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ビタミンK1多食で糖尿病リスク低下?5万5千人データから明らかに【最新論文】

黒澤恵(Kei Kurosawa)医学情報レポーター

2型糖尿病は予防できる

日本でも増え続けている糖尿病。最新の統計では男性の5人に1人、女性でも10人に1人が「糖尿病が強く疑われる」と報告されています [厚労省「令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要」20頁]。この糖尿病には大別して2種類あるのはご存知ですね?1型糖尿病と2型糖尿病です。

「1型」はインスリンというホルモンの分泌がなんらかの理由で止まってしまい、血糖値が上がる糖尿病です。インスリンには血糖値を下げる働きがあるので、分泌されないと高いままになってしまうわけです。

「2型」はインスリンが分泌されているけれど十分ではない、あるいはインスリンが分泌されても血糖値が下がらない(「インスリンの効きが悪い」=「インスリン抵抗性」と呼びます)、この2つの要因が相まって出現する糖尿病です。

1型糖尿病では遺伝的素因が発症の大きな原因になるのに対し、2型糖尿病は遺伝的素因に加え生活環境が発症に及ぼす影響が大きいことが知られています。逆に言えば生活環境を変えれば予防しやすいとも言えるでしょう。

ビタミンKが糖尿病を遠ざける?

そこで今日の本題。「ビタミンK1をたくさん摂ると糖尿病になる確率が下がる」という医学データをご紹介します。「ビタミンK1」とはビタミンKのうち緑黄色野菜・海藻類・緑茶・植物油などに含まれるものを指します。1食あたりの摂取量が多い食材としては「ほうれん草」や「小松菜」「春菊」などが挙げられます(いずれも茹でたもの) [国立栄養・健康研究所HP] 。

このデータを報告したのは、デンマークがん協会研究センターのPratik Pokharel氏たち。「臨床内分泌・代謝雑誌」という学術誌で2023年5月に発表しています [文末文献] 。

Pokharel氏たちが解析したのは、デンマークの住民で糖尿病と診断されたことのない5万5千人です。質問票を使って食事内容を詳細に把握したのち、観察を続けました。

すると約20年間で12%の人たちが糖尿病を発症。そこで最初に調べた食事の内容が糖尿病発症に及ぼす影響を解析すると、ビタミンK1を多く取っていた人ほど糖尿病になりにくかったことが明らかになりました(グラフ)。

                                   万国著作権条約に準拠し引用
                                   万国著作権条約に準拠し引用

またビタミンK1摂取量で5群に分けて比べると、摂取量「最大」のグループでは最小」のグループに比べ相対的に26%、糖尿病になる確率が減っていました(0.74倍)。

ちなみにこの研究ではビタミンK1摂取源として、「マーガリン」「レタス」「ブロッコリ」「全粒粉パン」「ほうれん草」が多かったそうです。

もちろんこの結果からは「ビタミンK1」そのものではなく「ビタミンK1をたくさん摂れるような食事」が糖尿病のリスクを下げた可能性も否定できません。しかしPokharel氏たちはビタミンK1そのものが糖尿病を遠ざけたと考察していました。

最後に

いかがでしたか?近親者に糖尿病の方がいる、あるいは健康診断で血糖を注意されているなど、糖尿病が心配な方はビタミンK1が豊富な野菜を常食するようにしてはどうでしょう?ただし腎臓の機能が低下している場合、過度の野菜は健康を害する可能性があります。腎臓病を治療中の方は主治医の先生に相談してください

糖尿病については以下のような論文紹介記事も書いています。こちらもぜひお読みください。ではまた!

今回ご紹介した論文

ビタミンK1多食で糖尿病リスク低減の可能性。5万5千人を観察 [英語、無料]

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【注意】本記事は最新の医学論文についての紹介あり、研究結果の内容はあくまでも「論文筆者」によるものです。また論文の解釈は論者により異なる可能性もあります。あくまでもご自身の見解形成の参考としてお読みください。

医学情報レポーター

医療従事者向け書籍の編集者、医師向け新聞の記者を経てフリーランスに。10年以上にわたり、新聞社系媒体や医師向け専門誌、医療業界誌などに寄稿。近年では共著で医師向け書籍も執筆。国会図書館収録筆名記事数は100本を超える。

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