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脂肪肝を改善する簡単な方法で、心臓や脳の健康を脅かす"MAFLD"(マッフル・ディー)を防ぐ!

黒澤恵(Kei Kurosawa)医学情報レポーター

大酒飲みではない脂肪肝が増えている

かつて「脂肪肝」は大酒飲みの病気と思われていました。でも今は違います。アルコールを多飲しないのに肝臓に脂肪が溜まる「NAFLD」(ナッフッル・ディー:非アルコール性脂肪性肝疾患)が増えています。今の日本では健康診断を受けた人の30%にNAFLDが見つかるという報告もあります [文献1]。

この「脂肪肝」。「放っておくと肝臓癌のリスクが上がる」など「肝臓病」としては有名ですが、肝臓とは一見関係のない心臓や脳にも悪影響があるのはご存知ですか?

そしてこの心臓や脳との関係では、最近MAFLD(マッフル・ディー)というタイプの脂肪肝が注目を集めています心筋梗塞や脳卒中などの心臓血管系疾患を発症するリスクが高くなることが分かってきたためです。

脂肪肝の新分類 ”MAFLD” (マッフル・ディー)

MAFLDとは「代謝異常関連・脂肪性肝疾患)の略。2020年に提唱されました [文献2]。定義は「脂肪肝」に「太り過ぎ(含:腹部肥満のみ)」「2型糖尿病」「血圧や血糖、コレステロールが要注意の値」の1つ以上を伴った状態です。。定義から分かるようにいわゆる「メタボ」な人の脂肪肝ですね。

さて本題です。

このMAFLDがあると脂肪肝のない人に比べ、心臓や脳の血管が原因で発症する心血管系疾患(心筋梗塞や脳卒中)で死亡する危険性が高くなることが分かっています。「栄養・代謝・心臓血管系疾患」(NMCD)という学術誌にTae Kyung Yoo博士が、1月24日('23年)付けで報告しました。

MAFLDの人は心筋梗塞や脳卒中などで死亡するリスクが35%上昇

韓国の健康診断データベースに登録された70万人のデータを解析した結果、約9年間の間に、MAFLDのある人たちではMAFLDのなかった人たちに比べ、心臓血管系疾患で死亡するリスクは1.35倍に増えていたのです [文献3]。

もっともこの研究からは、MAFLDが心血管系疾患疾患を増やすのかどうか、因果関係は分かりません。MAFLDは死亡を増やす「ファクター」ではなく、死亡高リスクの人たちの「マーカー」だった可能性もあるわけです。

肝臓の脂肪を落とす簡単な方法

とはいえこういう数字が出ている以上、「MAFLDは改善しておきたい」と感じるのが人情というもの。ではどうすれば良いでしょう?日本消化器病学会が出しているガイドラインを見ると、アルコール性ではない肝臓肝の改善には「カロリー制限による体重の減少」と「運動療法」 が有効だとされています。

え、「当たり前」過ぎる?確かに。でも注目してほしいのは「筋トレでも肝臓の脂肪が減る」とされている点です。

筋トレは流行りの「コンビニジム」を利用するのも良いアイディアですが、家でできる運動でもOK。例えば「膝をつき腕立て」と「スクワット」それぞれ10回を3セット、これを週3回行うだけで肝臓の脂肪は減らせます。日本で行われた臨床試験で確認されました [文献4] 。これならば簡単にできそうでしょう?

最後に

いかがでしたか?今回ご紹介した論文(記事末)の要約は無料閲覧できます。すべて英語ですが、無料翻訳サイトのDeeplを使えば簡単に日本語にも直せます。

また脂肪肝については「ボケたくなければ『脂肪肝』にも要注意。酒好き以外も必読の最新医学エビデンス」という記事も書いています。こちらも是非お読みください!

今回ご紹介した論文

  1. 日本人の30%に非アルコール性の脂肪肝 [米国国立医学図書館]
  2. "MAFLD"(マッフル・ディー)とは? [米国国立医学図書館]
  3. MAFLDがあると心臓血管系疾患で死亡するリスクが35%上昇 [NMCD誌]
  4. 「膝付き腕立て」と「スクワット」だけで肝臓の脂肪が落ちる [米国国立医学図書館]

【注意】本記事は最新の医学論文についての紹介あり、研究結果の内容はあくまでも「論文筆者」によるものです。また論文の解釈は論者により異なる可能性もあります。あくまでもご自身の見解形成の参考としてお読みください。

医学情報レポーター

医療従事者向け書籍の編集者、医師向け新聞の記者を経てフリーランスに。10年以上にわたり、新聞社系媒体や医師向け専門誌、医療業界誌などに寄稿。近年では共著で医師向け書籍も執筆。国会図書館収録筆名記事数は100本超。日本医学ジャーナリスト協会会員(筆名)。

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