Yahoo!ニュース

【河内長野市】四万十川と同水準の水質を守る!石見川地区の大阪源流「水の杜」の清掃活動を取材しました。

奥河内から情報発信奥河内地域文筆家(河内長野市・富田林市)

2022年3月末をもって河内長野駅からのバス石見川線が廃線となりました。4月以降は周辺地域に住んでいる住民専用の地域バスが運行されましたが、周辺地域以外の人、それは河内長野市民といえどもこのバスは利用できないとのこと。

その結果、公共交通で石見川地区に行こうとすると、千早赤阪村の金剛山ロープウェイ行きのバスで、小深バス停で下車してからは歩くしかありません。となれば、さらに立ち寄ることもなくなり、完全に忘れ去られた秘境となってしまうのでしょうか?

しかし、この石見川バス停からさらに奥、石見川の源流付近では、地域住民ではない人たちが集まって川の水を守る活動をしています。その名は大阪源流「水の杜(もり)」というプロジェクトです。(以下、水の杜さん)

水の杜さんのプロジェクトの詳細については次の動画がわかりやすいです。

地区の名前の由来になった石見川は、大阪府下の河川で、最高水準の水質AAの水流(外部リンク)です。(箕面川上流、芥川上流も該当していますが、全域は石見川が唯一)

これは高知の清流、四万十川と同レベルだとか。少し下流付近には行者湧水直売所があり、車で大量の水を汲みに来ている人を見ても、石見川の水質がいかにハイレベルなのかがわかりますね。

ただこの画像をよく見ると、川にペットボトルが流れてきていました。これではせっかくの良い水質に悪影響が及んでしまいます。水の杜さんは、こういった川とその周りにあるゴミを清掃する活動を毎月行っているのです。

毎月第一水曜日に行っているというので、コロナ渦のため再開された4月の掃除活動当日、清掃活動に同行しました。

まず、水の杜さんがどこにあるのか確認しましょう。

このあたりです。石見川の集落の中でももっとも山の近くにあり、ここを越えると県境の峠道になるほどの山奥。標高は約470メートルくらいの場所です。

私は小深バス停から、途中行者湧水直売所でコーヒータイムを挟んで1時間少しかけて現地まで歩きました。あらかじめ水の杜さんにコンタクトを取れば、河内長野駅前や途中の小深バス停まで車で迎えに来てもらえます。

さて、こちらの右手に見える建物が水の杜さんです。

お話を伺うと、たまたまこの地を訪れた代表の北野あつこさんが、10年以上放置されていた倉庫物件をみつけてひとめで気に入り、自ら買い取ったとか。

すぐ後ろに山がありますが、その間に石見川が流れているような風光明美な場所です。

内部は、まるでアウトドアライフを楽しめるような雰囲気。ここで水の杜さんの活動に賛同した皆さんが、楽しみながらプロジェクトのための活動を行ったり、みんなでごはんを作って食べるわけです。

清掃活動のために集まった皆さんが何か活動をしていますね。そして春休みだったので、子供たちの姿もあります。

子供たちが描いた絵です。今回は、この絵を看板にして、峠に通じる道路脇に貼り付けようという活動をするようです。

年々改善されているとはいえ、いまだにゴミをポイ捨てをする人がいるのは事実。ポイ捨てならまだかわいいもので、後で出てきますが、粗大ごみクラスのものを無断投棄する輩もいるのです。

看板が完成しました。いよいよ清掃活動と看板設置のために移動開始です。

アウトドア用の台車に看板を積んで出発です。

台車には、看板のほか看板を括り付ける針金やゴミ袋など清掃活動に必要なものが入っています。

みんなで源流に向かってスタート。

このように思い思いに源流に向かいます。ここで私はひとつの疑問が解消されました。水の杜さんでは水曜日と土曜日に活動されているのですが、清掃活動は水曜日。

土曜日の方が人が集まりそうだと思っていたら、県境の峠に向かう道路(国道310号線)の交通量が土曜日と水曜日では桁違いに違うこと。土曜日はレジャーで来ているバイクや自転車の数が本当に多いので、道路横を移動するのも危ないからという理由のようです。

源流に向かう途中、橋の下では石見川の清流が流れています。黒いファイバーのようなチューブが見えますが、これは源流からの水が水の杜さんの小屋にまで続いているもの。専門の業者さんに設置してもらったそうです。

「これはトリカブトですよ」と、北野さんが歩いている最中に植物の説明もしてくれました。どの野草も同じように見えても、猛毒のトリカブトが混ざっていると聞くとちょっと焦りますね。

峠に近づくと道路も急なカーブに差し掛かります。バイクや車で来る人は、こういうカーブが大好きですね。

さて、カーブの途中までくると「ここに設置しましょう」との声が。

ということで、ひとつめの看板を設置します。

ここで針金が登場します。みんなで力を合わせて看板を設置。

こうして無事に設置が終わりました。「子供の描いた絵なら心に響きやすい」そうです。

去年、掃除活動を始めたころは、1日に大きなビニール袋がいくつもというくらい、ゴミがあふれていたそうです。それがこの活動によりかなり減ったといっても、新たにゴミをポイ捨てする人もいて、完全には無くなりません。

こうして、泥だらけになりながら、道路や排水溝に捨てられたごみを、次々と回収していきます。

さて舗装された峠に向かう道から、わき道の林道に入りました。この先に源流地点があります。

本当に木々に覆われた場所。歩いているだけで気持ちが落ち着きます。

源流付近に到着しました。大阪府が設置した小さなダムのようなところから水を取っています。水はもちろんさらに上流に流れていて、その先には土中から地表に湧水が出てくる本当の源流があるのでしょう。

このように水を取水しています。

さらにダムの所を見ると、何かお供え物があります。これはいったい何でしょうか?

実は清流の水を「ありがたくいただく」感謝の気持ちを持って、ここに祀っているのです。古神道とか自然信仰(アニミズム)のようなものですね。大昔の人たちも、こうやって自然の恩恵に感謝していたのでしょう。

水の恵みに感謝した後、水の杜さんの小屋方向に戻ります。さてこちらですが、道に落ちている枯れた杉の葉をみんなで持ち帰ります。火にくべるために使うもので、赤い色のものほど油分が多くよく燃えるのだとか。

こうやってみんなで拾い上げて持って帰ります。

みんなで集めた杉の葉を、アスファルトの道路に置いていた台車に入れていきます。

帰り道にふたつ目の看板設置ポイントが決まりました。橋の上に設置するようです。

ところがこの橋の下には粗大ごみがありました。以前、水の流れのところに違法投棄されたものを北野さんの手で水に触れない川辺の場所に移動してあったもの。そのままにしていると有害物質が水に流れ出す恐れがあり、そうなるとせっかくの美しい水が汚染されるからです。

今回の掃除活動は複数の男手があったので、それを道路まで上げる作業をしました。通常の空き缶レベルのごみと違い、かなり大きいですし、橋からゴミのある川のたもとまでは数メートルの高低差があります。

粗大ごみを引き上げるために、何人かが足場の悪いところを降りると、ゴミを引き上げるために不法投棄されたテレビなどをロープにくくり付けました。

これはパソコンのディスプレイでしょうか?こうやって橋のたもとに引き上げられました。

別の粗大ごみ、電子レンジらしきものを引き上げる際には動画を撮りました。

こうして引き上げられた粗大ゴミですが、河内長野市環境衛生課に置いてある場所を連絡すると、引き取りに来てくれるそうです。

あとは行政にお任せするわけですね。というよりわざわざ車でここまで運んで、粗大ごみを捨てるとは本当に酷い輩。なお不法投棄は法律で禁じられており、違反した者は犯罪行為として以下の罰則があります。

  1. 個人が不法投棄したときは、「5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、または併科」です(廃棄物処理法第25条1項14号)。
  2. 不法投棄目的での廃棄物の収集又は運搬したときの罰則は「3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、または併科」です(廃棄物処理法26条6号)。

看板は無事に設置されました。もうあのようなゴミが清流・石見川の畔に捨てられませんように。

水の杜さんの小屋に戻ると、食事担当の数人の手によって、みんなのお昼ごはんの用意ができあがっていました。

清掃活動、水の杜の建物のDIYをする人、近所の人、わざわざ立ち寄った人、料理を作る人、いろんな目的でこの水の杜に来た人たち、みんなでお昼ごはんを食べるのです。これはひとり500円のカンパで、参加可能なのだとか。

こちらはそのごはんを作るために大事となる洗い場ですが、蛇口から流れている水は、もちろん石見川源流付近から取水したものです。もちろん洗剤などは使わず、自然由来のもので洗っています。

先ほどの蛇口から水を汲み上げたものをペットボトルに詰め、水の杜さんと関係がある人たちに水を配っているそうです。

画像提供:水の杜さん
画像提供:水の杜さん

この日のおかずは、つくしやふきのとうなどの山菜の天ぷら、地元直売所で手に入れたホウレンソウのおひたし、具だくさんお味噌汁などのおかず。空気のきれいな中で清流で作られたおかずやお茶、そしてみんなで一働きをした後のごはんは、よりおいしいもの!

水の杜さんの調理に使う燃料も、木材や先ほど集めてきた杉の葉など、近くにある天然由来のものばかり。

木でできたかわいいポストもあります。みんなで力を合わせて作り上げたものでしょうか。

小屋の奥には小部屋もあって、その気になれば泊まれるようです。

ただ取材した4月の時点では子供専用の秘密基地になっていました。合言葉を言わないと、中に入れてもらえません。

小屋の外はテラスのようになっていました。ここから山の方を眺めましょう。奥河内と呼ばれる河内長野の中でも、本当に奥まったところにあるので、空気からしてより以上に澄んでいるような気がしました。

私たちは次の予定があったので、食べずに小深バス停まで歩いていたのですが、なんとおにぎりとおかずでお弁当を作ってくださり、メンバーの方が差し入れされたみかんといっしょに車でわざわざ届けてくださいました。

なんという心に染みる温かさ。夜に自宅でありがたく食べさせていただきました。

清流を守るために同志が自主的に集まり知恵を絞って清掃活動を行う。小さくも大きい活動ですが、こういう活動を続けることで、大阪府内に四万十川クラスの清流が維持されているということ。

また河内長野市民だけでなく、趣旨に賛同した人々が市外からわざわざ足を運んで活動してくれていること。本当にうれしい限りです。

次回の清掃活動は6月第1水曜日ですから、6月1日ですね。興味のある方はぜひ下記リンク先にある水の杜さんに問い合わせてみてください。

大阪源流「水の杜」(外部リンク)
住所:大阪府河内長野市石見川491-1
アクセス:南海・近鉄河内長野駅からバス 小深バス停から徒歩1時間程度

奥河内地域文筆家(河内長野市・富田林市)

河内長野市の別名「奥河内」は、周囲を山に囲まれ3種類の日本遺産に登録されるほど、歴史文化的スポットがたくさんある地域です。それに加えて、都心である大阪市中心部に乗り換えなしで行ける複数の大手私鉄(南海・近鉄)と直結していることから、新興住宅団地が多数造成されており、地元にはおしゃれな名店や評判の良い店なども数多くあります。そして隣接する富田林市もまた、歴史文化が色濃く残る地域。また南河内地区の中核都市として、行政系施設が集まっています。これを機会に、奥河内(一部南河内含む)地域に住んでいる人たちのお役に立つ情報を提供していければと考えています。どうぞよろしくお願いします。

奥河内から情報発信の最近の記事