【専門家解説】おしゃぶりでの寝かしつけはいけないこと?卒業の仕方、使用上の注意を解説
赤ちゃんアイテムの代表格、おしゃぶり。これほどまでに賛否が議論されてきたベビー用品はないのでは?というくらい、議論が絶えないアイテムでもあります。
おしゃぶりを使うと楽に寝てくれる赤ちゃんがいる一方で、それに頼ることに罪悪感を持っているパパ・ママは少なくありません。
せっかくスムーズに寝てくれるのに、心の中がもやもや…ではつらいですよね。
この記事では乳幼児睡眠コンサルタントねんねママが、
- おしゃぶりはいけないもの?
- おしゃぶりのメリット
- おしゃぶりのデメリット
- おしゃぶりの卒業を検討する基準
- おしゃぶりの卒業方法
- NGなおしゃぶりの使い方
について解説します。
おしゃぶりはいけないもの?
そんなことはありません。
赤ちゃんは吸啜反射(きゅうてつはんしゃ)という口の中に入ってきたものに本能的に吸い付く力を持っています。おしゃぶりはこの本能を満たしてくれるため、赤ちゃんの気持ちを落ち着かせることができます。
赤ちゃんはママのお腹にいたときに、およそ妊娠5ヶ月くらいまでの間に自分の親指やへその緒を口に入れるようになり、子宮の壁をなめるようになることもあるということが研究されています。生まれたときに、既に指に吸いだこのある赤ちゃんもいるくらいです。
しかし、このお腹の中の環境は誕生とともに激変します。
お腹にいた時は体が丸まっていて、手の指も足の指もいつでも吸える環境にあったのですが、誕生と同時に体が丸まらなくなり、指を見失ってしまうのです。そんな赤ちゃんが何か吸うものを探しているのは当然のことのように思えませんか?
おしゃぶりを使って赤ちゃんを楽に寝かしつけできているのであれば、それがいけないことをしている!と考える必要はありません。
いつでも何かを吸っていたい!という欲求の強い赤ちゃんもいます。それを24時間ママのおっぱいや指で対応するのはママが疲れきってしまいます。それを補助する役割としておしゃぶりを使うのはOKだと考えます。
ただ、メリットもある一方でデメリットもあるのは確かです。そこを理解した上で、使い続けるか、卒業を検討するかを決めていけるとよいでしょう。
おしゃぶりのメリット
・気持ちが落ちつく
おしゃぶりのメリットは親の負担が少なく赤ちゃんの気持ちを落ち着けられることです。吸うという行為によってストレスを軽減し、気持ちを落ち着かせることができます。
寝かしつけにおいても、おしゃぶりを吸わせていれば寝ぐずりせずに自分でスムーズに寝つくことができる、という子も多くいます。
・乳幼児突然死症候群の予防
理由は明らかになっていませんが、おしゃぶりを使用している赤ちゃんはそうでない赤ちゃんと比較して乳幼児突然死症候群(SIDS)の発症率が低いという研究データがあります。米国小児科学会では安全な睡眠のための推奨事項としても挙げられています。
研究ではその効果は入眠後におしゃぶりが口から落ちた場合でも持続するとされています。
おしゃぶりのデメリット
・おしゃぶりがないと寝られなくなる
おしゃぶりによって入眠はスムーズになる一方で、強いクセになりやすいというデメリットも存在します。
「寝る=おしゃぶり」という結びつきが強くなると、夜間に睡眠が浅くなってふと目が覚めたときにおしゃぶりが口から外れていると「おしゃぶりがない!!」と不安になって泣いてしまうということが起こり得ます。
こうなると夜間に度々泣いて起きることになり、パパやママはその度におしゃぶりを探して口に入れなおしてあげなくてはいけない…ということに悩まされることが多くなります。
・歯並びに影響
おしゃぶりと歯並びの関係については研究の結果、おしゃぶりを使用している2歳児では開咬(上の歯と下の歯を噛み合わせた時にすき間が開いてしまうこと)が高頻度にみられ、5歳児ではこの傾向がさらに増大したことがわかっています。
日本小児歯科学会では「乳歯の奥歯が生えてくる1歳半頃からやめる準備を始めて、2歳過ぎまでにはやめられるといい」とされています。
参考)
「おしゃぶりについての考え方」小児科と小児歯科の保健検討委員会
「こどもたちの口と歯の質問箱」日本小児歯科学会
・母乳育児に混乱を与える
母乳開始後数週間、母乳の飲み方を学んでいる期間に、赤ちゃんの口にママの乳首以外のものをいれると乳頭混乱(人工の乳首を好んで、ママの乳首を嫌がること)を起こしてしまいます。
ママのおっぱいに上手に吸い付けるようになり、母乳もたっぷり出るようになるまではおしゃぶりをしようしないことをおすすめします。赤ちゃんに吸われすぎて乳首が切れてしまったり、傷んでしまったりする場合は指を吸わせてみましょう。
おしゃぶりの卒業を検討する基準
①月齢
日本小児歯科学会が1歳半頃からおしゃぶり卒業の準備を推奨していることからも、そのくらいの月齢になってきたら徐々にやめることを検討すると良いでしょう。1歳半となると言葉も理解しはじめる頃です。まずは本人にゆっくり説明してみてはいかがでしょうか。
②夜間頻回に起きてしまう場合
おしゃぶりを使ってスムーズに入眠し、ぐっすり寝てくれていればOK。ですが、反対に夜間頻繁におしゃぶりを求めて起きてしまうようになるようであれば、卒業を検討するのが良いでしょう。
おしゃぶりの卒業方法
①おしゃぶりをやめることを説明する
赤ちゃんに変化を起こす場合は事前に説明をすることをおすすめします。なぜおしゃぶりをやめるのか、いつからおしゃぶりをやめるのか、繰り返し説明するようにしましょう。
目安はやめる1週間以上前から。カレンダーに×をつけるなどすると言葉のわからない赤ちゃんにも視覚的に伝わりやすくなります。
言葉のわかる月齢の子であれば、「もう○○ちゃんは赤ちゃんじゃないからやめていこうね。これは赤ちゃんのだからね」などと声がけしてあげるのも有効です。
②寝かしつけ時は使用、夜間は与えない
いきなり全て変更するのが不安な場合、まずは入眠時の使用は残して夜間のみ与えないことにチャレンジしてみましょう。
乳幼児突然死症候群の予防効果は、この使用方法でも継続するとされているので、リスクの高い期間とされる生後6ヶ月以下の赤ちゃんには特にこちらの方法がおすすめです。
どんなに説明されていても、今まで頼りだったおしゃぶりがなくなるのは赤ちゃんにとっては不安なこと。ギャン泣きしてしまうこともあると思います。
でもそれは一時的なこと。赤ちゃんは私たち大人よりもよっぽど順応性が高く、新しい環境を受け入れることに長けています。「やっぱりあげようかな…」というのが最も赤ちゃんを混乱させてしまうので、泣かれても一時的なことと毅然とした態度で臨みましょう。
③寝かしつけ時から使用しない
「寝る=おしゃぶり」という結びつきをなくすためには寝かしつけ時から使用をやめていくことが必要になります。
②の方法で行なっても泣きが強くてあやすのが難しい場合は、きっぱり寝かしつけ時からやめてしまうのが赤ちゃんにとってもわかりやすくておすすめです。
安心材料が1つなくなってしまうことになるので、日中や寝る前のスキンシップを増やし、安心感を与えるようにしてあげましょう。
NGなおしゃぶりの使い方
①首に巻いてしまうような長い紐やリボンをつける
おしゃぶりに長い紐やリボンをつけて赤ちゃんの洋服につけたり、首から下げたりするのは絶対にやめましょう。首を絞まってしまう危険性があり、窒息など命の危険に関わりかねません。
②安全性の低いおしゃぶり
おしゃぶりはしっかりとした一体型のものを選びましょう。部品が割れたり、パーツに分かれてしまったりすると誤飲の危険性があります。
また、おしゃぶりの基底部に風通しの穴が開いていることが重要です。赤ちゃんがおしゃぶりを強く吸い込んだ時に鼻腔を覆ってしまうような、大きなシールドのついたものはやめましょう。
③成長段階にあっていないサイズの使用
意外と見落としがちなのが、対象月齢。
おしゃぶりは対象月齢ごとに商品が分かれています。6ヶ月〜のように月齢で表示されている場合と、S・M・Lといったサイズで表示がされているものがあります。
低月齢の赤ちゃん向けのおしゃぶりは、小さな口でも吸いやすいように設計されています。反対に月齢の上がってきた赤ちゃんが使えるおしゃぶり、ニップルが大きめ・硬めのものが多くなっています。
歯やあごの発達のためにも、月齢にあったものを選びましょう。
おしゃぶりに悩むパパ・ママへ
育児は大仕事。授乳に離乳食に寝かしつけに夜泣き…大変なことがたくさんで、疲れや睡眠不足でストレスが溜まってしまうこともありますよね。
そんなときに赤ちゃんをあやしてくれるアイテムは強い味方。おしゃぶりもその一つです。
せっかくおしゃぶりを使うなら罪悪感を感じて気に病むのではなく、「おしゃぶりありがとう!」という気持ちで使う方がパパやママのストレスも軽減できておすすめです。
卒業のときがきたら、今までありがとうの気持ちも込めて気合を入れて慣れるまで根気よく対応してあげましょう。