轟々と吹き付ける冬の冷たい風は、ときに人間を氷のようにかためてしまうんじゃないか、と思ってしまうほど。
子供のころは寒さを気にせずに外に遊びに出て、気づいたら真っ赤になっていた手に『ふうっ』と息を吹き付け必死に温めたり、ポケットに手を入れてみたり。
だけど、やっぱり冬の寒さは強い。

凍える気温の中で、焼きたての甘くて温かい大判焼きは、身も心も包み込むような特別な「暖」がある。

宮城県松島町の町内地区にある「炭火串焼 八州（はっしゅう）」は、その名前の通り牛たんや牛肉の串焼きが食べられるお店。

だけど、それだけじゃない。
『大判焼きありますか？』『はい、ありますよ。』
三角巾をきっちり巻いたお母さんが、小窓から嬉しい返事を返してくれる。
そう、甘くて熱々の大判焼きも販売している。冬の寒い中を歩いてきた時には『ああ、うれしい！』と、いそいそと両手を擦り合わせてしまう。

あんこ、ずんだ、クリームの3種類から選べるのも、子どもも大人もやっぱり嬉しい。『どうしよっかなぁ、クリームも美味しいよねぇ』と、寒いけれど悩む時間も結構楽しいもの。

熱々の大判焼きは懐かしい白の薄紙の袋に入っていて、今風じゃないところが愛らしい。

『ワタシは、あんこだよ』と、ちゃんと袋には「つぶあん」の印が押されていて、あらまと驚く。ハンコも懐かしさを感じる活版印刷のような雰囲気。他のずんだとクリームの印も見てみたい。

冬の白く張り詰めるような空気の中で、湯気を上げる大判焼きは、人に小さな喜びをくれる大きな存在。

『ほぅっ』と両手で大判焼きを挟むように支えると、じんわりと伝わってくる温かさは、ちょっぴり特別な「暖」だ。