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「最近、足が疲れやすい」。それ清涼飲料水の飲み過ぎかも。2万6千人を解析【最新医学情報】

黒澤恵(Kei Kurosawa)医学情報レポーター

「歩かなきゃ」とは思うけど足が疲れて・・・

歩くのが健康に良いのはもはや常識。誰もが「歩かなきゃ」と感じているのではないでしょうか?とは言え思うほど歩けないのも事実。少し歩いただけで足が疲れてしまう人も多いはず。

「靴にも気を遣っているし、できるだけ階段を使うようにしているのに・・・」「ジムに通っているから足腰の筋肉はついているはずなのに何故?」

それ、砂糖入り飲料の飲み過ぎかもしれません

そんな納得いかない思いを抱えているアナタ、砂糖入りの飲み物を摂りすぎているのかもしれません。というのも最近、砂糖入りの飲料を飲みすぎると筋力が低下する可能性が報告されたのです。中国で2万6千人を調べた結果、明らかになりました。5月30日、「BMC公衆衛生」(Public Healh)という学術論文誌に掲載された、長江大学のYunjie Zhang氏たちによる論文をご紹介します [文末文献1]。

同氏たちが解析対象にしたのは、13歳から15歳の中国学童25,893人でした。検査項目に「垂直跳び」が入っているのでこの年代になったのでしょう。この人たちを砂糖入り飲料を飲む回数別に「週1回未満」「週に1〜2回」「週に3回以上」の3つの群に分け、「握力」と「垂直跳びの高さ」から導き出した「筋力」を比べました。

飲む回数が増えるほど筋力低下の危険性はアップ

するとその結果、「週1〜2回」砂糖入り飲料を飲んでいただけで、「1回未満」に比べ、「筋力低下」(全体の下から4分の1以下)を呈する危険性が20%も増加していました。さらに「週3回以上」になると、危険性増加率は80%近くに及んでいました。

つまり砂糖入り飲料を飲む回数が増えるほど、腕・足腰とも筋力が低下する危険性が高くなると考えられたのです。

「細胞老死」が促進されている可能性も

もちろん砂糖入り飲料の飲み過ぎで「体重」が増えたから、垂直跳びの高さが減った可能性もあります(「筋力低下」が原因ではなくて)。でもそれでは腕の筋力低下は説明できません。

Zhang氏たちは、砂糖の摂取増加に伴い細胞内でのオートファジー(自食作用)が亢進、その結果テロメア*が短くなり、筋細胞が早期に死に至った可能性を指摘しています [文末文献2] 。

テロメア:細胞が生まれた時から持っている細胞分裂の回数券。細胞分裂するたびに1枚ずつ減り、使い切ったところで細胞分裂は終わり、細胞は死(細胞老死)に向かう。

まとめ

いかがでしたか?砂糖飲料を摂りすぎる人では筋力が低下し、その背景には筋細胞の早期死亡があるかもしれないという論文のご紹介でした。

厳密には、砂糖飲料の摂りすぎそのものが筋力低下の原因になっているのか、この研究だけでは結論できません(砂糖飲料をよく飲む人に共通の他の因子が筋力を低下させている可能性もあり)。

でも試してみる価値はあるはず。砂糖入り飲料を飲む回数を減らしてみましょう。足の筋力が戻って平地歩行だけでなく、階段の上り下りも楽になるかもしれません。そうなったら「もうけもの」です。

飲み物と健康については次のような論文紹介記事も書いています。こちらも是非、ご覧ください。ではまた!

今回ご紹介した論文

砂糖入り飲料を飲む回数が多い人では筋力低下の割合が高い [全文無料・英語]

砂糖の取りすぎは「細胞老死」を早める可能性 [全文無料・英語]

無料翻訳サイトのDeeplはこちら。

【注意】本記事は最新の医学論文についての紹介あり、研究結果の内容はあくまでも「論文筆者」によるものです。また論文の解釈は論者により異なる可能性もあります。あくまでもご自身の見解形成の参考としてお読みください。

医学情報レポーター

医療従事者向け書籍の編集者、医師向け新聞の記者を経てフリーランスに。10年以上にわたり、新聞社系媒体や医師向け専門誌、医療業界誌などに寄稿。近年では共著で医師向け書籍も執筆。国会図書館収録筆名記事数は100本を超える。

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