびりと思い思いに過ごしていた。カフェに集うお年寄りとか、音楽を聴きながらお弁当を食べる学生とか、”いつもの風景”が見られる

観光名所ウェントロの丘も、あまり混雑していないので地元の人も散歩がてら立ち寄るスポット。この大砲は第二次世界大戦時に設置されたものだが、設置後まもなく終戦となり一度も発砲されたことがないのだそう
観光名所ウェントロの丘も、あまり混雑していないので地元の人も散歩がてら立ち寄るスポット。この大砲は第二次世界大戦時に設置されたものだが、設置後まもなく終戦となり一度も発砲されたことがないのだそう

ニューカレドニアを訪れてみて強く感じたのは、その歴史や文化をそこここで感じられること。ニッケル産業があったからこそ、観光業に頼る必要がなく乱開発を逃れたのではないかと考えます。

首都ヌメアも南仏のリゾートのようにのんびりムードのほどよい田舎感、それでいて水道水が飲めるほどインフラがしっかり整っており、街を歩いていても身の危険を感じない治安のよさ。

島では今も公共の交通機関もスーパーマーケットもないけれど、足りないものがなにもない。そんなデスティネーション、いまやなかなかないのでは。ニューカレドニア、掘り下げるともっとずっと萌えポイントが出てきそうで、ぜひリピートしたい旅先なのでした。

取材協力/ニューカレドニア観光局

エアカラン

トラベルジャーナリスト

旅活歴は四半世紀以上のフリーランス トラベルジャーナリスト。3か月ごとに拠点を変えながらのノマドライフを夢見て、「この町に住んだなら」を妄想しつつ旅を続けます。その土地のリアルな文化を知ることで、旅はぐっと楽しくなるもの。じんわり心地よい旅先探訪中に出合ったいろいろをご紹介します。

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